生存率とクオリティ・オブ・ライフ(QOL)向上へ期待
ALEXANDRIA, Va. -米国臨床腫瘍学会< https://asco.org/ > (The American Society of Clinical Oncology: ASCO)は、2024年8月8日から10日にかけて横浜市においてASCO Breakthrough 2024会議< https://conferences.asco.org/breakthrough/welcome >を開催いたします。本会議は現地とオンラインのハイブリッド形式で実施され、ASCO、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会を中心に、アジア太平洋地域の多くの提携学会< https://conferences.asco.org/breakthrough/collaborators >が共同で企画・運営し、厚生労働省(日本)の後援を受けています。 本会議では、食道がん、上咽頭がん、肺がんの新たな研究の進展を詳述する3つの重要な研究が発表される予定であり、がん治療の分野における画期的な進展として注目を集めています。
食道扁平上皮がん(ESCC)患者への新アプローチ
最新の研究により、食道扁平上皮がん(ESCC)患者に対する新たな治療アプローチの可能性が示されました。ネオアジュバント化学放射線療法に完全な反応を示した患者では、定期的な臨床効果評価と残存がん細胞や遠隔再発の有無をモニタリングすることにより、手術を延期又は回避できる可能性があることが明らかになりました。
ESCCは、食道の内層を覆う細胞から発生するがんで、米国では食道がんの30%を占めるに過ぎませんが、アジアでは最も一般的な食道がんです。実際、アジアにおけるESCCの診断は、全世界の食道がんの診断の約半数を占めています。
従来、切除可能なESCCの標準治療は、ネオアジュバント化学放射線療法とそれに続く食道切除でした。しかし、食道がんの手術は深刻な合併症のリスクがあり、患者の生活の質低下につながる可能性があります。そのため、真の完全奏効を示した患者を正確に特定できるかどうかが、未解決の臨床的課題となっています。特に、食道腺がんでは術前化学放射線療法後に高い病理学的完全奏効率が観察されていることから、この課題の重要性が増しています。preSINO試験は、ネオアジュバント化学放射線療法後に臨床的完全奏効を示した患者の中から、残存病変を持つ患者を正確に識別できるかを検証するために計画されました。この試験では、様々な診断検査を用いて残存病変の検出精度を評価しています。
研究の筆頭著者であるShanghai Chest Hospital胸部外科部長のZhigang Li氏は、この研究について次のように説明しています。「我々の研究は、ネオアジュバント療法後のESCC患者における残存腫瘍の評価を、より正確かつ安全に行える方法を探ることを目的としています。preSINO試験では、過去に欧州で行われた食道腺がんを対象としたpreSANO試験の手法をアジアのESCC患者向けに最適化し、さらにctDNA検査を導入することで精度の向上を図りました。この研究成果は、ESCCに対するより積極的なサーベイランス戦略の普及を促進し、治療アプローチを最適化の最適化に貢献するものと考えています」
本試験では、ESCCと診断された患者に対し、まずネオアジュバント化学放射線療法を実施しました。その後、臨床効果評価を行い、適応がある場合は食道切除術を行いました。具体的には、ネオアジュバント化学放射線療法完了から4~6週後に、bite-on-bite生検法を用いて初回の臨床効果評価を行いました。この生検でがん細胞が検出された患者には、直ちに手術を実施しましたが、がんの転移確認された患者は手術の対象から除外しました。
がん細胞や転移が見つからなかった患者に対しては、ネオアジュバント化学放射線療法完了から10~12週間後に再度臨床効果の評価を行いました。この評価では、PET-CTスキャン、別のbite-on-bite生検、そしてリンパ節の穿刺吸引細胞診を伴う内視鏡的超音波検査を実施しました。PET-CTスキャン中にがんの遠隔転移が確認された患者を除いて、全ての患者に対して手術を実施しました。さらに、臨床効果評価中に血中循環腫瘍DNA(ctDNA)の血液検査も実施しました。
本試験には250人の患者が参加し、全員がネオアジュバント化学放射線療法を受けた後、診断検査と手術を実施しました。本試験の主要評価項目は、切除した検体における重大な残存病変(TRG3-4またはypN+を伴うTRG1-2)を検出する際の診断検査の偽陰性率でした。結果として、bite-on-bite生検と穿刺吸引細胞診を伴う内視鏡的超音波検査で検出されなかった重大な残存病変が、133人の患者のうち18人に認められましたが、偽陰性率は13.5%で、本試験であらかじめ設定された主要評価項目を満たしました。
研究チームはさらに、各検査による残存がん(非病理学的完全奏効)の予測精度について詳細な分析を行いました。その結果、bite-on-bite生検と穿刺吸引細胞診を伴う内視鏡的超音波検査により、82%の精度で残存がんが検出され、がんが残存していないケースを93%の確率で正確に判定できることが明らかになりました。
また、この試験では、臨床効果評価の一環として行ったctDNA検査が、ネオアジュバント化学放射線療法及び手術後の遠隔再発の予測する上で有用であるかどうかも検討されました。その結果、ctDNA検査で陽性と判定された75人のうち、21人(28%)に遠隔転移が認められました。一方、ctDNA検査が陰性であった57人のうち、遠隔転移が発現したのは3人(5%)のみでした。
結果として、bite-on-bite生検及び穿刺吸引細胞診を伴う内視鏡的超音波検査が、局所に残存するがん細胞を正確に検出できることが明らかになりました。ctDNA検査は、全身に残存する病変のリスクが高い患者を予測する上で、有望である可能性が示されました。
インド・ベンガルールのアポロ病院の腫瘍内科医Vishwanath Sathyanarayanan氏は、 preSINO試験の意義について次のように述べています。「preSINO試験は、食道扁平上皮がん患者を対象にネオアジュバント化学放射線療法後の臨床効果評価の重要性を示す画期的で前向きな研究です。PET/CT及びbite-on-bite生検にctDNAを用いた微小残存病変の検出を組み合わせることで、遠隔転移のリスクが高い患者をより正確に特定できるようになりました。この成果は、治療の強化または漸減を決定する際に臨床医を支援する重要なツールとなるでしょう」
本情報は、演題196「食道扁平上皮がんに対するネオアジュバント化学放射線療法後の残存病変の検出精度(preSINO試験):アジアにおける前向き多施設共同診断コホート試験」の要約です。演題本文はこちら。< https://meetings.asco.org/abstracts-presentations/239280 >
低リスク上咽頭がん患者への放射線単独療法の有効性
中国で実施された第3相臨床試験で更新された結果によると、低リスクの上咽頭がん患者に対する放射線単独療法は、化学放射線療法併用と同程度の効果を示すことが明らかになりました。この結果は、患者が難聴や重度の体重減少などの化学放射線療法に伴う潜在的な副作用を回避できる可能性を示しています。
上咽頭がんは、世界の他の地域ではまれですが、中国では比較的高い発症率を示しています。中国では年間10万人あたり、男性で25~30人、女性で15~20人が上咽頭がんと診断されています。研究チームは、上咽頭がん患者の約20%から40%が低リスク疾患であると推定しています。本研究では、低リスクをステージ2またはT3N0と定義し、これらはリンパ節への転移が限られ、エプスタイン・バーウイルス(EBV)DNAが低値の症例を指します。
本試験には、中国の低リスクの上咽頭がん患者341人が参加し、ランダムに放射線単独療法群(172人)と化学放射線療法群(169人)に割り付けられました。
追跡調査期間中央値70.1カ月後の結果では、5年全生存率は放射線単独療法群で95.2%、化学放射線療法群で98.2%でした。また、がんの再発がなく、かつ死亡しなかった患者の割合(治療成功生存率)は、放射線単独療法群では86.2%、化学放射線療法群では88.4%でした。これらの差は統計学的に有意ではありませんでした。
副作用に関しては、聴覚障害の発生率が放射線単独療法群で23%、化学放射線療法群で31%と、化学放射線療法群でより高くなりました。深刻な副作用としては、口内炎、悪心、嘔吐、食欲不振などがあり、放射線単独療法群では化学放射線療法群と比較して、治療期間中の発生頻度が低く抑えられていました(各群17%対46%)。
研究筆頭著者のSun Yat-sen University Cancer CenterのRui Guo医師は次のように述べています。「低リスク上咽頭がんに対して、強度変調放射線療法(IMRT)がIMRT単独療法は効果的かつ安全であることが示されました。IMRT単独療法群の患者は、同時に化学放射線療法を受けた患者と比較して、報告されたグレード3又は4の有害事象の発現率が有意に低いことがわかりました。さらに、IMRT単独療法群の患者は、治療中に生活の質の指標が有意に改善したことが確認されました」
ダナ・ファーバーがん研究所の、Head and Neck Cancer Treatment Center部長兼Center for Cancer Therapeutic Innovation部長であるGlenn J. Hanna氏は、次のように述べています。「低リスク上咽頭がん患者に対する放射線単独療法の5年全生存率が同等であることを確認できることが重要です。このデータは、化学放射線療法が同様の転帰をもたらす可能性がある一方で、不必要な毒性をもたらす可能性があることを示唆しています。これは、個々の患者に合わせた治療アプローチの重要性を強調するものです」
本情報は演題142「低リスクの上咽頭がん患者における放射線単独療法と化学放射線療法を併用した放射線療法の比較: 多施設共同、非盲検、非劣性、無作為化第3相試験の結果を更新」の要約です。演題本文はこちら。< https://meetings.asco.org/abstracts-presentations/239473 >
RET融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するセルペルカチニブ投与の有効性
第3相LIBRETTO-431試験のデータの新たなサブグループ解析により、東アジアのRET融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する選択的RET阻害剤セルペルカチニブの有効性が確認されました。この解析では、セルペルカチニブが無増悪生存期間を改善し、安全かつ効果的な治療選択肢としての可能性が示されました。これらの結果は一般集団における結果と一致しており、RET融合遺伝子陽性NSCLCの一次治療としてセルペルカチニブの使用を支持するものです。
肺がんは、世界で2番目に多く診断されるがんであり、がんによる死亡原因の第1位です。肺がん患者の約80%がNSCLCと診断され、そのうち約1%~2%にRET融合遺伝子が認められます。
第3相LIBRETTO-431試験では、選択的RET阻害剤と呼ばれる標的療法の一種であるセルペルカチニブが、RET融合遺伝子陽性NSCLCの治療にどの程度効果があるかを、プラチナ製剤ベースの化学療法(ペムブロリズマブ併用または非併用)と比較しました。研究者らは、中国、香港、日本、韓国、台湾を含む東アジアのいくつかの国の患者を対象にセルペルカチニブと対照治療を比較した本治験中に収集されたデータの新たな解析を行い、東アジア人患者に対する本薬の有効性を確認しました。これは特に重要です。なぜなら、アジアは世界で最も肺がんの診断率が高いからです。
解析対象となった東アジア人患者116例のうち、75例がセルペルカチニブ、41例がペムブロリズマブの併用又は非併用化学療法を受けました。追跡期間の中央値はセルペルカチニブ群で19.4カ月、対照群で21.2カ月、無増悪生存期間の中央値はセルペルカチニブ群で未到達、対照群では11.1カ月でした。12カ月後、がんが進行しなかった患者の割合は、セルペルカチニブ群で72.8%、対照群で41.7%でした。全奏効率は、セルペルカチニブ群で86.7%、対照群で61%でした。
Sarah Cannon Research Instituteの最高科学責任者David R. Spigel医師は次のように述べています。「一般集団における有効な治療法が、特定の集団でも同様に有効かつ安全であるとは限りません。今回の優れた結果から、セルペルカチニブが新たにRET変異NSCLCと診断された東アジア人患者にとって、有効かつ安全な治療法であると確信できます」
本情報は、演題214「RET融合遺伝子陽性NSCLCにおけるセルペルカチニブ1L投与の有効性と安全性: LIBRETTO-431東アジアサブグループ解析」の要約です。演題本文はこちら。< https://meetings.asco.org/abstracts-presentations/240242 >
本研究に関する詳細情報や研究者へのインタビューをご希望の方は、ASCO広報事務局 (asco@next-pr.co.jp)までお気軽にお問い合わせください。
ASCOについて
1964 年に設立された米国臨床腫瘍学会(以下、ASCO(R))は、「知識はがんに勝る」という行動原則を掲げて活動しています。同学会は、クリニカルオンコロジー協会(Association for Clinical Oncology)と共に、がんとともに生きる人々の治療にあたる約50,000名以上の腫瘍学専門家を代表。研究、教育、高品質で公平な患者ケアの促進を通じて、ASCOは、がんの克服、がんの予防または治癒、そして生存者全員が健康である世界を実現するために活動を続けています。また、ASCOの財団であるConquer Cancerは、がんに関するあらゆる側面において、画期的な研究と教育に資金を提供し、ASCOを支援しています。
ASCOに関する詳細はこちらをご覧くださいwww.ASCO.org< www.ASCO.org >
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ALEXANDRIA, Va. -米国臨床腫瘍学会< https://asco.org/ > (The American Society of Clinical Oncology: ASCO)は、2024年8月8日から10日にかけて横浜市においてASCO Breakthrough 2024会議< https://conferences.asco.org/breakthrough/welcome >を開催いたします。本会議は現地とオンラインのハイブリッド形式で実施され、ASCO、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会を中心に、アジア太平洋地域の多くの提携学会< https://conferences.asco.org/breakthrough/collaborators >が共同で企画・運営し、厚生労働省(日本)の後援を受けています。 本会議では、食道がん、上咽頭がん、肺がんの新たな研究の進展を詳述する3つの重要な研究が発表される予定であり、がん治療の分野における画期的な進展として注目を集めています。
食道扁平上皮がん(ESCC)患者への新アプローチ
最新の研究により、食道扁平上皮がん(ESCC)患者に対する新たな治療アプローチの可能性が示されました。ネオアジュバント化学放射線療法に完全な反応を示した患者では、定期的な臨床効果評価と残存がん細胞や遠隔再発の有無をモニタリングすることにより、手術を延期又は回避できる可能性があることが明らかになりました。
ESCCは、食道の内層を覆う細胞から発生するがんで、米国では食道がんの30%を占めるに過ぎませんが、アジアでは最も一般的な食道がんです。実際、アジアにおけるESCCの診断は、全世界の食道がんの診断の約半数を占めています。
従来、切除可能なESCCの標準治療は、ネオアジュバント化学放射線療法とそれに続く食道切除でした。しかし、食道がんの手術は深刻な合併症のリスクがあり、患者の生活の質低下につながる可能性があります。そのため、真の完全奏効を示した患者を正確に特定できるかどうかが、未解決の臨床的課題となっています。特に、食道腺がんでは術前化学放射線療法後に高い病理学的完全奏効率が観察されていることから、この課題の重要性が増しています。preSINO試験は、ネオアジュバント化学放射線療法後に臨床的完全奏効を示した患者の中から、残存病変を持つ患者を正確に識別できるかを検証するために計画されました。この試験では、様々な診断検査を用いて残存病変の検出精度を評価しています。
研究の筆頭著者であるShanghai Chest Hospital胸部外科部長のZhigang Li氏は、この研究について次のように説明しています。「我々の研究は、ネオアジュバント療法後のESCC患者における残存腫瘍の評価を、より正確かつ安全に行える方法を探ることを目的としています。preSINO試験では、過去に欧州で行われた食道腺がんを対象としたpreSANO試験の手法をアジアのESCC患者向けに最適化し、さらにctDNA検査を導入することで精度の向上を図りました。この研究成果は、ESCCに対するより積極的なサーベイランス戦略の普及を促進し、治療アプローチを最適化の最適化に貢献するものと考えています」
本試験では、ESCCと診断された患者に対し、まずネオアジュバント化学放射線療法を実施しました。その後、臨床効果評価を行い、適応がある場合は食道切除術を行いました。具体的には、ネオアジュバント化学放射線療法完了から4~6週後に、bite-on-bite生検法を用いて初回の臨床効果評価を行いました。この生検でがん細胞が検出された患者には、直ちに手術を実施しましたが、がんの転移確認された患者は手術の対象から除外しました。
がん細胞や転移が見つからなかった患者に対しては、ネオアジュバント化学放射線療法完了から10~12週間後に再度臨床効果の評価を行いました。この評価では、PET-CTスキャン、別のbite-on-bite生検、そしてリンパ節の穿刺吸引細胞診を伴う内視鏡的超音波検査を実施しました。PET-CTスキャン中にがんの遠隔転移が確認された患者を除いて、全ての患者に対して手術を実施しました。さらに、臨床効果評価中に血中循環腫瘍DNA(ctDNA)の血液検査も実施しました。
本試験には250人の患者が参加し、全員がネオアジュバント化学放射線療法を受けた後、診断検査と手術を実施しました。本試験の主要評価項目は、切除した検体における重大な残存病変(TRG3-4またはypN+を伴うTRG1-2)を検出する際の診断検査の偽陰性率でした。結果として、bite-on-bite生検と穿刺吸引細胞診を伴う内視鏡的超音波検査で検出されなかった重大な残存病変が、133人の患者のうち18人に認められましたが、偽陰性率は13.5%で、本試験であらかじめ設定された主要評価項目を満たしました。
研究チームはさらに、各検査による残存がん(非病理学的完全奏効)の予測精度について詳細な分析を行いました。その結果、bite-on-bite生検と穿刺吸引細胞診を伴う内視鏡的超音波検査により、82%の精度で残存がんが検出され、がんが残存していないケースを93%の確率で正確に判定できることが明らかになりました。
また、この試験では、臨床効果評価の一環として行ったctDNA検査が、ネオアジュバント化学放射線療法及び手術後の遠隔再発の予測する上で有用であるかどうかも検討されました。その結果、ctDNA検査で陽性と判定された75人のうち、21人(28%)に遠隔転移が認められました。一方、ctDNA検査が陰性であった57人のうち、遠隔転移が発現したのは3人(5%)のみでした。
結果として、bite-on-bite生検及び穿刺吸引細胞診を伴う内視鏡的超音波検査が、局所に残存するがん細胞を正確に検出できることが明らかになりました。ctDNA検査は、全身に残存する病変のリスクが高い患者を予測する上で、有望である可能性が示されました。
インド・ベンガルールのアポロ病院の腫瘍内科医Vishwanath Sathyanarayanan氏は、 preSINO試験の意義について次のように述べています。「preSINO試験は、食道扁平上皮がん患者を対象にネオアジュバント化学放射線療法後の臨床効果評価の重要性を示す画期的で前向きな研究です。PET/CT及びbite-on-bite生検にctDNAを用いた微小残存病変の検出を組み合わせることで、遠隔転移のリスクが高い患者をより正確に特定できるようになりました。この成果は、治療の強化または漸減を決定する際に臨床医を支援する重要なツールとなるでしょう」
本情報は、演題196「食道扁平上皮がんに対するネオアジュバント化学放射線療法後の残存病変の検出精度(preSINO試験):アジアにおける前向き多施設共同診断コホート試験」の要約です。演題本文はこちら。< https://meetings.asco.org/abstracts-presentations/239280 >
低リスク上咽頭がん患者への放射線単独療法の有効性
中国で実施された第3相臨床試験で更新された結果によると、低リスクの上咽頭がん患者に対する放射線単独療法は、化学放射線療法併用と同程度の効果を示すことが明らかになりました。この結果は、患者が難聴や重度の体重減少などの化学放射線療法に伴う潜在的な副作用を回避できる可能性を示しています。
上咽頭がんは、世界の他の地域ではまれですが、中国では比較的高い発症率を示しています。中国では年間10万人あたり、男性で25~30人、女性で15~20人が上咽頭がんと診断されています。研究チームは、上咽頭がん患者の約20%から40%が低リスク疾患であると推定しています。本研究では、低リスクをステージ2またはT3N0と定義し、これらはリンパ節への転移が限られ、エプスタイン・バーウイルス(EBV)DNAが低値の症例を指します。
本試験には、中国の低リスクの上咽頭がん患者341人が参加し、ランダムに放射線単独療法群(172人)と化学放射線療法群(169人)に割り付けられました。
追跡調査期間中央値70.1カ月後の結果では、5年全生存率は放射線単独療法群で95.2%、化学放射線療法群で98.2%でした。また、がんの再発がなく、かつ死亡しなかった患者の割合(治療成功生存率)は、放射線単独療法群では86.2%、化学放射線療法群では88.4%でした。これらの差は統計学的に有意ではありませんでした。
副作用に関しては、聴覚障害の発生率が放射線単独療法群で23%、化学放射線療法群で31%と、化学放射線療法群でより高くなりました。深刻な副作用としては、口内炎、悪心、嘔吐、食欲不振などがあり、放射線単独療法群では化学放射線療法群と比較して、治療期間中の発生頻度が低く抑えられていました(各群17%対46%)。
研究筆頭著者のSun Yat-sen University Cancer CenterのRui Guo医師は次のように述べています。「低リスク上咽頭がんに対して、強度変調放射線療法(IMRT)がIMRT単独療法は効果的かつ安全であることが示されました。IMRT単独療法群の患者は、同時に化学放射線療法を受けた患者と比較して、報告されたグレード3又は4の有害事象の発現率が有意に低いことがわかりました。さらに、IMRT単独療法群の患者は、治療中に生活の質の指標が有意に改善したことが確認されました」
ダナ・ファーバーがん研究所の、Head and Neck Cancer Treatment Center部長兼Center for Cancer Therapeutic Innovation部長であるGlenn J. Hanna氏は、次のように述べています。「低リスク上咽頭がん患者に対する放射線単独療法の5年全生存率が同等であることを確認できることが重要です。このデータは、化学放射線療法が同様の転帰をもたらす可能性がある一方で、不必要な毒性をもたらす可能性があることを示唆しています。これは、個々の患者に合わせた治療アプローチの重要性を強調するものです」
本情報は演題142「低リスクの上咽頭がん患者における放射線単独療法と化学放射線療法を併用した放射線療法の比較: 多施設共同、非盲検、非劣性、無作為化第3相試験の結果を更新」の要約です。演題本文はこちら。< https://meetings.asco.org/abstracts-presentations/239473 >
RET融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するセルペルカチニブ投与の有効性
第3相LIBRETTO-431試験のデータの新たなサブグループ解析により、東アジアのRET融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する選択的RET阻害剤セルペルカチニブの有効性が確認されました。この解析では、セルペルカチニブが無増悪生存期間を改善し、安全かつ効果的な治療選択肢としての可能性が示されました。これらの結果は一般集団における結果と一致しており、RET融合遺伝子陽性NSCLCの一次治療としてセルペルカチニブの使用を支持するものです。
肺がんは、世界で2番目に多く診断されるがんであり、がんによる死亡原因の第1位です。肺がん患者の約80%がNSCLCと診断され、そのうち約1%~2%にRET融合遺伝子が認められます。
第3相LIBRETTO-431試験では、選択的RET阻害剤と呼ばれる標的療法の一種であるセルペルカチニブが、RET融合遺伝子陽性NSCLCの治療にどの程度効果があるかを、プラチナ製剤ベースの化学療法(ペムブロリズマブ併用または非併用)と比較しました。研究者らは、中国、香港、日本、韓国、台湾を含む東アジアのいくつかの国の患者を対象にセルペルカチニブと対照治療を比較した本治験中に収集されたデータの新たな解析を行い、東アジア人患者に対する本薬の有効性を確認しました。これは特に重要です。なぜなら、アジアは世界で最も肺がんの診断率が高いからです。
解析対象となった東アジア人患者116例のうち、75例がセルペルカチニブ、41例がペムブロリズマブの併用又は非併用化学療法を受けました。追跡期間の中央値はセルペルカチニブ群で19.4カ月、対照群で21.2カ月、無増悪生存期間の中央値はセルペルカチニブ群で未到達、対照群では11.1カ月でした。12カ月後、がんが進行しなかった患者の割合は、セルペルカチニブ群で72.8%、対照群で41.7%でした。全奏効率は、セルペルカチニブ群で86.7%、対照群で61%でした。
Sarah Cannon Research Instituteの最高科学責任者David R. Spigel医師は次のように述べています。「一般集団における有効な治療法が、特定の集団でも同様に有効かつ安全であるとは限りません。今回の優れた結果から、セルペルカチニブが新たにRET変異NSCLCと診断された東アジア人患者にとって、有効かつ安全な治療法であると確信できます」
本情報は、演題214「RET融合遺伝子陽性NSCLCにおけるセルペルカチニブ1L投与の有効性と安全性: LIBRETTO-431東アジアサブグループ解析」の要約です。演題本文はこちら。< https://meetings.asco.org/abstracts-presentations/240242 >
本研究に関する詳細情報や研究者へのインタビューをご希望の方は、ASCO広報事務局 (asco@next-pr.co.jp)までお気軽にお問い合わせください。
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1964 年に設立された米国臨床腫瘍学会(以下、ASCO(R))は、「知識はがんに勝る」という行動原則を掲げて活動しています。同学会は、クリニカルオンコロジー協会(Association for Clinical Oncology)と共に、がんとともに生きる人々の治療にあたる約50,000名以上の腫瘍学専門家を代表。研究、教育、高品質で公平な患者ケアの促進を通じて、ASCOは、がんの克服、がんの予防または治癒、そして生存者全員が健康である世界を実現するために活動を続けています。また、ASCOの財団であるConquer Cancerは、がんに関するあらゆる側面において、画期的な研究と教育に資金を提供し、ASCOを支援しています。
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