2023年4月28日
業界特化型クラウドカンパニーの米Inforの日本法人、インフォアジャパン株式会社(東京都千代田区、以下インフォア)は、本日、「今後の自動車業界の予測」を下記の通り発表します。
1. サプライチェーンの課題は継続し、内燃機関自動車(ICE)だけでなく電気自動車(EV)にも影響を及ぼします。特に半導体不足については、2023年に200万台から300万台の自動車に影響を与えるとの試算もあります。EVはICEに比べて半導体の使用量が約30%多いため、より大きな打撃を受けるでしょう。金利負担の上昇、不確実な経済状況、規制強化が重なることで、サプライチェーン全体に経済的プレッシャーがかかり、特に一次以下のサプライヤーで、さらなる混乱が生じる可能性があります。
サプライチェーンの回復力とリスク軽減を実現するためのカギとなる2つの要素は、自動車エコシステムの参加者同士のコネクティビティとコラボレーションです。データ駆動型ソフトウェアプラットフォームを使って、これを促進し、高度な解析ツール、人工知能・機械学習ツールを活用した予測的かつ規範的な洞察を得ることが、ますます重要になっていきます。
EVとICEの部品の両方に対応するためには、サプライチェーンの再構築が必要です。最近の米国の法律では、サプライチェーンのリスクを軽減し、政府のインセンティブや税額控除の対象になることを目的として、バッテリーの現地調達化が推進されています。鉱物やバッテリー、半導体、その他の部品を、信頼性が高く、倫理的で、政治的に承認された供給源から入手することが特に課題であり、そういった製品を現地や「友好的」な国から入手するのは困難な可能性があります。
2. EVメーカーは、コストを抑えて、環境への影響を最小限にしつつ、生産規模の拡大に取り組みながら、バッテリー材料の需給バランスの調整に苦心することになります。需要予測が正確であると仮定するならば、EVの生産台数を増やすことは、環境的に問題のある鉱山から調達され、大量のCO2を排出する方法で加工・輸送されるバッテリー材料の需要が増えることを意味しており、まさにジレンマに直面している状況です。自動車業界は、排気ガスだけでなく、材料の生産、精製、輸送が環境に与える影響について、地球規模で総合的に判断しなければなりません。
予測されている膨大なバッテリー材料の需要に応えるために、自動車業界は追加でリチウム50カ所、ニッケル60カ所、コバルト17カ所の採掘場を必要としていますが、たった1カ所の採掘場を立ち上げ、稼働させるのに最大10年と数十億ドルを要します(Automotive News、2022年10月24日)。そのため、当面の間、供給はさらに制限されるでしょう。海底にある鉱物が豊富に含まれる団塊の採鉱は、陸上での鉱山開発よりも早く大量の原材料を採取できる可能性がありますが、環境保護団体との衝突は避けられません。
さらに、バッテリー化学成分の将来に関する不確実性が、資本集約的なバッテリー材料産業にとって、原材料の調達方法や場所にかかわらず、けん制材料として作用します。
また、バッテリー関連の問題とは別に、モーターなどの電気駆動部品のコストは2021年に25%以上上昇しており、この傾向は今後も続くことが予測されます。
こうした要因によって、EVの価格はさらに高騰し、ICEと同等な価格にすることがさらに難しくなります。
3. バッテリー電気自動車(BEV)では世界中の市場すべてのニーズに応えることはできないため、エネルギーに関する話題で、代替燃料が注目されるようになります。水素燃料電池は、特に長距離輸送トラックや鉄道、船舶での輸送で有力視されています。ベンチャーキャピタルの投資動向にもとづき、複数のアナリストも同様の見方を示しています。水素燃料電池は、高いエネルギー密度、短い燃料補給時間、そして重量(および積載量と収益性)の点でBEVを上回っており、これらは大型トラックにとって考慮すべき重大な事項です。この傾向を裏付けるように、Hyundaiは2028年までに全商業用車両に水素燃料電池仕様を追加することを予定しており、トヨタはケンワースと大型燃料電池トラック(クラス8)を、いすゞと日野は中型燃料電池トラックを共同開発しています。
水素は、内燃機関用燃料としても、特に商業用途で重要性を増していきます。パワートレイン部品の大半に互換性があり、既存の車両への搭載が容易という明らかな利点があるからです。水素内燃エンジンは、ディーゼルエンジン並みのコスト、性能、効率性、耐久性を備えており、トラック輸送、ダンプカー、除雪車、緊急車両、農業、建設、港などで、ディーゼルの代替として適した選択肢です。
この分野における中心的存在は、トヨタとカミンズです。カミンズは最近、水素で走行可能な15リットルの「燃料に依存しない」トラック用エンジンのプロトタイプを発表し、2027年までに市場投入を予定しています。長距離運送大手のワーナー・エンタープライジズは、カミンズから500台の水素エンジンを購入することを約束しました。ボルボは標準のICEの開発を続けながら水素に関する研究も行っており、ダイムラーも燃料に依存しないエンジンの提供を計画しています。
水素に関する最大の課題は、燃料補給インフラの不足ですが、これを解決するための投資が急拡大することが見込まれます。
水素に加えて、「e-fuel」の研究も進んでいます。e-fuelは、空気中から炭素を取り出して製造される合成燃料で、標準的なICエンジンでの燃焼が可能です。製造時に消費されるのと同量の炭素しか排出しないため、理論上、温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることができます。エネルギー密度が高く、「そのまま」使用できるドロップインソリューションという利点がありますが、コストと効率性の面での課題を解決しなければなりません。この分野でのさらなる発展が期待されています。
4. バッテリーのリサイクルは、今後さらに重大な課題となります。2030年までに1,000万個以上のバッテリーが車載用としての寿命を迎えるという試算結果もあります。90%が大規模エネルギー貯蔵などで二次利用されると仮定しても、なお残り100万個のバッテリーがリサイクルされ、適切に廃棄されなければなりません。バッテリー1個あたりの平均重量を1,000ポンドとすると、有害な化学物質を含むバッテリーが10億トンも発生することになります。1年前の時点で、世界の年間リサイクル処理能力はわずか10万トンと推定されています。バッテリーのリサイクルに関する研究や投資は増加していますが、特に持続可能性と規制が厳しさを増すなかで、業界にとって差し迫った課題となっています。
バッテリーの製造から二次利用、リサイクル、廃棄に至るまで、ライフサイクル全体でバッテリーを追跡するために、バッテリーパスポートという概念が重視されるようになります。EVメーカーやバッテリーメーカーが世界各国のさまざまな規制を遵守するために、バッテリーパスポートの重要性が高まります。
5. 車載ソフトウェアが、自動車の機能とオプションの決定やアップグレードにおいて、これまで以上に大きな役割を果たします。ゴールドマン・サックスはこちらの記事*で、自動車1台あたりのソフトウェアコード数が、ほんの12年前までは2億行だったのに対して、2025年に向けては6.5億行へと指数関数的に増加すると予測しています。ちなみに、一般的なスマートフォンOSや戦闘機のコード数は、わずか2,000~4,000万行です。この増加は、自動車のコネクティビティや先進運転支援システム(ADAS)の急激な高まりによってもたらされています。OTA(Over the Air)でのソフトウェアアップデートによって、OEMは販売時だけでなく、自動車のライフサイクル全体でソフトウェア主導の追加機能を配信して収益化を行い、よりオーダーメイドな自動車の所有体験を提供できるようになります。
*https://www.goldmansachs.com/insights/pages/software-is-taking-over-the-auto-industry.html#:~:text=Software%20Is%20Taking%20Over%20the%20Auto%20Industry%2008,increasingly%20important%20even%20at%20lower%20levels%20of%20automation.
●インフォア、インフォアジャパンについて
インフォアは、業界特化型のビジネスクラウドソフトウェアにおけるグローバルリーダーです。各注力業界向けに、業界特化の機能が網羅されたソリューションを展開しています。ミッションクリティカルなエンタープライズアプリケーションとサービスは、セキュリティおよびタイムトゥバリュー(Time-to-Value)の短縮により、持続可能な運営にメリットをもたらすよう設計されています。世界175か所以上の地域で6万社以上の組織が、インフォアの17,000人の従業員のサポートにより、ビジネスの目標を達成するよう取り組んでいます。また、Koch社の一員としての財務的な強みやオーナーシップ、長期的な視点は、お客様との永続的で有益な関係性の構築のための力となっています。さらに詳しくは< http://www.infor.com >(英語)をご覧ください。
インフォアジャパンは、米国インフォアの日本法人として、各種エンタープライズソリューションの販売、導入、コンサルティングを行っています。詳しくは< https://www.infor.com/ja-jp/ >をご覧ください。
※本文に記載の文字商標および図形商標は、インフォアおよびその関連会社、子会社の商標および登録商標です。その他のすべての商標は各所有者に帰属します。
業界特化型クラウドカンパニーの米Inforの日本法人、インフォアジャパン株式会社(東京都千代田区、以下インフォア)は、本日、「今後の自動車業界の予測」を下記の通り発表します。
1. サプライチェーンの課題は継続し、内燃機関自動車(ICE)だけでなく電気自動車(EV)にも影響を及ぼします。特に半導体不足については、2023年に200万台から300万台の自動車に影響を与えるとの試算もあります。EVはICEに比べて半導体の使用量が約30%多いため、より大きな打撃を受けるでしょう。金利負担の上昇、不確実な経済状況、規制強化が重なることで、サプライチェーン全体に経済的プレッシャーがかかり、特に一次以下のサプライヤーで、さらなる混乱が生じる可能性があります。
サプライチェーンの回復力とリスク軽減を実現するためのカギとなる2つの要素は、自動車エコシステムの参加者同士のコネクティビティとコラボレーションです。データ駆動型ソフトウェアプラットフォームを使って、これを促進し、高度な解析ツール、人工知能・機械学習ツールを活用した予測的かつ規範的な洞察を得ることが、ますます重要になっていきます。
EVとICEの部品の両方に対応するためには、サプライチェーンの再構築が必要です。最近の米国の法律では、サプライチェーンのリスクを軽減し、政府のインセンティブや税額控除の対象になることを目的として、バッテリーの現地調達化が推進されています。鉱物やバッテリー、半導体、その他の部品を、信頼性が高く、倫理的で、政治的に承認された供給源から入手することが特に課題であり、そういった製品を現地や「友好的」な国から入手するのは困難な可能性があります。
2. EVメーカーは、コストを抑えて、環境への影響を最小限にしつつ、生産規模の拡大に取り組みながら、バッテリー材料の需給バランスの調整に苦心することになります。需要予測が正確であると仮定するならば、EVの生産台数を増やすことは、環境的に問題のある鉱山から調達され、大量のCO2を排出する方法で加工・輸送されるバッテリー材料の需要が増えることを意味しており、まさにジレンマに直面している状況です。自動車業界は、排気ガスだけでなく、材料の生産、精製、輸送が環境に与える影響について、地球規模で総合的に判断しなければなりません。
予測されている膨大なバッテリー材料の需要に応えるために、自動車業界は追加でリチウム50カ所、ニッケル60カ所、コバルト17カ所の採掘場を必要としていますが、たった1カ所の採掘場を立ち上げ、稼働させるのに最大10年と数十億ドルを要します(Automotive News、2022年10月24日)。そのため、当面の間、供給はさらに制限されるでしょう。海底にある鉱物が豊富に含まれる団塊の採鉱は、陸上での鉱山開発よりも早く大量の原材料を採取できる可能性がありますが、環境保護団体との衝突は避けられません。
さらに、バッテリー化学成分の将来に関する不確実性が、資本集約的なバッテリー材料産業にとって、原材料の調達方法や場所にかかわらず、けん制材料として作用します。
また、バッテリー関連の問題とは別に、モーターなどの電気駆動部品のコストは2021年に25%以上上昇しており、この傾向は今後も続くことが予測されます。
こうした要因によって、EVの価格はさらに高騰し、ICEと同等な価格にすることがさらに難しくなります。
3. バッテリー電気自動車(BEV)では世界中の市場すべてのニーズに応えることはできないため、エネルギーに関する話題で、代替燃料が注目されるようになります。水素燃料電池は、特に長距離輸送トラックや鉄道、船舶での輸送で有力視されています。ベンチャーキャピタルの投資動向にもとづき、複数のアナリストも同様の見方を示しています。水素燃料電池は、高いエネルギー密度、短い燃料補給時間、そして重量(および積載量と収益性)の点でBEVを上回っており、これらは大型トラックにとって考慮すべき重大な事項です。この傾向を裏付けるように、Hyundaiは2028年までに全商業用車両に水素燃料電池仕様を追加することを予定しており、トヨタはケンワースと大型燃料電池トラック(クラス8)を、いすゞと日野は中型燃料電池トラックを共同開発しています。
水素は、内燃機関用燃料としても、特に商業用途で重要性を増していきます。パワートレイン部品の大半に互換性があり、既存の車両への搭載が容易という明らかな利点があるからです。水素内燃エンジンは、ディーゼルエンジン並みのコスト、性能、効率性、耐久性を備えており、トラック輸送、ダンプカー、除雪車、緊急車両、農業、建設、港などで、ディーゼルの代替として適した選択肢です。
この分野における中心的存在は、トヨタとカミンズです。カミンズは最近、水素で走行可能な15リットルの「燃料に依存しない」トラック用エンジンのプロトタイプを発表し、2027年までに市場投入を予定しています。長距離運送大手のワーナー・エンタープライジズは、カミンズから500台の水素エンジンを購入することを約束しました。ボルボは標準のICEの開発を続けながら水素に関する研究も行っており、ダイムラーも燃料に依存しないエンジンの提供を計画しています。
水素に関する最大の課題は、燃料補給インフラの不足ですが、これを解決するための投資が急拡大することが見込まれます。
水素に加えて、「e-fuel」の研究も進んでいます。e-fuelは、空気中から炭素を取り出して製造される合成燃料で、標準的なICエンジンでの燃焼が可能です。製造時に消費されるのと同量の炭素しか排出しないため、理論上、温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることができます。エネルギー密度が高く、「そのまま」使用できるドロップインソリューションという利点がありますが、コストと効率性の面での課題を解決しなければなりません。この分野でのさらなる発展が期待されています。
4. バッテリーのリサイクルは、今後さらに重大な課題となります。2030年までに1,000万個以上のバッテリーが車載用としての寿命を迎えるという試算結果もあります。90%が大規模エネルギー貯蔵などで二次利用されると仮定しても、なお残り100万個のバッテリーがリサイクルされ、適切に廃棄されなければなりません。バッテリー1個あたりの平均重量を1,000ポンドとすると、有害な化学物質を含むバッテリーが10億トンも発生することになります。1年前の時点で、世界の年間リサイクル処理能力はわずか10万トンと推定されています。バッテリーのリサイクルに関する研究や投資は増加していますが、特に持続可能性と規制が厳しさを増すなかで、業界にとって差し迫った課題となっています。
バッテリーの製造から二次利用、リサイクル、廃棄に至るまで、ライフサイクル全体でバッテリーを追跡するために、バッテリーパスポートという概念が重視されるようになります。EVメーカーやバッテリーメーカーが世界各国のさまざまな規制を遵守するために、バッテリーパスポートの重要性が高まります。
5. 車載ソフトウェアが、自動車の機能とオプションの決定やアップグレードにおいて、これまで以上に大きな役割を果たします。ゴールドマン・サックスはこちらの記事*で、自動車1台あたりのソフトウェアコード数が、ほんの12年前までは2億行だったのに対して、2025年に向けては6.5億行へと指数関数的に増加すると予測しています。ちなみに、一般的なスマートフォンOSや戦闘機のコード数は、わずか2,000~4,000万行です。この増加は、自動車のコネクティビティや先進運転支援システム(ADAS)の急激な高まりによってもたらされています。OTA(Over the Air)でのソフトウェアアップデートによって、OEMは販売時だけでなく、自動車のライフサイクル全体でソフトウェア主導の追加機能を配信して収益化を行い、よりオーダーメイドな自動車の所有体験を提供できるようになります。
*https://www.goldmansachs.com/insights/pages/software-is-taking-over-the-auto-industry.html#:~:text=Software%20Is%20Taking%20Over%20the%20Auto%20Industry%2008,increasingly%20important%20even%20at%20lower%20levels%20of%20automation.
●インフォア、インフォアジャパンについて
インフォアは、業界特化型のビジネスクラウドソフトウェアにおけるグローバルリーダーです。各注力業界向けに、業界特化の機能が網羅されたソリューションを展開しています。ミッションクリティカルなエンタープライズアプリケーションとサービスは、セキュリティおよびタイムトゥバリュー(Time-to-Value)の短縮により、持続可能な運営にメリットをもたらすよう設計されています。世界175か所以上の地域で6万社以上の組織が、インフォアの17,000人の従業員のサポートにより、ビジネスの目標を達成するよう取り組んでいます。また、Koch社の一員としての財務的な強みやオーナーシップ、長期的な視点は、お客様との永続的で有益な関係性の構築のための力となっています。さらに詳しくは< http://www.infor.com >(英語)をご覧ください。
インフォアジャパンは、米国インフォアの日本法人として、各種エンタープライズソリューションの販売、導入、コンサルティングを行っています。詳しくは< https://www.infor.com/ja-jp/ >をご覧ください。
※本文に記載の文字商標および図形商標は、インフォアおよびその関連会社、子会社の商標および登録商標です。その他のすべての商標は各所有者に帰属します。