株式会社矢野経済研究所(代表取締役:水越孝)は2023年のセルロースナノファイバー(CNF)世界市場を調査し、市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
1.市場概況
試作やサンプル供給分を含む2023年のセルロースナノファイバー(以下 CNF)世界生産量(ミクロン~ナノサイズのミクロフィブリルセルロース、京都プロセスの化学変性パルプ含む)は、前年比106.3%の85t、出荷金額は同103.7%の59億6,000万円の見込みである。現在、国内のCNFメーカーが保有するCNF生産設備の合計生産能力は1,070t/年であり、CNF生産設備の稼働率(アウトプットベース)は2023年世界生産量(見込)で約8%と、設備能力全体の10%に満たない状況である。
1.市場概況
試作やサンプル供給分を含む2023年のセルロースナノファイバー(以下 CNF)世界生産量(ミクロン~ナノサイズのミクロフィブリルセルロース、京都プロセスの化学変性パルプ含む)は、前年比106.3%の85t、出荷金額は同103.7%の59億6,000万円の見込みである。現在、国内のCNFメーカーが保有するCNF生産設備の合計生産能力は1,070t/年であり、CNF生産設備の稼働率(アウトプットベース)は2023年世界生産量(見込)で約8%と、設備能力全体の10%に満たない状況である。
CNFが開発された当初は、「鉄の5倍の強度で重量は鉄の1/5」の物性を持つバイオ由来の画期的な材料として、自動車を中心としたモビリティや家電、建材など幅広い分野で金属やガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などからの代替が期待されたが、現状では化粧品や食品、インク、塗料等向けの機能性添加剤での用途や、スポーツシューズや日用雑貨などの製品での採用実績があるものの、本命と見られていたモビリティや家電、建材で採用された例は見られない。2023年以降の数年間が、今後の需要確保の正念場になる見込みである。
2.注目トピック~自動車内装材での採用を狙うには耐衝撃性の改善が必須、エンジンルーム内部のユニット部品からスタートする手も~
CNFと樹脂との複合材料は、自動車や家電、建材など幅広い用途で植物由来の強化樹脂として需要拡大が期待されているが、CNF複合樹脂の耐衝撃性は一般的なものでシャルピー衝撃強度2~4kジュール毎平方メートル程度にとどまる。
CNF複合樹脂のボリュームゾーンとして期待される自動車内装部品では、同10~12kジュール毎平方メートル程度の耐衝撃性が求められる。CNF複合樹脂を展開するメーカー各社では、耐衝撃性の改良を最優先とした開発が進められている。しかし、一般的に自動車の新規材料での採用決定までにかかる期間は4~5年程度とされていることを考えると、遅くとも2025年には同10kジュール毎平方メートル程度の耐衝撃性を実現しなければ、2030年発売の車種での採用に間に合わない可能性が高い。
このままでは、OEM(自動車メーカー)やTier1(一次部品サプライヤー)にとってCNF複合樹脂の活用は「ゴールを見据えた開発テーマ」から「中長期的な開発テーマ」へと後退する可能性もある。
ただ、例えばエンジンルーム内のユニット部品など、万一の衝突の際でも直接衝撃を受けないものや、衝撃で割れたとしても車室内に破片が飛び散らずに搭乗者の怪我につながるリスクの少ない部品の数は多く、これらの部品については現状の物性のままでもCNF複合樹脂が使用できる可能性は高い。
また、人が乗らないドローンやスピードの出ない次世代モビリティなどは、自動車ほどの耐衝撃性が求められないが軽量化に対するニーズは強い。まずはこれらの部材での採用実績を作り、そこを突破口としてエンジンルーム内のユニット部品への採用を目指し、本命である内外装部品への足掛かりとするというシナリオも考えられる。
3.将来展望
CNF複合樹脂としての展開を進めるにあたり、足りない物性を補い、幅広い用途での採用を目指すという方向性もある。一方、CNF独自の優れた性能を追求し、既存の材料には無い尖った性能や付加価値を訴求し、ユーザー企業の想定を超える提案により新市場を創出するという別の選択肢もある。
高い曲げ弾性率や、優れた分散安定性、乳化安定性、チキソ性など、セルロースをナノサイズまで解繊することで初めて得られる特異な性能に対するニーズもある。CNFの開発で蓄積した技術・ノウハウを整理し、ミクロンからナノまでの様々な形態・サイズの繊維の中からニーズに最適なエレメントを探し出し、CNFという材料に対するユーザーの期待を超えるパフォーマンスを提案していくことが、2030年に向けたCNF需要の創出と拡大につながると考える。
※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3237
調査要綱
1.調査期間: 2023年1月~2月
2.調査対象: セルロースナノファイバーメーカー(製紙メーカー、化学メーカー等)、研究機関
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
4.発刊日: 2023年3月30日
お問い合わせ
⇒プレスリリースの内容や引用についてのお問い合わせは下記までお願いいたします。
株式会社矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム
https://www.yano.co.jp/contact/contact.php/press
株式会社矢野経済研究所
https://www.yano.co.jp/
2.注目トピック~自動車内装材での採用を狙うには耐衝撃性の改善が必須、エンジンルーム内部のユニット部品からスタートする手も~
CNFと樹脂との複合材料は、自動車や家電、建材など幅広い用途で植物由来の強化樹脂として需要拡大が期待されているが、CNF複合樹脂の耐衝撃性は一般的なものでシャルピー衝撃強度2~4kジュール毎平方メートル程度にとどまる。
CNF複合樹脂のボリュームゾーンとして期待される自動車内装部品では、同10~12kジュール毎平方メートル程度の耐衝撃性が求められる。CNF複合樹脂を展開するメーカー各社では、耐衝撃性の改良を最優先とした開発が進められている。しかし、一般的に自動車の新規材料での採用決定までにかかる期間は4~5年程度とされていることを考えると、遅くとも2025年には同10kジュール毎平方メートル程度の耐衝撃性を実現しなければ、2030年発売の車種での採用に間に合わない可能性が高い。
このままでは、OEM(自動車メーカー)やTier1(一次部品サプライヤー)にとってCNF複合樹脂の活用は「ゴールを見据えた開発テーマ」から「中長期的な開発テーマ」へと後退する可能性もある。
ただ、例えばエンジンルーム内のユニット部品など、万一の衝突の際でも直接衝撃を受けないものや、衝撃で割れたとしても車室内に破片が飛び散らずに搭乗者の怪我につながるリスクの少ない部品の数は多く、これらの部品については現状の物性のままでもCNF複合樹脂が使用できる可能性は高い。
また、人が乗らないドローンやスピードの出ない次世代モビリティなどは、自動車ほどの耐衝撃性が求められないが軽量化に対するニーズは強い。まずはこれらの部材での採用実績を作り、そこを突破口としてエンジンルーム内のユニット部品への採用を目指し、本命である内外装部品への足掛かりとするというシナリオも考えられる。
3.将来展望
CNF複合樹脂としての展開を進めるにあたり、足りない物性を補い、幅広い用途での採用を目指すという方向性もある。一方、CNF独自の優れた性能を追求し、既存の材料には無い尖った性能や付加価値を訴求し、ユーザー企業の想定を超える提案により新市場を創出するという別の選択肢もある。
高い曲げ弾性率や、優れた分散安定性、乳化安定性、チキソ性など、セルロースをナノサイズまで解繊することで初めて得られる特異な性能に対するニーズもある。CNFの開発で蓄積した技術・ノウハウを整理し、ミクロンからナノまでの様々な形態・サイズの繊維の中からニーズに最適なエレメントを探し出し、CNFという材料に対するユーザーの期待を超えるパフォーマンスを提案していくことが、2030年に向けたCNF需要の創出と拡大につながると考える。
※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3237
調査要綱
1.調査期間: 2023年1月~2月
2.調査対象: セルロースナノファイバーメーカー(製紙メーカー、化学メーカー等)、研究機関
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
4.発刊日: 2023年3月30日
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