アメリカ大豆輸出協会(USSEC、本部:米国ミズーリ州チェスタフィールド市、日本事務所:東京都港区)は、2022年12月8日(木)、SNI(Soy Nutrition Institute)Global・国際大豆機能研究会の栄養科学・研究ディレクター、マーク・メシーナ博士を講師に「国際大豆機能研究会・メディアセミナー~マーク・メシーナ博士を囲んで~」を開催しました。
マーク・メシーナ博士は、大豆の栄養・機能性研究の第一人者で、世界で行われている大豆食品、大豆イソフラボンに関する栄養・機能性研究成果および研究動向を調査し、数多くの医療専門家向け雑誌に記事を寄稿、世界各国で講演活動を行っています。12月6日から東京・有楽町国際フォーラムで開催された国際栄養学会議(22nd IUNS-ICN TOKYO)に向けて来日し、メディア関係者を対象とした今回のセミナーに登壇しました。
セミナーの講演では、大豆食品および大豆由来のタンパク質が、栄養面、健康機能性の面でも他のたんぱく素材に比べて数々の優位性をもっており、環境面でも大豆・大豆食品が最も環境負荷が少ないことが報告されました。
次いでインタビューアーとして日経BP総合研究所 客員研究員、西沢邦浩氏が加わり、大豆食品の栄養・機能性に関する最新研究の知見をもとに、大豆たんぱく質の優位性、大豆イソフラボンの安全性や大豆および大豆食品の環境面での優位性などについて活発な議論が展開されました。
セミナーを共同主催したSNI Global CEO のジュリー・オーメン氏(Julie Ohmen)は、「今回の対話は、日米の大豆研究の成果を議論する貴重な機会となった。プラントベースフードへの関心が世界的に高まる中で大豆食品、大豆たんぱくに対して改めて大きな期待と関心が集まっていることを実感しています。大豆は、様々な健康ベネフィットを持ち、今後の地球環境問題にも対応できる優れた食品素材です。こうした大豆の正しい情報を普及・啓発する活動をSNI Global としてメディアの皆さんの協力を得ながら今後も推進していきたい」と抱負を述べました。
「国際大豆機能研究・メディアセミナー~マーク・メシーナ博士を囲んで~」
日時: 2022年12月8日(木)午前10時~正午
会場: AP新橋・カンファレンスルーム
<マーク・メシーナ博士の講演について>
テーマ:「大豆食品はあらゆる年代に恩恵をもたらす」
講演要旨:
◇大豆食品、大豆たんぱく質の優位性
Superiority of Soy Foods and Soy Protein
・大豆のタンパク質含有率(約45%)は、他の豆類に勝っており、脂質も豊富である。また、プロテインスコアにおいても大豆はトップレベルであり牛肉のそれを上回っている。
・特に大豆に含まれる機能性成分βコングリシニンには、内臓脂肪の低減効果やコレステロールの減少効果、腎機能を向上させる働きなど、20年以上の研究により様々なベネフィットがあることが分かってきた。こうした研究成果の多くは日本の研究者の貢献によるもの。
・また、大豆の脂質についてもバランスのとれた脂肪酸で構成されていて、心疾患など成人病のリスクを低減させることが知られており、2017年に米国のFDA(食品医薬品局)は、大豆油の健康表示を認めた。また、大豆油に含まれる多価不飽和脂肪酸が、糖尿病のリスクを下げることが、昨年発表された、31の研究成果をもとにメタアナリシスを行った論文により明らかになった。
・日本の肥満率が先進諸国のなかで顕著に低い。これには大豆食品を多く取り入れた日本食の影響があると考えられる。
・大豆のタンパク質は、環境面から見ても最も環境負荷が少ない効率的なタンパク源である。2019年に発表された論文では、豆腐や豆乳の食品の中で最も環境負荷が低いということが示された。
・2050年までに世界の人口は、100億人に達するといわれているが、大豆、大豆食品が将来の世界の栄養課題に応える上で最も重要な食品になると考えている。大豆は、手に入れやすく、低価格であり、多様な目的に利用でき、高たんぱく・高脂質で栄養価に優れ、大気中の窒素固定を行うなど土壌にも良い持続可能な農産物・食品である。
◇サルコペニアの防止、肌の改善にも役立つ大豆食品
Soy foods help prevent sarcopenia and improve skin
・大豆はサルコペニアの改善にも役立つ。加齢に伴って筋肉が失われるサルコペニア症候群は、高齢化が進行する日本にとって大きな社会課題だ。昨年、中国で行われた健常者と対象とした研究で、様々なタンパク質の摂取方法を比較したところ、大豆たんぱくを中心としたタンパク質を多くとった被験者グループで除脂肪体重が増加し、運動能力も向上した。このことから、大豆たんぱくの積極的な摂取がサルコペニアの予防にも効果がある可能性が示された。
・大豆が他の食品と著しく異なるポイントとしてイソフラボンを豊富に含むことがあげられる。
イソフラボンは植物性エストロゲンと言われることもあるが、分子構造的にも現象的にもエストロゲン(生体ホルモン)とは異なるもの。
・大豆食品の摂取と肌の関係については、多くの臨床研究がなされていて、肌の状態改善やしわの減少に効果があることが示されている。2018年に発表された日本の研究で8週間の豆乳の摂取により肌の状態が著しく改善したことが示された。
・こうしたこれまでの研究成果をふまえ、SNIグローバルでは治験期間を6か月間に延長し、カゼインなど他のタンパク質と肌の状態改善を比較する委託研究にUSB(全米大豆基金財団)から資金(約40万ドル)を調達した。
◇大豆摂取と乳がん発生率の関係
Relationship between Soy Intake and Breast Cancer Incidence Rate
・大豆食品を多く摂取している国は乳がんの発生率が低い。日本は米国に比べて1/3の水準であり、同じように大豆食品を定期的に摂取している中国は日本よりも低い。私の考えでは、若い年齢のうちから大豆食品を摂取している必要があると考えている。この仮説を支持する多くのデータが存在する。女子は、一日一回(大豆たんぱく7~15g)以上、大豆食品を摂るべきだ。
・大豆は、様々な恩恵をもたらす食品であり、大人であれば、2回は大豆食品を摂取することで健康効果を得られる。
マーク・メシーナ博士は、大豆の栄養・機能性研究の第一人者で、世界で行われている大豆食品、大豆イソフラボンに関する栄養・機能性研究成果および研究動向を調査し、数多くの医療専門家向け雑誌に記事を寄稿、世界各国で講演活動を行っています。12月6日から東京・有楽町国際フォーラムで開催された国際栄養学会議(22nd IUNS-ICN TOKYO)に向けて来日し、メディア関係者を対象とした今回のセミナーに登壇しました。
セミナーの講演では、大豆食品および大豆由来のタンパク質が、栄養面、健康機能性の面でも他のたんぱく素材に比べて数々の優位性をもっており、環境面でも大豆・大豆食品が最も環境負荷が少ないことが報告されました。
次いでインタビューアーとして日経BP総合研究所 客員研究員、西沢邦浩氏が加わり、大豆食品の栄養・機能性に関する最新研究の知見をもとに、大豆たんぱく質の優位性、大豆イソフラボンの安全性や大豆および大豆食品の環境面での優位性などについて活発な議論が展開されました。
セミナーを共同主催したSNI Global CEO のジュリー・オーメン氏(Julie Ohmen)は、「今回の対話は、日米の大豆研究の成果を議論する貴重な機会となった。プラントベースフードへの関心が世界的に高まる中で大豆食品、大豆たんぱくに対して改めて大きな期待と関心が集まっていることを実感しています。大豆は、様々な健康ベネフィットを持ち、今後の地球環境問題にも対応できる優れた食品素材です。こうした大豆の正しい情報を普及・啓発する活動をSNI Global としてメディアの皆さんの協力を得ながら今後も推進していきたい」と抱負を述べました。
「国際大豆機能研究・メディアセミナー~マーク・メシーナ博士を囲んで~」
日時: 2022年12月8日(木)午前10時~正午
会場: AP新橋・カンファレンスルーム
<マーク・メシーナ博士の講演について>
テーマ:「大豆食品はあらゆる年代に恩恵をもたらす」
講演要旨:
◇大豆食品、大豆たんぱく質の優位性
Superiority of Soy Foods and Soy Protein
・大豆のタンパク質含有率(約45%)は、他の豆類に勝っており、脂質も豊富である。また、プロテインスコアにおいても大豆はトップレベルであり牛肉のそれを上回っている。
・特に大豆に含まれる機能性成分βコングリシニンには、内臓脂肪の低減効果やコレステロールの減少効果、腎機能を向上させる働きなど、20年以上の研究により様々なベネフィットがあることが分かってきた。こうした研究成果の多くは日本の研究者の貢献によるもの。
・また、大豆の脂質についてもバランスのとれた脂肪酸で構成されていて、心疾患など成人病のリスクを低減させることが知られており、2017年に米国のFDA(食品医薬品局)は、大豆油の健康表示を認めた。また、大豆油に含まれる多価不飽和脂肪酸が、糖尿病のリスクを下げることが、昨年発表された、31の研究成果をもとにメタアナリシスを行った論文により明らかになった。
・日本の肥満率が先進諸国のなかで顕著に低い。これには大豆食品を多く取り入れた日本食の影響があると考えられる。
・大豆のタンパク質は、環境面から見ても最も環境負荷が少ない効率的なタンパク源である。2019年に発表された論文では、豆腐や豆乳の食品の中で最も環境負荷が低いということが示された。
・2050年までに世界の人口は、100億人に達するといわれているが、大豆、大豆食品が将来の世界の栄養課題に応える上で最も重要な食品になると考えている。大豆は、手に入れやすく、低価格であり、多様な目的に利用でき、高たんぱく・高脂質で栄養価に優れ、大気中の窒素固定を行うなど土壌にも良い持続可能な農産物・食品である。
◇サルコペニアの防止、肌の改善にも役立つ大豆食品
Soy foods help prevent sarcopenia and improve skin
・大豆はサルコペニアの改善にも役立つ。加齢に伴って筋肉が失われるサルコペニア症候群は、高齢化が進行する日本にとって大きな社会課題だ。昨年、中国で行われた健常者と対象とした研究で、様々なタンパク質の摂取方法を比較したところ、大豆たんぱくを中心としたタンパク質を多くとった被験者グループで除脂肪体重が増加し、運動能力も向上した。このことから、大豆たんぱくの積極的な摂取がサルコペニアの予防にも効果がある可能性が示された。
・大豆が他の食品と著しく異なるポイントとしてイソフラボンを豊富に含むことがあげられる。
イソフラボンは植物性エストロゲンと言われることもあるが、分子構造的にも現象的にもエストロゲン(生体ホルモン)とは異なるもの。
・大豆食品の摂取と肌の関係については、多くの臨床研究がなされていて、肌の状態改善やしわの減少に効果があることが示されている。2018年に発表された日本の研究で8週間の豆乳の摂取により肌の状態が著しく改善したことが示された。
・こうしたこれまでの研究成果をふまえ、SNIグローバルでは治験期間を6か月間に延長し、カゼインなど他のタンパク質と肌の状態改善を比較する委託研究にUSB(全米大豆基金財団)から資金(約40万ドル)を調達した。
◇大豆摂取と乳がん発生率の関係
Relationship between Soy Intake and Breast Cancer Incidence Rate
・大豆食品を多く摂取している国は乳がんの発生率が低い。日本は米国に比べて1/3の水準であり、同じように大豆食品を定期的に摂取している中国は日本よりも低い。私の考えでは、若い年齢のうちから大豆食品を摂取している必要があると考えている。この仮説を支持する多くのデータが存在する。女子は、一日一回(大豆たんぱく7~15g)以上、大豆食品を摂るべきだ。
・大豆は、様々な恩恵をもたらす食品であり、大人であれば、2回は大豆食品を摂取することで健康効果を得られる。
講演に続き、日経BP総合研究所 客員研究員 西沢邦浩氏がメシーナ博士の講演内容に関してインタビューをしました。
<インタビュー内容ハイライト> Interview Highlight
西沢:大豆が他のタンパクの源に比べて様々な優位点をもっていることが博士の講演から理解できました。最近、米国では大豆以外の豆類、エンドウ豆やそら豆などを原料とした加工食品も数多く開発されているようですが、こうしたトレンドの背景は何でしょうか。
メシーナ博士:他の豆類も注目されているのは、大豆がアレルゲンとして認識されていることがひとつの要因だと思いますが、実際には大豆がアレルゲンになる人は1000人当り3名程度と非常に少ない。一方で他の豆類でもアレルギーの反応率は最近になって上昇しています。マーケティング的観点では、他の豆類の方が目新しいということもあるでしょう。また、イソフラボンの働き(ホルモン活性)が米国では、一部の専門家や消費者に誤ってとらえられていることの影響も考えられます。しかし、こうした認識は、間違っています。
西沢:ご指摘の通りイソフラボンの作用は、ホルモン様といわれていますが、実際にはマイルドな調整作用であり、健康面でのリスクがないことは、これまでの研究結果で明らかになっています。こうした事実を米国もそうですが日本のメディアも正確に伝えていく必要があります。
メシーナ博士:アメリカの癌学会から今年発表された最新の研究では、大豆食品の摂取が癌の再発を防ぐという報告も出ています。
西沢:日本の乳がん学会の乳がん診断ガイドラインにおいても、食事によるイソフラボンの摂取は乳がん患者の予後を改善する可能性があるという指針を出しています。
西沢:大豆がたんぱく源として環境負荷が低い食品というお話がありましたが、南米等では熱帯雨林をつぶして大豆畑にするような事態が発生し問題になっています。
メシーナ博士:世界中の大豆のかなりの部分が家畜の飼料として使われているという現状を消費者の皆さんに正しく認識してほしい。長期的には、たんぱく源を大豆にシフトしていくことが重要だと思います。南米では、大豆畑が熱帯雨林の破壊につながっているという指摘が確かにありますが、だから大豆や大豆食品が環境上問題ということにはなりません。本来別の問題です。米国では確かにそうした問題は現在では見られませんが、100年前には、南米と同じような森林破壊が生じていたということにも留意すべきでしょう。注目すべきなのは、米国の大豆生産農家は技術革新により単収を大幅に向上させていることです。こうした技術革新を推進していくことが重要と考えます。
国際大豆機能研究会(Soy Nutrition Institute Global)
栄養科学・研究ディレクター マーク・メシーナ 博士 Dr. Mark Messina
マーク・メシーナ博士は、国際大豆機能研究会(Soy Nutrition Institute Global)の栄養科学・研究部長であり、ロマリンダ大学の非常勤准教授。
過去32年間、大豆食品と大豆イソフラボンの健康効果に関する研究に専念。 これらのテーマについて幅広く執筆し、医療専門家向けに100以上の記事を出版しているほか、55カ国で消費者と専門家の両方のグループに対して750以上の講演を行っている。
メシーナ博士は、25万人以上の栄養士や医療関係者に購読されている季刊誌「The Soy Connection」の編集顧問委員長であり、定期的にコラムを執筆。 また、慢性疾患の予防と治療における大豆の役割に関する9つの国際シンポジウムを企画・司会し、中国、インド、ブラジル、イタリアで大豆会議を開催している。
インタビューアー Interviewer
日経BP総合研究所 客員研究員 西沢邦浩氏
Kunihiro Nishizawa, Research Visiting Fellow,
Nikkei BP Intelligence Group
1991年日経BP入社。1998年『日経ヘルス』創刊と同時に副編集長に着任。2005年より同誌編集長。2008年に『日経ヘルス プルミエ』を創刊し、2010年まで編集長。2005~06 「日経ヘルス」誌を通してデトックス(解毒)健康法を発信、メディア・市場を巻き込んだブームに。2008 食物繊維が多い野菜から箸をつけることで、血糖値の急上昇を抑え、肥満や老化を防ぐ食事法として「ベジタブルファースト」を提案。広く社会に流布するようになった。ほかに健康的な間食習慣・ヘルシースナッキング、大麦(もち麦)などの市場立ち上げや、各種エビデンス構築、情報発信などを行う。
<国際大豆機能研究会・SNI(Soy Nutrition Institute)Globalについて> About SNI Global
国際大豆機能研究会・SNI Globalは、信頼性のある科学的研究に基づく大豆関連栄養情報の収集と普及を目標に、米国大豆業界を支援するための活動やプログラムを行うために設立された非営利法人です。SNI Globalは、大豆の栄養学的および公衆衛生上の利点に関するコミュニケーション、情報提供活動、教育、アドボカシー(唱道活動)を通じて、国内外の大豆利用の拡大を支援するために、国内外の大豆産業関係者の調和と協力を奨励・推進します。
<アメリカ大豆輸出協会について> About USSEC Japan
アメリカ大豆輸出協会 (USSEC) は大豆生産者、関連団体、政府機関とのパートナーシップを通じ、世界90ヶ国以上でアメリカ大豆と大豆製品の市場拡大や輸出プロモーションをおこなっているダイナミックなマーケティング機関です。日本事務所 (港区) は初の海外オフィスとして1956年に設立され、今年で66周年目を迎えます。現在オフィスは日本、韓国の北東アジア地域の管轄内にあり、各国と連携しながらローカルかつグローバルな活動を目指しています。情報提供、海外視察、コンファレンス開催や業界とのコラボイベントなどを通じ米国大豆の利用の最大化および大豆製品の価値向上を目的とした施策の立案・実施を行っています。近年はサステナビリティに関する情報発信に力を入れています。
<インタビュー内容ハイライト> Interview Highlight
西沢:大豆が他のタンパクの源に比べて様々な優位点をもっていることが博士の講演から理解できました。最近、米国では大豆以外の豆類、エンドウ豆やそら豆などを原料とした加工食品も数多く開発されているようですが、こうしたトレンドの背景は何でしょうか。
メシーナ博士:他の豆類も注目されているのは、大豆がアレルゲンとして認識されていることがひとつの要因だと思いますが、実際には大豆がアレルゲンになる人は1000人当り3名程度と非常に少ない。一方で他の豆類でもアレルギーの反応率は最近になって上昇しています。マーケティング的観点では、他の豆類の方が目新しいということもあるでしょう。また、イソフラボンの働き(ホルモン活性)が米国では、一部の専門家や消費者に誤ってとらえられていることの影響も考えられます。しかし、こうした認識は、間違っています。
西沢:ご指摘の通りイソフラボンの作用は、ホルモン様といわれていますが、実際にはマイルドな調整作用であり、健康面でのリスクがないことは、これまでの研究結果で明らかになっています。こうした事実を米国もそうですが日本のメディアも正確に伝えていく必要があります。
メシーナ博士:アメリカの癌学会から今年発表された最新の研究では、大豆食品の摂取が癌の再発を防ぐという報告も出ています。
西沢:日本の乳がん学会の乳がん診断ガイドラインにおいても、食事によるイソフラボンの摂取は乳がん患者の予後を改善する可能性があるという指針を出しています。
西沢:大豆がたんぱく源として環境負荷が低い食品というお話がありましたが、南米等では熱帯雨林をつぶして大豆畑にするような事態が発生し問題になっています。
メシーナ博士:世界中の大豆のかなりの部分が家畜の飼料として使われているという現状を消費者の皆さんに正しく認識してほしい。長期的には、たんぱく源を大豆にシフトしていくことが重要だと思います。南米では、大豆畑が熱帯雨林の破壊につながっているという指摘が確かにありますが、だから大豆や大豆食品が環境上問題ということにはなりません。本来別の問題です。米国では確かにそうした問題は現在では見られませんが、100年前には、南米と同じような森林破壊が生じていたということにも留意すべきでしょう。注目すべきなのは、米国の大豆生産農家は技術革新により単収を大幅に向上させていることです。こうした技術革新を推進していくことが重要と考えます。
国際大豆機能研究会(Soy Nutrition Institute Global)
栄養科学・研究ディレクター マーク・メシーナ 博士 Dr. Mark Messina
マーク・メシーナ博士は、国際大豆機能研究会(Soy Nutrition Institute Global)の栄養科学・研究部長であり、ロマリンダ大学の非常勤准教授。
過去32年間、大豆食品と大豆イソフラボンの健康効果に関する研究に専念。 これらのテーマについて幅広く執筆し、医療専門家向けに100以上の記事を出版しているほか、55カ国で消費者と専門家の両方のグループに対して750以上の講演を行っている。
メシーナ博士は、25万人以上の栄養士や医療関係者に購読されている季刊誌「The Soy Connection」の編集顧問委員長であり、定期的にコラムを執筆。 また、慢性疾患の予防と治療における大豆の役割に関する9つの国際シンポジウムを企画・司会し、中国、インド、ブラジル、イタリアで大豆会議を開催している。
インタビューアー Interviewer
日経BP総合研究所 客員研究員 西沢邦浩氏
Kunihiro Nishizawa, Research Visiting Fellow,
Nikkei BP Intelligence Group
1991年日経BP入社。1998年『日経ヘルス』創刊と同時に副編集長に着任。2005年より同誌編集長。2008年に『日経ヘルス プルミエ』を創刊し、2010年まで編集長。2005~06 「日経ヘルス」誌を通してデトックス(解毒)健康法を発信、メディア・市場を巻き込んだブームに。2008 食物繊維が多い野菜から箸をつけることで、血糖値の急上昇を抑え、肥満や老化を防ぐ食事法として「ベジタブルファースト」を提案。広く社会に流布するようになった。ほかに健康的な間食習慣・ヘルシースナッキング、大麦(もち麦)などの市場立ち上げや、各種エビデンス構築、情報発信などを行う。
<国際大豆機能研究会・SNI(Soy Nutrition Institute)Globalについて> About SNI Global
国際大豆機能研究会・SNI Globalは、信頼性のある科学的研究に基づく大豆関連栄養情報の収集と普及を目標に、米国大豆業界を支援するための活動やプログラムを行うために設立された非営利法人です。SNI Globalは、大豆の栄養学的および公衆衛生上の利点に関するコミュニケーション、情報提供活動、教育、アドボカシー(唱道活動)を通じて、国内外の大豆利用の拡大を支援するために、国内外の大豆産業関係者の調和と協力を奨励・推進します。
<アメリカ大豆輸出協会について> About USSEC Japan
アメリカ大豆輸出協会 (USSEC) は大豆生産者、関連団体、政府機関とのパートナーシップを通じ、世界90ヶ国以上でアメリカ大豆と大豆製品の市場拡大や輸出プロモーションをおこなっているダイナミックなマーケティング機関です。日本事務所 (港区) は初の海外オフィスとして1956年に設立され、今年で66周年目を迎えます。現在オフィスは日本、韓国の北東アジア地域の管轄内にあり、各国と連携しながらローカルかつグローバルな活動を目指しています。情報提供、海外視察、コンファレンス開催や業界とのコラボイベントなどを通じ米国大豆の利用の最大化および大豆製品の価値向上を目的とした施策の立案・実施を行っています。近年はサステナビリティに関する情報発信に力を入れています。