日本臨床カンナビノイド学会とGreen Zone Japanが国内初のユーザー調査結果を学術誌にて報告
概要:
日本臨床カンナビノイド学会副理事長の正高佑志医師(一般社団法人Green Zone Japan)と同学会前理事長の新垣実医師(医療法人新美会)らの研究チームは、日本国内のカンナビジオール(CBD)製品ユーザーを対象とした匿名のオンライン調査を実施し、日本におけるCBD製品の用途や有効性について初めて明らかにしました。本研究成果は国内の査読学術誌である『日本統合医療学会誌 Vol.15 No.2(2022年11月)』に掲載されました。
本研究成果を一般の方に知ってもらうため、11月30日付けで本学会WEBサイトにて概要を公表しました。
研究背景:
大麻草に含有される成分の一種であるカンナビジオール(CBD)は難治てんかんの特効薬として治験実施が予定されていますが、同時にサプリメント・化粧品・嗜好品として幅広く流通し、2021年の国内市場規模は180億円と試算されています。これらの用途や有効性についての調査はこれまでに行われたことがありませんでした。
方法:
CBD使用経験者(過去1年以内にTHCを含む大麻使用者を除く)を対象としFacebook、Twitter、YoutubeなどのSNSを用いて回答を依頼したところ、799件の有効回答が得られました。CBD製品の用途として多かったのはリラクゼーション(77.8%)、睡眠改善(66.3%)、不安(56.2%)、健康増進(50.8%)、抑うつ(47.8%)であり、使用者は平均して5.5の目的に対してCBDを使用していました。
結果:
使用前後の各症状についての重症度自己評価で50%以上の改善を自覚していた割合は以下のとおりでした。(頭痛70.9%、慢性疼痛67.8%、睡眠障害67.4%、物質使用障害66.7%、神経痛65.5%、抑うつ62.4%、不安59.6%、関節痛54.5%、膠原病50.0%、皮膚疾患49.7%、てんかん42.1%、ぜんそく37.8%)
一方で副作用が疑われる症状の出現率は7.4%で、重篤なものは認められませんでした。
図1 CBD使用の目的
図2 CBD使用前後での自覚症状の変化
概要:
日本臨床カンナビノイド学会副理事長の正高佑志医師(一般社団法人Green Zone Japan)と同学会前理事長の新垣実医師(医療法人新美会)らの研究チームは、日本国内のカンナビジオール(CBD)製品ユーザーを対象とした匿名のオンライン調査を実施し、日本におけるCBD製品の用途や有効性について初めて明らかにしました。本研究成果は国内の査読学術誌である『日本統合医療学会誌 Vol.15 No.2(2022年11月)』に掲載されました。
本研究成果を一般の方に知ってもらうため、11月30日付けで本学会WEBサイトにて概要を公表しました。
研究背景:
大麻草に含有される成分の一種であるカンナビジオール(CBD)は難治てんかんの特効薬として治験実施が予定されていますが、同時にサプリメント・化粧品・嗜好品として幅広く流通し、2021年の国内市場規模は180億円と試算されています。これらの用途や有効性についての調査はこれまでに行われたことがありませんでした。
方法:
CBD使用経験者(過去1年以内にTHCを含む大麻使用者を除く)を対象としFacebook、Twitter、YoutubeなどのSNSを用いて回答を依頼したところ、799件の有効回答が得られました。CBD製品の用途として多かったのはリラクゼーション(77.8%)、睡眠改善(66.3%)、不安(56.2%)、健康増進(50.8%)、抑うつ(47.8%)であり、使用者は平均して5.5の目的に対してCBDを使用していました。
結果:
使用前後の各症状についての重症度自己評価で50%以上の改善を自覚していた割合は以下のとおりでした。(頭痛70.9%、慢性疼痛67.8%、睡眠障害67.4%、物質使用障害66.7%、神経痛65.5%、抑うつ62.4%、不安59.6%、関節痛54.5%、膠原病50.0%、皮膚疾患49.7%、てんかん42.1%、ぜんそく37.8%)
一方で副作用が疑われる症状の出現率は7.4%で、重篤なものは認められませんでした。
図1 CBD使用の目的
図2 CBD使用前後での自覚症状の変化
本研究成果の意義:
この結果は日本国内で食品・サプリメント・雑貨として利用されている製品が使用者の生活の質改善に貢献していることを示す初の検証結果であり、今後てんかん以外の症状に対しても、医療用途での適応拡大を検討する意義があることを示すものと考えられます。
【研究責任者プロフィール】
正高佑志(まさたかゆうじ)1985年生まれ。熊本大学医学部医学科卒。医師。日本臨床カンナビノイド学会副理事長。大麻についての啓発団体”一般社団法人Green Zone Japan”代表理事。2020年に大麻由来のサプリメント(CBDオイル)が国内の難治てんかん症例に有効であったことを学術的に報告し、国内での治験に向けた取り組みの端緒を開いた。著書に「お医者さんがする大麻とCBDの話(彩図社 2021年)」がある。
【掲載論文についての詳細】
タイトル:日本におけるカンナビジオール製品の使用実態に関する横断調査
著者:正高佑志(研究責任者)、杉山岳史、赤星栄志、新垣実
掲載誌:日本統合医療学会誌(Vol.15 No.2 2022年11月号)
発行:一般社団法人 日本統合医療学会
ISSN:2435-5372
一般公開した概要については下記WEBサイトをご覧ください。
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=131773
<用語集>
Δ9-THC:
デルタ9-テトラヒドロカンナビノール。THCとも表記される。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、最も向精神作用のある成分。いわゆるマリファナの主成分として知られている。痛みの緩和、吐き気の抑制、けいれん抑制、食欲増進、アルツハイマー病への薬効があることが知られている。
CBD:
カンナビジオール。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、向精神作用のない成分で、てんかんの他に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、神経性疼痛、統合失調症、社会不安、抑うつ、抗がん、吐き気抑制、炎症性疾患、関節リウマチ、感染症、クローン病、心血管疾患、糖尿病合併症などの治療効果を有する可能性があると報告されている。2018年6月に行われたWHO/ECDD(依存性薬物専門家委員会)の批判的審査では、純粋なCBDは国際薬物規制の対象外であると勧告された。
内因性カンナビノイド系:
内因性カンナビノイド系(ECS)は、内因性リガンド(アナンダミド、2-AG等)、それらのカンナビノイド受容体(CB1,CB2等)、および内因性カンナビノイドの形成と分解を触媒する酵素(FAAH、MAGL等)を含む脂質の複雑なネットワークである。内因性カンナビノイド系は、学習と記憶、感情処理、睡眠、体温制御、痛みの制御、炎症と免疫応答、食欲など、私たちの最も重要な身体機能の調節および制御を担っている。
2018年米国農業法による「ヘンプ」の定義:
「ヘンプ」という用語は、「大麻(学名Cannabis sativa L.)」の植物および、その植物のいずれかの部位(種子と全ての派生物、抽出物、カンナビノイド、異性体、酸、塩、異性体の塩を含む)であり、成長しているか否かにかかわらず、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(delta-9 tetrahydrocannabinol)の濃度が乾燥重量ベースで0.3%以下であるもの」を指す。
日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2022年4月段階で、正会員(医療従事者、研究者)101名、賛助法人会員14名、 賛助個人会員27名、合計142名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/
日本の大麻取締法
我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2018年の時点で、全国作付面積11.2ha、大麻栽培者35名、大麻研究者401名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。
現在、2021年の大麻等の薬物対策のあり方検討会の報告書が取りまとめられ、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会大麻規制規制小委員会にて改正大麻法に向けた議論が進められている。
この結果は日本国内で食品・サプリメント・雑貨として利用されている製品が使用者の生活の質改善に貢献していることを示す初の検証結果であり、今後てんかん以外の症状に対しても、医療用途での適応拡大を検討する意義があることを示すものと考えられます。
【研究責任者プロフィール】
正高佑志(まさたかゆうじ)1985年生まれ。熊本大学医学部医学科卒。医師。日本臨床カンナビノイド学会副理事長。大麻についての啓発団体”一般社団法人Green Zone Japan”代表理事。2020年に大麻由来のサプリメント(CBDオイル)が国内の難治てんかん症例に有効であったことを学術的に報告し、国内での治験に向けた取り組みの端緒を開いた。著書に「お医者さんがする大麻とCBDの話(彩図社 2021年)」がある。
【掲載論文についての詳細】
タイトル:日本におけるカンナビジオール製品の使用実態に関する横断調査
著者:正高佑志(研究責任者)、杉山岳史、赤星栄志、新垣実
掲載誌:日本統合医療学会誌(Vol.15 No.2 2022年11月号)
発行:一般社団法人 日本統合医療学会
ISSN:2435-5372
一般公開した概要については下記WEBサイトをご覧ください。
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=131773
<用語集>
Δ9-THC:
デルタ9-テトラヒドロカンナビノール。THCとも表記される。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、最も向精神作用のある成分。いわゆるマリファナの主成分として知られている。痛みの緩和、吐き気の抑制、けいれん抑制、食欲増進、アルツハイマー病への薬効があることが知られている。
CBD:
カンナビジオール。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、向精神作用のない成分で、てんかんの他に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、神経性疼痛、統合失調症、社会不安、抑うつ、抗がん、吐き気抑制、炎症性疾患、関節リウマチ、感染症、クローン病、心血管疾患、糖尿病合併症などの治療効果を有する可能性があると報告されている。2018年6月に行われたWHO/ECDD(依存性薬物専門家委員会)の批判的審査では、純粋なCBDは国際薬物規制の対象外であると勧告された。
内因性カンナビノイド系:
内因性カンナビノイド系(ECS)は、内因性リガンド(アナンダミド、2-AG等)、それらのカンナビノイド受容体(CB1,CB2等)、および内因性カンナビノイドの形成と分解を触媒する酵素(FAAH、MAGL等)を含む脂質の複雑なネットワークである。内因性カンナビノイド系は、学習と記憶、感情処理、睡眠、体温制御、痛みの制御、炎症と免疫応答、食欲など、私たちの最も重要な身体機能の調節および制御を担っている。
2018年米国農業法による「ヘンプ」の定義:
「ヘンプ」という用語は、「大麻(学名Cannabis sativa L.)」の植物および、その植物のいずれかの部位(種子と全ての派生物、抽出物、カンナビノイド、異性体、酸、塩、異性体の塩を含む)であり、成長しているか否かにかかわらず、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(delta-9 tetrahydrocannabinol)の濃度が乾燥重量ベースで0.3%以下であるもの」を指す。
日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2022年4月段階で、正会員(医療従事者、研究者)101名、賛助法人会員14名、 賛助個人会員27名、合計142名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/
日本の大麻取締法
我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2018年の時点で、全国作付面積11.2ha、大麻栽培者35名、大麻研究者401名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。
現在、2021年の大麻等の薬物対策のあり方検討会の報告書が取りまとめられ、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会大麻規制規制小委員会にて改正大麻法に向けた議論が進められている。