欧州医薬品庁ハーブ医薬品委員会:Committee on Herbal Medicinal Products (HMPC)では、治療目的の大麻草の利用について関心が高まっていることを受けて、2021年9月版の「大麻由来医薬品の用語と定義の整理」を公開しました。
日本臨床カンナビノイド学会(事務局:東京都品川区)では、原文の日本語仮訳を行い、本日付で学会サイトにて公開します。
本文では、「CBDオイル」および「大麻オイル」は、欧州薬局方と関連する「大麻エキス」や「大麻種子油」の用語と比べて不十分な定義であることを指摘しています。
タイトル:大麻由来医薬品の用語と定義の整理
Compilation of terms and definitions for Cannabis-derived medicinal products
本書の範囲
本書は、大麻由来製品の治療への関心が高まる中、大麻由来医薬品の表示及び製造において、より調和のとれたアプローチを促進するため、欧州委員会の要請に基づき、ハーブ医薬品委員会(HMPC)が制定したものである。
本書の目的は、医薬品に関する EU 法規制、EU 医薬品品質ガイドライン、欧州薬局方の規格を考慮し、大麻由来医薬品の評価に関連する既存の科学的・法的用語を要約することである。
HMPC は、広範な概観を確立するために、西洋ハーブ成分、西洋ハーブ又は西洋ハーブ医薬品に関連する用語だけでなく、単離された成分の非網羅的な選択も考慮に入れている。
本書は、異なるEU加盟国における大麻由来成分又は製品の使用、分類及び法的地位について言及するものではなく、またこれを妨げるものでもない。
目次
1. はじめに .. 3
2. 用語の定義の整理 .... 3
2.1. 医薬品.... 3
2.2. 西洋ハーブ成分..... 4
2.2.1. 植物 大麻草(Cannabis sativa L.)..... 5
2.2.2. 植物部位.... 5
2.3. 西洋ハーブ調剤..... 6
2.3.1. 一般的に使用される用語と関連する欧州薬局方の用語/定義.... 7
2.3.2. 一般的に使用される用語 - 定義が不十分.... 9
2.4. 大麻草の成分..... 10
2.4.1. カンナビノイド ..... 10
2.4.2. 揮発性テルペン類(精油)..... 13
2.4.3. フェノール化合物.... 13
2.5. 大麻由来医薬品の開発において考慮すべきその他の用語...13
訳注:「西洋ハーブ」という用語は、生薬(crude drug)、日本の漢方薬(Kampo medicine)、中国の中薬(traditional Chinese medicine)と区別される植物薬(herbal medicine, herbal drug, botanical medicine, botanical drug, plant medicine, plant drug)に相当する。本文では、植物薬や植物性医薬品(herbal medicinal product, botanical drug product)の訳語を使わず、漢方薬や中薬との区別を強調するために「西洋ハーブ」で統一した。
参考文献
袴塚高志.西洋ハーブ医薬品について. ファルマシア Vol.50 No.10 2014
漢方製剤・生薬製剤・生薬用語の英語表記(日本漢方生薬製剤協会)
日本語訳資料のダウンロードはこちらへ
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=126877
日本臨床カンナビノイド学会(事務局:東京都品川区)では、原文の日本語仮訳を行い、本日付で学会サイトにて公開します。
本文では、「CBDオイル」および「大麻オイル」は、欧州薬局方と関連する「大麻エキス」や「大麻種子油」の用語と比べて不十分な定義であることを指摘しています。
タイトル:大麻由来医薬品の用語と定義の整理
Compilation of terms and definitions for Cannabis-derived medicinal products
本書の範囲
本書は、大麻由来製品の治療への関心が高まる中、大麻由来医薬品の表示及び製造において、より調和のとれたアプローチを促進するため、欧州委員会の要請に基づき、ハーブ医薬品委員会(HMPC)が制定したものである。
本書の目的は、医薬品に関する EU 法規制、EU 医薬品品質ガイドライン、欧州薬局方の規格を考慮し、大麻由来医薬品の評価に関連する既存の科学的・法的用語を要約することである。
HMPC は、広範な概観を確立するために、西洋ハーブ成分、西洋ハーブ又は西洋ハーブ医薬品に関連する用語だけでなく、単離された成分の非網羅的な選択も考慮に入れている。
本書は、異なるEU加盟国における大麻由来成分又は製品の使用、分類及び法的地位について言及するものではなく、またこれを妨げるものでもない。
目次
1. はじめに .. 3
2. 用語の定義の整理 .... 3
2.1. 医薬品.... 3
2.2. 西洋ハーブ成分..... 4
2.2.1. 植物 大麻草(Cannabis sativa L.)..... 5
2.2.2. 植物部位.... 5
2.3. 西洋ハーブ調剤..... 6
2.3.1. 一般的に使用される用語と関連する欧州薬局方の用語/定義.... 7
2.3.2. 一般的に使用される用語 - 定義が不十分.... 9
2.4. 大麻草の成分..... 10
2.4.1. カンナビノイド ..... 10
2.4.2. 揮発性テルペン類(精油)..... 13
2.4.3. フェノール化合物.... 13
2.5. 大麻由来医薬品の開発において考慮すべきその他の用語...13
訳注:「西洋ハーブ」という用語は、生薬(crude drug)、日本の漢方薬(Kampo medicine)、中国の中薬(traditional Chinese medicine)と区別される植物薬(herbal medicine, herbal drug, botanical medicine, botanical drug, plant medicine, plant drug)に相当する。本文では、植物薬や植物性医薬品(herbal medicinal product, botanical drug product)の訳語を使わず、漢方薬や中薬との区別を強調するために「西洋ハーブ」で統一した。
参考文献
袴塚高志.西洋ハーブ医薬品について. ファルマシア Vol.50 No.10 2014
漢方製剤・生薬製剤・生薬用語の英語表記(日本漢方生薬製剤協会)
日本語訳資料のダウンロードはこちらへ
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=126877
図1 昨年6月の「大麻等の薬物対策のあり方検討会」報告書を受けて、22年5月25日から厚生労働省の有識者会議「大麻規制検討小委員会」が始まった
本学会は、大麻草およびカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。
なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。
<用語集>
Δ9-THC:
デルタ9-テトラヒドロカンナビノール。THCとも表記される。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、最も向精神作用のある成分。いわゆるマリファナの主成分として知られている。痛みの緩和、吐き気の抑制、けいれん抑制、食欲増進、アルツハイマー病への薬効があることが知られている。
CBD:
カンナビジオール。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、向精神作用のない成分で、てんかんの他に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、神経性疼痛、統合失調症、社会不安、抑うつ、抗がん、吐き気抑制、炎症性疾患、関節リウマチ、感染症、クローン病、心血管疾患、糖尿病合併症などの治療効果を有する可能性があると報告されている。2018年6月に行われたWHO/ECDD(依存性薬物専門家委員会)の批判的審査では、純粋なCBDは国際薬物規制の対象外であると勧告された。
内因性カンナビノイド系:
内因性カンナビノイド系(ECS)は、内因性リガンド(アナンダミド、2-AG等)、それらのカンナビノイド受容体(CB1,CB2等)、および内因性カンナビノイドの形成と分解を触媒する酵素(FAAH、MAGL等)を含む脂質の複雑なネットワークである。内因性カンナビノイド系は、学習と記憶、感情処理、睡眠、体温制御、痛みの制御、炎症と免疫応答、食欲など、私たちの最も重要な身体機能の調節および制御を担っている。
2018年米国農業法による「ヘンプ」の定義:
「ヘンプ」という用語は、「大麻(学名Cannabis sativa L.)」の植物および、その植物のいずれかの部位(種子と全ての派生物、抽出物、カンナビノイド、異性体、酸、塩、異性体の塩を含む)であり、成長しているか否かにかかわらず、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(delta-9 tetrahydrocannabinol)の濃度が乾燥重量ベースで0.3%以下であるもの」を指す。
日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2021年4月段階で、正会員(医療従事者、研究者)101名、賛助法人会員14名、 賛助個人会員27名、合計142名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/
日本の大麻取締法
我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2018年の時点で、全国作付面積11.2ha、大麻栽培者35名、大麻研究者401名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。
現在、2021年の大麻等の薬物対策のあり方検討会の報告書が取りまとめられ、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会大麻規制規制小委員会にて改正大麻法に向けた議論が進められている。
本学会は、大麻草およびカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。
なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。
<用語集>
Δ9-THC:
デルタ9-テトラヒドロカンナビノール。THCとも表記される。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、最も向精神作用のある成分。いわゆるマリファナの主成分として知られている。痛みの緩和、吐き気の抑制、けいれん抑制、食欲増進、アルツハイマー病への薬効があることが知られている。
CBD:
カンナビジオール。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、向精神作用のない成分で、てんかんの他に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、神経性疼痛、統合失調症、社会不安、抑うつ、抗がん、吐き気抑制、炎症性疾患、関節リウマチ、感染症、クローン病、心血管疾患、糖尿病合併症などの治療効果を有する可能性があると報告されている。2018年6月に行われたWHO/ECDD(依存性薬物専門家委員会)の批判的審査では、純粋なCBDは国際薬物規制の対象外であると勧告された。
内因性カンナビノイド系:
内因性カンナビノイド系(ECS)は、内因性リガンド(アナンダミド、2-AG等)、それらのカンナビノイド受容体(CB1,CB2等)、および内因性カンナビノイドの形成と分解を触媒する酵素(FAAH、MAGL等)を含む脂質の複雑なネットワークである。内因性カンナビノイド系は、学習と記憶、感情処理、睡眠、体温制御、痛みの制御、炎症と免疫応答、食欲など、私たちの最も重要な身体機能の調節および制御を担っている。
2018年米国農業法による「ヘンプ」の定義:
「ヘンプ」という用語は、「大麻(学名Cannabis sativa L.)」の植物および、その植物のいずれかの部位(種子と全ての派生物、抽出物、カンナビノイド、異性体、酸、塩、異性体の塩を含む)であり、成長しているか否かにかかわらず、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(delta-9 tetrahydrocannabinol)の濃度が乾燥重量ベースで0.3%以下であるもの」を指す。
日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2021年4月段階で、正会員(医療従事者、研究者)101名、賛助法人会員14名、 賛助個人会員27名、合計142名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/
日本の大麻取締法
我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2018年の時点で、全国作付面積11.2ha、大麻栽培者35名、大麻研究者401名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。
現在、2021年の大麻等の薬物対策のあり方検討会の報告書が取りまとめられ、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会大麻規制規制小委員会にて改正大麻法に向けた議論が進められている。