1月12日(水)に大阪で幕を開ける二人芝居、美津乃あわプロデュース『セイムタイム・ネクストイヤー』は、大人の恋を描いたロマンティック・ラブコメディ。初日を1週間後に控え、稽古もまさに最終段階に入った1月5日、プロデュース・演出・主演の美津乃あわさんと、相手役を務める俳優・田村K-1さんに、稽古場でインタビューを敢行、いろいろ聞いてきました!
■稽古前の貴重なお時間をいただいて恐縮です。よろしくお願いします。しばらくぶりの美津乃あわプロデュース(※1)ですが。
美 そうですね!気合入ってます!
■どんな作品を作るか考えたのは当然美津乃さんだと思うのですが、この『セイムタイム・ネクストイヤー』という戯曲を選んだ理由は?
美 これまで美津乃あわプロデュース公演は、基本的に私がホンを書いてきて。しかも、決まって男と女のすったもんだが題材だったんですけど、今回、なんとなく海外戯曲をやってみたくて。ずっと昔に加藤健一さん(※2)がご自分の事務所の公演で上演されていたのを拝見したことがあって、それがとても印象深くて。それと、この作品、25年間、年に一度だけ同じ日に密会するという男女の話なんですけど、25年間の交際の中の、5年おき、計6回の逢瀬が二幕六場で描かれていて。つまりオムニバス的で、お客様にとっても、飽きずに楽しんでいただきやすいかなと思ったんです。
■なるほど。田村さんは、最初に美津乃さんから声をかけられたとき、どんな感じでした?
田 びっくりした、それに尽きます。自分が何で声をかけられたのかわからなくて、まず出演の話だとは思わなかった。聞けば共演で、脚本をもらって読んでみたら、相手役で、しかも二人芝居のラブストーリーって。驚きしかない。けれど劇団の大先輩なので、不安の塊でしたけれど、お断りするという選択肢はなかったですね。
■田村K-1にとって美津乃あわとはどんな存在なんですか?
田 「神」的ポジションにいる人です。学生時代、自分も学内のサークルで演劇をやっていたんですけど、その当時、ファントマ(※3)の公演を観てあまりに面白くて圧倒されまして。お願いして戯曲をお借りして自分たちで上演したりしたんです。そうこうするうち、ワークショップに誘われたり。
■それは、伊藤えん魔座長から?それとも美津乃さんから?
田 いえいえ!もっと若い劇団員の方からです。そんな人たちから直接声をかけてもらえるような存在ではなかったので。
■え!?
田 古き良き、というか、ピラミッドのような上下関係のはっきりした劇団で、自分はその一番下にもいないわけで。神の意向を受けた若いメンバーから声をかけてもらったんです。で、その後「じゃ、出てみるか」となって、ずるずると劇団員になりました。
■美津乃さんは神に近い存在だったんですか?
田 はい。
美 というか、神の横で神を操っていた、みたいな。
田 そういう意味では神以上の存在ですね。
■はあ…。しかしですよ、この『セイムタイム・ネクストイヤー』という作品、別に家庭を持つ男と女が毎年一夜だけ愛を交わすホテルの部屋が舞台で、結構あからさまな表現もありますよね。
二人 はい。
■照れませんか?
美 照れますよ!笑って稽古が進まないこともしばしば。
田 だって「神以上の存在」ですしね。そんな女性と…
■そんな時どうするんですか?
美 託します。私は基本的に男性に引っ張っていってほしいタイプなんで。でもなかなかそこが難しくて。
田 僕は女性に主導権を持ってもらいたい方なんで。
■本番まであと数日ですが、照れは克服出来ました?
田 徐々に。なんとか・・・
美 このお芝居、キスシーンがいっぱいいあるんですねど、私、舞台のキスシーンで、下手くそな真似ごとで済ますのが嫌いで!よくあるじゃないですか、客席からも本当に接吻してないのがまる分かりの下手なやつ。あと、抱き合うときに遠慮して妙に体にすき間が出来てるのもイヤ。最初、キスするまで3時間かかったよね。
■大変な仕事を受けましたね。
田 …はい…
美 それからは、稽古中にお互いの恋愛観を話し合う日々です。「その芝居違うよね。ここで女性がこんな態度とったら、あなたどうするのよ?」みたいなダメ出しから始まって、次第にそれが恋愛観を吐露する場になっていく。田村君の恋愛遍歴もだいぶ聞いたよね。
田 言わなくてもいい話、だいぶした気がする。さっきも言いましたけど僕は女性に頼りたいほうなんで。
美 この田村君が演じるジョージって、無茶苦茶な男なんですよ。田村君はわりと保守的だけど。
■恋人のドリスはどんな女性でしょう?
田 美津乃さんみたい、ですね。艶やかで可愛らしい。
美 とにかく、二人が25年間続けている行為って、俯瞰で見れば滑稽で、まあアホみたいなんですよ。でも二人は必死で真剣に愛し合ってる。恋愛ってそんなとこあるでしょう?
■そんな、周りの見えない二人の禁断の愛を描きつつ、5年ごとに周囲の世界、アメリカが少しずつ変わっていく様子が二人の会話から読みとれるのがまた、面白いですね。(※4)
美 そう!すごくよく出来た戯曲でしょう!
■日本もですけど、アメリカも激動の時代でしたもんね。でも20代から始まって50歳前後までの変化を、小劇場の舞台で演じ分けていくって、物理的にも大変なのでは?
美 場の転換の時に時代を感じさせる映像を入れたり、むろん色々工夫はしていますけど、見た目の変化よりむしろ二人の関係性の変化をしっかり演じたいですね。
■なるほど。そのあたり、仕上がってきましたか?
美 私が東京在住で、二人が東西に分かれているので、稽古は去年8月から始めて、最初は毎月1週間ずつ、とかでコツコツ作ってきました。ワタシ的には、田村君が仕上がってくれたら完成ですこの芝居。あと、私が台詞を完璧に入れれば。
■え、まだ?
美 大丈夫です!お芝居が出来てから最後に台詞が入る性質(たち)なんです私は!
■でも、神が台詞噛むのだけは目撃したくないですよね、田村さんとしては。
田 はは…(苦笑)
■では最後にお二人から、皆さんにひとことずつ。
田 真面目なメッセージは一切ない芝居です。二人のおバカな恋愛模様を純粋に楽しんで観てもらえればうれしいですね。
美 人と人との接触がこれだけ難しいこの時節に、こんな密着した二人をお見せするって…と思いますけど、逆にそんな今だからこそ、触れ合いの大切さ、人の肌の温かさを感じてもらえる芝居にしたいな、って思います。もちろん、感染予防は万全にした上でですよ(笑)
二人 めちゃくちゃ楽しい時間を絶対作りますので、是非劇場にお越しください!
・・・・・・・・・・・・
(※1)・・・美津乃あわプロデュースは、主に男女の微妙な関係性をモチーフとした二人芝居を手がける企画ユニット。2002年に活動開始
(※2)・・・俳優の加藤健一(1949~)は、つかこうへい事務所の舞台で大人気を博した後、1980年に自らの事務所を設立、翻訳劇を中心に舞台制作活動を続けている。
(※3)・・・90年代後半から00年代、関西演劇界で一時代を作り上げた人気エンターテインメント劇団。主宰は伊藤えん魔。美津乃あわは、その片腕でありかつ絶対的看板女優であった。
(※4)・・・『セイムタイム・ネクストイヤー』では、1951年から1975年まで、約5年おきのある日の二人が、6つの場で描かれる。この間、冷戦、JFK暗殺、ベトナム戦争、公民権運動の高まりなど、アメリカは激動の時代であった。
■取材・構成:山村啓介(株式会社707)
■稽古前の貴重なお時間をいただいて恐縮です。よろしくお願いします。しばらくぶりの美津乃あわプロデュース(※1)ですが。
美 そうですね!気合入ってます!
■どんな作品を作るか考えたのは当然美津乃さんだと思うのですが、この『セイムタイム・ネクストイヤー』という戯曲を選んだ理由は?
美 これまで美津乃あわプロデュース公演は、基本的に私がホンを書いてきて。しかも、決まって男と女のすったもんだが題材だったんですけど、今回、なんとなく海外戯曲をやってみたくて。ずっと昔に加藤健一さん(※2)がご自分の事務所の公演で上演されていたのを拝見したことがあって、それがとても印象深くて。それと、この作品、25年間、年に一度だけ同じ日に密会するという男女の話なんですけど、25年間の交際の中の、5年おき、計6回の逢瀬が二幕六場で描かれていて。つまりオムニバス的で、お客様にとっても、飽きずに楽しんでいただきやすいかなと思ったんです。
■なるほど。田村さんは、最初に美津乃さんから声をかけられたとき、どんな感じでした?
田 びっくりした、それに尽きます。自分が何で声をかけられたのかわからなくて、まず出演の話だとは思わなかった。聞けば共演で、脚本をもらって読んでみたら、相手役で、しかも二人芝居のラブストーリーって。驚きしかない。けれど劇団の大先輩なので、不安の塊でしたけれど、お断りするという選択肢はなかったですね。
■田村K-1にとって美津乃あわとはどんな存在なんですか?
田 「神」的ポジションにいる人です。学生時代、自分も学内のサークルで演劇をやっていたんですけど、その当時、ファントマ(※3)の公演を観てあまりに面白くて圧倒されまして。お願いして戯曲をお借りして自分たちで上演したりしたんです。そうこうするうち、ワークショップに誘われたり。
■それは、伊藤えん魔座長から?それとも美津乃さんから?
田 いえいえ!もっと若い劇団員の方からです。そんな人たちから直接声をかけてもらえるような存在ではなかったので。
■え!?
田 古き良き、というか、ピラミッドのような上下関係のはっきりした劇団で、自分はその一番下にもいないわけで。神の意向を受けた若いメンバーから声をかけてもらったんです。で、その後「じゃ、出てみるか」となって、ずるずると劇団員になりました。
■美津乃さんは神に近い存在だったんですか?
田 はい。
美 というか、神の横で神を操っていた、みたいな。
田 そういう意味では神以上の存在ですね。
■はあ…。しかしですよ、この『セイムタイム・ネクストイヤー』という作品、別に家庭を持つ男と女が毎年一夜だけ愛を交わすホテルの部屋が舞台で、結構あからさまな表現もありますよね。
二人 はい。
■照れませんか?
美 照れますよ!笑って稽古が進まないこともしばしば。
田 だって「神以上の存在」ですしね。そんな女性と…
■そんな時どうするんですか?
美 託します。私は基本的に男性に引っ張っていってほしいタイプなんで。でもなかなかそこが難しくて。
田 僕は女性に主導権を持ってもらいたい方なんで。
■本番まであと数日ですが、照れは克服出来ました?
田 徐々に。なんとか・・・
美 このお芝居、キスシーンがいっぱいいあるんですねど、私、舞台のキスシーンで、下手くそな真似ごとで済ますのが嫌いで!よくあるじゃないですか、客席からも本当に接吻してないのがまる分かりの下手なやつ。あと、抱き合うときに遠慮して妙に体にすき間が出来てるのもイヤ。最初、キスするまで3時間かかったよね。
■大変な仕事を受けましたね。
田 …はい…
美 それからは、稽古中にお互いの恋愛観を話し合う日々です。「その芝居違うよね。ここで女性がこんな態度とったら、あなたどうするのよ?」みたいなダメ出しから始まって、次第にそれが恋愛観を吐露する場になっていく。田村君の恋愛遍歴もだいぶ聞いたよね。
田 言わなくてもいい話、だいぶした気がする。さっきも言いましたけど僕は女性に頼りたいほうなんで。
美 この田村君が演じるジョージって、無茶苦茶な男なんですよ。田村君はわりと保守的だけど。
■恋人のドリスはどんな女性でしょう?
田 美津乃さんみたい、ですね。艶やかで可愛らしい。
美 とにかく、二人が25年間続けている行為って、俯瞰で見れば滑稽で、まあアホみたいなんですよ。でも二人は必死で真剣に愛し合ってる。恋愛ってそんなとこあるでしょう?
■そんな、周りの見えない二人の禁断の愛を描きつつ、5年ごとに周囲の世界、アメリカが少しずつ変わっていく様子が二人の会話から読みとれるのがまた、面白いですね。(※4)
美 そう!すごくよく出来た戯曲でしょう!
■日本もですけど、アメリカも激動の時代でしたもんね。でも20代から始まって50歳前後までの変化を、小劇場の舞台で演じ分けていくって、物理的にも大変なのでは?
美 場の転換の時に時代を感じさせる映像を入れたり、むろん色々工夫はしていますけど、見た目の変化よりむしろ二人の関係性の変化をしっかり演じたいですね。
■なるほど。そのあたり、仕上がってきましたか?
美 私が東京在住で、二人が東西に分かれているので、稽古は去年8月から始めて、最初は毎月1週間ずつ、とかでコツコツ作ってきました。ワタシ的には、田村君が仕上がってくれたら完成ですこの芝居。あと、私が台詞を完璧に入れれば。
■え、まだ?
美 大丈夫です!お芝居が出来てから最後に台詞が入る性質(たち)なんです私は!
■でも、神が台詞噛むのだけは目撃したくないですよね、田村さんとしては。
田 はは…(苦笑)
■では最後にお二人から、皆さんにひとことずつ。
田 真面目なメッセージは一切ない芝居です。二人のおバカな恋愛模様を純粋に楽しんで観てもらえればうれしいですね。
美 人と人との接触がこれだけ難しいこの時節に、こんな密着した二人をお見せするって…と思いますけど、逆にそんな今だからこそ、触れ合いの大切さ、人の肌の温かさを感じてもらえる芝居にしたいな、って思います。もちろん、感染予防は万全にした上でですよ(笑)
二人 めちゃくちゃ楽しい時間を絶対作りますので、是非劇場にお越しください!
・・・・・・・・・・・・
(※1)・・・美津乃あわプロデュースは、主に男女の微妙な関係性をモチーフとした二人芝居を手がける企画ユニット。2002年に活動開始
(※2)・・・俳優の加藤健一(1949~)は、つかこうへい事務所の舞台で大人気を博した後、1980年に自らの事務所を設立、翻訳劇を中心に舞台制作活動を続けている。
(※3)・・・90年代後半から00年代、関西演劇界で一時代を作り上げた人気エンターテインメント劇団。主宰は伊藤えん魔。美津乃あわは、その片腕でありかつ絶対的看板女優であった。
(※4)・・・『セイムタイム・ネクストイヤー』では、1951年から1975年まで、約5年おきのある日の二人が、6つの場で描かれる。この間、冷戦、JFK暗殺、ベトナム戦争、公民権運動の高まりなど、アメリカは激動の時代であった。
■取材・構成:山村啓介(株式会社707)
《公演概要》
■美津乃あわプロデュース『セイムタイム・ネクストイヤー』
■原作:バーナード・スレイド ■翻訳:青井陽治
■演出:美津乃あわ
■出演:美津乃あわ 田村K-1
■公演日程
2022年1月
12日(水) 19:00
13日(木) 14:00 19:00
14日(金) 19:00
15日(土) 13:00 18:00
16日(日) 14:00
※ 1/15(土)16:00からスペシャルトークショー『500円あわちゃん』開催
ゲスト:伊藤えん魔
■会場:ファントマ上本町スタジオ
大阪府天王寺区東高津町9-29 東高津ビル2F
■料金:前売3200円 当日3500円 (全席自由)
■WEB予約:https://t.co/zhp6s6MvTI
■お問合せ:himeno@v707.jp
■企画・製作:美津乃あわプロデュース (info@miduno-awa.com)
■美津乃あわプロデュース『セイムタイム・ネクストイヤー』
■原作:バーナード・スレイド ■翻訳:青井陽治
■演出:美津乃あわ
■出演:美津乃あわ 田村K-1
■公演日程
2022年1月
12日(水) 19:00
13日(木) 14:00 19:00
14日(金) 19:00
15日(土) 13:00 18:00
16日(日) 14:00
※ 1/15(土)16:00からスペシャルトークショー『500円あわちゃん』開催
ゲスト:伊藤えん魔
■会場:ファントマ上本町スタジオ
大阪府天王寺区東高津町9-29 東高津ビル2F
■料金:前売3200円 当日3500円 (全席自由)
■WEB予約:https://t.co/zhp6s6MvTI
■お問合せ:himeno@v707.jp
■企画・製作:美津乃あわプロデュース (info@miduno-awa.com)