生誕110年記念 糸園和三郎展 ~魂の祈り、沈黙のメッセージ~
この度、公益財団法人大分県芸術文化スポーツ振興財団の運営する大分県立美術館では、9月18日(土) ~10月31日(日)に、「生誕110年記念 糸園和三郎展 ~魂の祈り、沈黙のメッセージ~」を開催します。
大分県中津市に生まれた洋画家・糸園和三郎は、11歳のときに重い病を患い、以後の学業を断念。16歳で上京し、前田寛治が主宰する写実研究所で油絵を学ぶと、1930年には春陽会展で初入選を果たし、やがてシュルレアリスムの有力新人として画壇で注目を集めるようになります。1943年には井上長三郎の呼びかけに応じて新人画会に参加。表現の自由が抑圧された戦時下に画家としての良心を貫きました。戦後は、一時中津に戻って創作を続け、1947年からは自由美術家協会展を中心に作品を発表。現代人が抱える不安や孤独を詩情豊かに描き出した作品は、国内外で高い評価を受け、幅広い人気を博しました。
生誕110年を記念して開催する本展では、初期から戦後の社会性の強い作品群、さらに詩情とヒューマニズムあふれる晩年へと変遷する糸園の画業を代表作により振り返るとともに、作品の構想が描かれたスケッチブックや実際に使われた画材などの関連資料も展示。常に社会とそこに生きる人々を静かに見つめ、絵筆を持ち続けた糸園の真摯なメッセージを、時代を超えて今、お伝えします。
糸園和三郎略年譜
明冶44年(1911)………大分県中津市に生まれる
大正11年(1922)11歳…骨髄炎を患い手術を受ける。小学校卒業後の進学を断念
昭和 2年(1927)16歳…次兄と共に上京。父の勧めで川端画学校へ通う
昭和 4年(1929)18歳…前田寛治の作品に感激し、前田の主宰する写実研究所に入る
昭和 5年(1930)19歳…第8回春陽会展に初入選
昭和 9年(1934)23歳…この頃からシュルレアリスムの傾向の作品を発表するようになる
昭和18年(1943)32歳…井上長三郎の呼びかけで新人画会の結成に参加
昭和22年(1947)36歳…自由美術家協会に新人画会のメンバーと共に参加
昭和33年(1958)47歳…日本大学芸術学部に講師として勤務開始
昭和43年(1968)57歳…第8回現代日本美術展に「黒い水」「黄色い水」を出品、K氏賞を受賞
昭和53年(1978)67歳…〈糸園和三郎展〉(北九州市立美術館・大分県立芸術会館)開催
平成 7年(1995)84歳…〈糸園和三郎とその時代展〉(大分県立芸術会館)開催
平成13年(2001)89歳…東京にて死去
象徴的なモティーフ
糸園の生涯は、常に病気と隣り合わせだったと云っても過言ではありません。
幼い頃にかかった病の治療は、以後長く自由な活動を束縛することになり、生死を分けるような大病も経験しています。だからこそ、病気をする以前の子供の頃の記憶は、糸園にとって何にも増して光り輝くものだったのかもしれません。糸園が唯一通った学校は、中津の南部小学校でした。ここの校庭にはクスノキの大木があり、糸園は、60歳前後から、これをモティーフにいくつかの作品を描いています。この《丘の上の大樹》はその中でも代表的な作品です。
《丘の上の大樹》1991年 大分県立美術館
心象風景
1950年代後半、体調不良を覚えて診察を受けた糸園は、脳動脈瘤と診断されます。《鳥と青年》は、その直後に制作された作品です。飛び立つ鳥を見上げる青年の姿には、絶望的な状況の中で、生と死を見つめる画家の心境が映し出されているかのようです。糸園は、手術をすると絵筆を握れるか不明と言われ、周囲の反対を押し切って退院しました。
《鳥と青年》1959年 大分県立美術館
1950年代後半、体調不良を覚えて診察を受けた糸園は、脳動脈瘤と診断されます。《鳥と青年》は、その直後に制作された作品です。飛び立つ鳥を見上げる青年の姿には、絶望的な状況の中で、生と死を見つめる画家の心境が映し出されているかのようです。糸園は、手術をすると絵筆を握れるか不明と言われ、周囲の反対を押し切って退院しました。
《鳥と青年》1959年 大分県立美術館
シュルレアリスム
糸園は、1978年のインタビューで、作品の特徴と作風に最も影響を与えたのはシュルレアリスムだと述べています。その初期の代表作が《犬のいる風景》です。地平線上の3本の電灯は、右から左に向かって高いので、左が近いように見えます。しかし、足元は水平なので、3本そろって遠くにあるようにも見えます。遠近感が途中で切り替わる、不思議な作品です。
《犬のいる風景》1941年 大分県立美術館
糸園は、1978年のインタビューで、作品の特徴と作風に最も影響を与えたのはシュルレアリスムだと述べています。その初期の代表作が《犬のいる風景》です。地平線上の3本の電灯は、右から左に向かって高いので、左が近いように見えます。しかし、足元は水平なので、3本そろって遠くにあるようにも見えます。遠近感が途中で切り替わる、不思議な作品です。
《犬のいる風景》1941年 大分県立美術館
[開催概要]
生誕110年記念 糸園和三郎展 ~魂の祈り、沈黙のメッセージ~
【会場】大分県立美術館 3階 コレクション展示室
【会期】9月18日(土) ~10月31日(日) ※休展日なし
10:00~19:00 ※金曜日・土曜日は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
【観覧料】一般800(600)円、大学・高校生 500(300)円
※( )内は前売りおよび有料入場 20名以上の団体料金※障がい者手帳等をご提示の方とその付添者(1名)は無料
【主催】公益財団法人大分県芸術文化スポーツ振興財団・大分県立美術館
【共催】大分合同新聞社、OBS大分放送
【特別協力】中津市教育委員会
【後援】大分県、大分県教育委員会、中津市、中津耶馬渓観光協会、大分県民芸術文化祭実行委員会、NPO法人大分県芸振、西日本新聞社、朝日新聞大分総局、毎日新聞社、読売新聞西部本社、NHK大分放送局、エフエム大分、J:COM大分ケーブルテレコム、NOAS FM
【協力】土日会
https://www.opam.jp/exhibitions/detail/694
記念講演会「糸園和三郎 その人と芸術」
本展開催を記念して、 生前の糸園和三郎をよく知る加藤康彦氏(さいき城山桜ホール館長、元 大分県立美術館副館長)による講演会を実施します。
【日時】9月18日(土) 13:30~15:00
【講師】加藤康彦氏(さいき城山桜ホール館長)
【会場】大分県立美術館 2階 研修室
【定員】40名 【参加費】無料(要事前申込)
【申込方法】お電話(097-533-4500)またはapp@opam.jpへ、件名にイベント名、メール本文にお名前とご連絡先をご記入の上、申込みください。定員40名に達し次第、締切とさせていただきます。
https://www.opam.jp/events/detail/979
「生誕110年記念 糸園和三郎展」ギャラリートーク
本展の展示内容を学芸員が解説します。
【日時】9月23日(木・祝)、10月9日(土)、23日(土) 14:00~15:00
【会場】大分県立美術館 3階 コレクション展示室
【参加費】無料(要展覧会観覧券)
※申込み不要当日参加可
https://www.opam.jp/events/detail/980
問い合わせ:公益財団法人大分県芸術文化スポーツ振興財団
大分県立美術館 学芸企画課 梶原・吉田/ 管理課広報担当 渡邉・植木・土屋
Tel 097-533-4500 E-mail:info@opam.jp