株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、自動車の加飾や車載ディスプレイ部材として使用されるフィルム及び、ディスプレイ及びFPCの部材及び副資材などのエレクトロニクス関連フィルムの世界市場を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにいたしました。
ここでは、FCCL用PIフィルム世界市場規模、回路基板用の低誘電フィルムの将来展望について公表いたします。
1.市場概況
FCCL(Flexible Cupper Clad Laminate:フレキシブル銅張積層板)用PI(Polyimide:ポリイミド)フィルムの2020年世界出荷量(メーカー出荷数量ベース)は5,570t、前年比106.7%の見込みである。
2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、上期は川下製品市場が全体的に低調であったものの、リモートワークが推奨されたことでスマートフォンに比べて1台当たりのFPC(Flexible printed circuits:フレキシブルプリント基板)の使用量が多いタブレット端末やノートPCの需要が特需的に拡大したことに加え、下期に入り大手スマートフォン端末メーカーが新機種を相次いで投入したことなどから、FCCL用PIフィルムの需要は比較的堅調である。
2.注目トピック~5G対応を狙い、改良PI、LCP、PPSなど低誘電素材での開発競争が注目される
これまでFPCやTAB、アンテナなどの基板用絶縁フィルムには、超低温(-269℃)から超高温(400℃)までの広範囲な温度領域でも優れた機械的・電気的・化学的特性を有するPIフィルムが主に使用されてきた。しかし、PIフィルムは誘電正接や吸水率などの性能面で5G(第5世代移動体通信システム)基板としてそのまま使用するのが難しい。5G関連の市場が立ち上がる中で、回路メーカーからは従来以上に低吸湿で電気特性に優れた材料が求められており、LCP(液晶ポリマー)やフッ素などの検討が進展している。このうちLCPは既に5Gスマートフォンアンテナでの採用実績がある。
これに対し、PIフィルムメーカー各社では樹脂の改良や他材料との複合化により吸水率を抑え、誘電正接を低く保った改良PIフィルム(Modified PI:MPI)の開発が活発化した。さらに、新たな材料としてPPS(ポリフェニレンサルファイド)やPEN(ポリエチレンナフタレート)などで、低誘電正接、低コストを武器に5G基板としての実用化を目指したサンプルワークが始まっている。
3.将来展望
これまで5G対応の低誘電フィルムとしては、PI・MPI vs. LCPという素材間競争が繰り広げられてきたが、ユーザーサイドのFCCLメーカーからは性能に加えて価格に対する要求も厳しさを増している。
こうした中、さらなるコストダウン要求に対応すべく、ポリマー改質によりはんだ耐熱性を実現したPPSの提案が始まっている。PPSフィルムは誘電正接が0.002とLCPと同程度であることに加え、価格はMPIとほぼ同等で、ミリ波対応の回路基板材料としての価格優位性が高い。さらに、ポリマー改質により一般的なはんだ付温度である250度でも変形しない耐熱性の付与に加え、フィルム内の分子鎖の配向制御により厚み方向(Z方向)の熱膨張係数を押さえ、多層積層化・小型化に対応する5G回路基板用フィルムとして提案が進められている。
※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2675
調査要綱
1.調査期間: 2019年11月~2020年11月
2.調査対象: 自動車及びエレクトロニクス関連フィルム・シートメーカー
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面接取材、ならびに文献調査併用
4.発刊日:2021年2月19日
お問い合わせ
⇒プレスリリースの内容や引用についてのお問い合わせは下記までお願いいたします。
株式会社矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム
https://www.yano.co.jp/contact/contact.php/press
株式会社矢野経済研究所
https://www.yano.co.jp/
ここでは、FCCL用PIフィルム世界市場規模、回路基板用の低誘電フィルムの将来展望について公表いたします。
1.市場概況
FCCL(Flexible Cupper Clad Laminate:フレキシブル銅張積層板)用PI(Polyimide:ポリイミド)フィルムの2020年世界出荷量(メーカー出荷数量ベース)は5,570t、前年比106.7%の見込みである。
2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、上期は川下製品市場が全体的に低調であったものの、リモートワークが推奨されたことでスマートフォンに比べて1台当たりのFPC(Flexible printed circuits:フレキシブルプリント基板)の使用量が多いタブレット端末やノートPCの需要が特需的に拡大したことに加え、下期に入り大手スマートフォン端末メーカーが新機種を相次いで投入したことなどから、FCCL用PIフィルムの需要は比較的堅調である。
2.注目トピック~5G対応を狙い、改良PI、LCP、PPSなど低誘電素材での開発競争が注目される
これまでFPCやTAB、アンテナなどの基板用絶縁フィルムには、超低温(-269℃)から超高温(400℃)までの広範囲な温度領域でも優れた機械的・電気的・化学的特性を有するPIフィルムが主に使用されてきた。しかし、PIフィルムは誘電正接や吸水率などの性能面で5G(第5世代移動体通信システム)基板としてそのまま使用するのが難しい。5G関連の市場が立ち上がる中で、回路メーカーからは従来以上に低吸湿で電気特性に優れた材料が求められており、LCP(液晶ポリマー)やフッ素などの検討が進展している。このうちLCPは既に5Gスマートフォンアンテナでの採用実績がある。
これに対し、PIフィルムメーカー各社では樹脂の改良や他材料との複合化により吸水率を抑え、誘電正接を低く保った改良PIフィルム(Modified PI:MPI)の開発が活発化した。さらに、新たな材料としてPPS(ポリフェニレンサルファイド)やPEN(ポリエチレンナフタレート)などで、低誘電正接、低コストを武器に5G基板としての実用化を目指したサンプルワークが始まっている。
3.将来展望
これまで5G対応の低誘電フィルムとしては、PI・MPI vs. LCPという素材間競争が繰り広げられてきたが、ユーザーサイドのFCCLメーカーからは性能に加えて価格に対する要求も厳しさを増している。
こうした中、さらなるコストダウン要求に対応すべく、ポリマー改質によりはんだ耐熱性を実現したPPSの提案が始まっている。PPSフィルムは誘電正接が0.002とLCPと同程度であることに加え、価格はMPIとほぼ同等で、ミリ波対応の回路基板材料としての価格優位性が高い。さらに、ポリマー改質により一般的なはんだ付温度である250度でも変形しない耐熱性の付与に加え、フィルム内の分子鎖の配向制御により厚み方向(Z方向)の熱膨張係数を押さえ、多層積層化・小型化に対応する5G回路基板用フィルムとして提案が進められている。
※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2675
調査要綱
1.調査期間: 2019年11月~2020年11月
2.調査対象: 自動車及びエレクトロニクス関連フィルム・シートメーカー
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面接取材、ならびに文献調査併用
4.発刊日:2021年2月19日
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