日本臨床カンナビノイド学会(新垣実理事長)は、2016-2019年度の厚生労働省の補助金事業による米国、カナダ、EU等の医療用大麻、産業用大麻、嗜好用大麻調査をまとめた大麻小冊子を本学会WEBページにて解説付きで今月12日に公表した。
本冊子は、1976年に依存性薬物情報研究班および厚生省薬務局麻薬課が当時の大麻に関する情報を冊子「大麻」として発刊以来の新書です。
「大麻問題の現状」
企画・編集
厚生労働行政推進調査補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業)
「危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究」研究班
真興交易(株)医書出版部 全127頁
大麻問題の現状
目次
発行に際して・・・厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課・・・3
I大麻とは・・・花尻(木倉)瑠理,緒方潤,田中理恵・・・7
1 植物学からみた大麻
2 大麻の成分について
3 国際条約での規制
4 大麻に関する国内の法律
II 大麻・フィトカンナピノイドの有害性と医薬品としての応用:
基礎と臨床・・・・山本経之, 山口拓,福森良・・・18
1.はじめに
2 大麻/THCの作用
3 カンナピジオール(CBD)の作用
4 大麻の依存性とその特性
5. フィトカンナピノイドの医薬品としての有用性
6 おわりに
III 大麻による有害作用:臨床的特徴・・・舩田正彦,松本俊彦・・・33
1.はじめに
2 検索方法
3 大麻成分とその急性作用
4 大麻の慢性使用による影響
5 大麻使用と精神病の関連
6 心臓血管系と自律神経系への影響
7 呼吸器の影響
8 大麻使用と他の薬物乱用
9 青少年の大麻使用
10 おわりに
IV 大麻草由来成分やその類似成分を用いた医薬品・・・鈴木勉・・・51
1 はじめに
2 ナピキシモルズ(ザティペックス)の臨床
3 ドロナピノール(マリノール)の臨床
4 ナピロン(セサメット)の臨床
5 おわりに
V 大麻と危険ドラッグ・・・舩田正彦・・・58
1 はじめに
2 危険ドラックとは
3 危険ドラックの種類とその健康被害
4 危険ドラックの包括指定
5 危険ドラックと大麻
6 おわりに
VI 世界の大麻事情
1 米国・・・富山健一, 舩田正彦・・・70
1 はじめに
2 米国の州における大麻使用の規制
3 大麻に関する規制と違反時の罰則
4 コロラド州に見る大麻合法化の社会的状況
5 まとめ
2 力ナダ・・・鈴木勉・・・77
1 はじめに
2 カナタの「改正大麻法」
3 今後の課題
4 おわりに
3 欧州・・・花尻(木倉)瑠璃, 緒方潤・・・80
1 はじめに
2 産業用途の大麻について
3 嗜好用途の大麻について
4 まとめ
VII 大麻草およびその成分の医療での活用
1 米国・・・舩田正彦. 富山健一・・・88
1 はじめに
2 医療用大麻(medical marijuana)
3 まとめ
2 力ナダ・・・ 鈴木勉・・・95
1 はじめに
2 カナダの医療用大麻
3 おわりに
3 欧州・・・花尻(木倉)瑠理・・・98
1 はじめに
2 欧州における医療向けの大麻関連製品
3 まとめ
VIII 大麻問題に関する施策と教育啓発の現状・・・鈴木順子・・・105
1はじめに
2 本邦における大麻問題の現状
3政府の薬物乱用防止5力年戦略
4 国および地方自治体の薬物乱用防止に係る啓発・教育施策
5 代表的な関係団体の取り組み
あとがき・・・井村伸正・・・121
索引・・・123
本冊子は、1976年に依存性薬物情報研究班および厚生省薬務局麻薬課が当時の大麻に関する情報を冊子「大麻」として発刊以来の新書です。
「大麻問題の現状」
企画・編集
厚生労働行政推進調査補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業)
「危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究」研究班
真興交易(株)医書出版部 全127頁
大麻問題の現状
目次
発行に際して・・・厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課・・・3
I大麻とは・・・花尻(木倉)瑠理,緒方潤,田中理恵・・・7
1 植物学からみた大麻
2 大麻の成分について
3 国際条約での規制
4 大麻に関する国内の法律
II 大麻・フィトカンナピノイドの有害性と医薬品としての応用:
基礎と臨床・・・・山本経之, 山口拓,福森良・・・18
1.はじめに
2 大麻/THCの作用
3 カンナピジオール(CBD)の作用
4 大麻の依存性とその特性
5. フィトカンナピノイドの医薬品としての有用性
6 おわりに
III 大麻による有害作用:臨床的特徴・・・舩田正彦,松本俊彦・・・33
1.はじめに
2 検索方法
3 大麻成分とその急性作用
4 大麻の慢性使用による影響
5 大麻使用と精神病の関連
6 心臓血管系と自律神経系への影響
7 呼吸器の影響
8 大麻使用と他の薬物乱用
9 青少年の大麻使用
10 おわりに
IV 大麻草由来成分やその類似成分を用いた医薬品・・・鈴木勉・・・51
1 はじめに
2 ナピキシモルズ(ザティペックス)の臨床
3 ドロナピノール(マリノール)の臨床
4 ナピロン(セサメット)の臨床
5 おわりに
V 大麻と危険ドラッグ・・・舩田正彦・・・58
1 はじめに
2 危険ドラックとは
3 危険ドラックの種類とその健康被害
4 危険ドラックの包括指定
5 危険ドラックと大麻
6 おわりに
VI 世界の大麻事情
1 米国・・・富山健一, 舩田正彦・・・70
1 はじめに
2 米国の州における大麻使用の規制
3 大麻に関する規制と違反時の罰則
4 コロラド州に見る大麻合法化の社会的状況
5 まとめ
2 力ナダ・・・鈴木勉・・・77
1 はじめに
2 カナタの「改正大麻法」
3 今後の課題
4 おわりに
3 欧州・・・花尻(木倉)瑠璃, 緒方潤・・・80
1 はじめに
2 産業用途の大麻について
3 嗜好用途の大麻について
4 まとめ
VII 大麻草およびその成分の医療での活用
1 米国・・・舩田正彦. 富山健一・・・88
1 はじめに
2 医療用大麻(medical marijuana)
3 まとめ
2 力ナダ・・・ 鈴木勉・・・95
1 はじめに
2 カナダの医療用大麻
3 おわりに
3 欧州・・・花尻(木倉)瑠理・・・98
1 はじめに
2 欧州における医療向けの大麻関連製品
3 まとめ
VIII 大麻問題に関する施策と教育啓発の現状・・・鈴木順子・・・105
1はじめに
2 本邦における大麻問題の現状
3政府の薬物乱用防止5力年戦略
4 国および地方自治体の薬物乱用防止に係る啓発・教育施策
5 代表的な関係団体の取り組み
あとがき・・・井村伸正・・・121
索引・・・123
<解説>
厚生労働省の補助金事業による研究調査で、危険ドラッグの枠組みで、産業用、医療用、嗜好用の3分野を含んだ大麻というテーマに焦点をあてて17年に126頁、18年に261頁、19年に201頁、20年に145頁の報告書を発行した。さらに、この研究成果を一般市民向けにやや平易に書いた全127頁の小冊子にまとめたことは、公的研究として非常に価値のあるものである。特に小冊子は、1976年以来の44年ぶりの仕事を成し遂げた快挙といえよう。
一方で、2年目、3年目の報告書で指摘されていた国際条約の規制や、米国のスケジュールIという位置づけが、合法化した国や地域であっても、基礎研究や臨床試験がほとんどできない状況が長年続いてたため、エビデンスが不十分である。それにも関わらず、人道的使用(コンパッショネートユース)の観点から、住民運動が発生し、住民投票という民主主義の仕組みを使って合法化しているという視点が抜けている。
また、国連および各国の薬物政策が、懲罰的アプローチ(司法)から健康アプローチ(公衆衛生)へとシフトしている視点や非犯罪化政策と合法化政策の違いについて全く触れられていない。
大麻問題の現状の小冊子のあとがき「エピデンスに基づいた科学的知見を把握し、かつ、国外で進む規制緩和がいかなる経緯によるものなのか、科学的調査研究のみならず、社会・経済学的な解析が必要不可欠であろう。」の部分で自ら指摘しているように、4年間の時間と予算(約3000万円)を費やしたにも関わらず、十分な解析が成されたとはとても言い難いだろう。
不十分な視点の解決方法として、医学及び薬学者だけではなく、法学者、犯罪学者、社会学者、心理学者、代替医療学者、民族植物学者、医療政策学者、バイオ経済学者、科学コミュニケーターなどの学問領域を含む多様な専門家が参画した学際的アプローチが有効となるだろう。
詳しくはこちらのサイトへ
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=108592
日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2019年7月段階で、正会員(医療従事者、研究者)67名、賛助法人会員12名、 賛助個人会員23名、合計102名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/
日本の大麻取締法 Cannabis Control Act
我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2016年の時点で、全国作付面積7.9ha、大麻栽培者34名、大麻研究者400名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。
厚生労働省の補助金事業による研究調査で、危険ドラッグの枠組みで、産業用、医療用、嗜好用の3分野を含んだ大麻というテーマに焦点をあてて17年に126頁、18年に261頁、19年に201頁、20年に145頁の報告書を発行した。さらに、この研究成果を一般市民向けにやや平易に書いた全127頁の小冊子にまとめたことは、公的研究として非常に価値のあるものである。特に小冊子は、1976年以来の44年ぶりの仕事を成し遂げた快挙といえよう。
一方で、2年目、3年目の報告書で指摘されていた国際条約の規制や、米国のスケジュールIという位置づけが、合法化した国や地域であっても、基礎研究や臨床試験がほとんどできない状況が長年続いてたため、エビデンスが不十分である。それにも関わらず、人道的使用(コンパッショネートユース)の観点から、住民運動が発生し、住民投票という民主主義の仕組みを使って合法化しているという視点が抜けている。
また、国連および各国の薬物政策が、懲罰的アプローチ(司法)から健康アプローチ(公衆衛生)へとシフトしている視点や非犯罪化政策と合法化政策の違いについて全く触れられていない。
大麻問題の現状の小冊子のあとがき「エピデンスに基づいた科学的知見を把握し、かつ、国外で進む規制緩和がいかなる経緯によるものなのか、科学的調査研究のみならず、社会・経済学的な解析が必要不可欠であろう。」の部分で自ら指摘しているように、4年間の時間と予算(約3000万円)を費やしたにも関わらず、十分な解析が成されたとはとても言い難いだろう。
不十分な視点の解決方法として、医学及び薬学者だけではなく、法学者、犯罪学者、社会学者、心理学者、代替医療学者、民族植物学者、医療政策学者、バイオ経済学者、科学コミュニケーターなどの学問領域を含む多様な専門家が参画した学際的アプローチが有効となるだろう。
詳しくはこちらのサイトへ
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=108592
日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2019年7月段階で、正会員(医療従事者、研究者)67名、賛助法人会員12名、 賛助個人会員23名、合計102名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/
日本の大麻取締法 Cannabis Control Act
我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2016年の時点で、全国作付面積7.9ha、大麻栽培者34名、大麻研究者400名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。