株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、2020年の高機能フィルム世界市場を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにいたしました。ここでは、Foldableスマートフォンカバー用透明PIフィルムのメーカー世界出荷量について公開致します。
1.市場概況
2020年の高機能フィルム世界市場は、旧正月明けの2月初めから5月頃にかけて、世界的な新型コロナウイルス感染症の流行により先行きが見通せない状況であった。フィルムメーカーやコンバーターの中には、2020年前半の工場稼働率が一時は20~30%程度まで落ち込むケースもあるなど、年間を通した事業計画策定にも支障が出る状況となり、高機能フィルム市場は2020年以降2~3年は需要低迷が続くという悲観的な声も聞かれた。
しかし、実際にはコロナ禍による需要縮小の流れは、長く続かなかった。中国では、他に先駆けて2020年4月頃、その他地域も6月頃から経済活動を再開しており、コロナ禍収束の兆しは見えないながらも自動車を始めとする最終製品の生産活動は再び活発化している。
Withコロナの状況下、今後数年にわたって需要拡大が期待されている高機能フィルムは、5G(第5世代移動体通信サービス)や自動運転などの新たなマーケットで、部材や副資材として使用される低誘電フィルムやFoldable(折りたたみ)端末カバー用フィルム、高平滑なMLCCリリースフィルムなどである。
このうち、Foldableスマートフォンカバー用透明PI(ポリイミド)フィルム世界市場規模は、フィルム加工及び組み込み段階での歩留まりなどを考慮すると、2020年には15万平方メートル(メーカー出荷数量ベース)になる見込みである。
2.注目トピック~透明PIフィルム世界市場規模は、2021年に50万平方メートルまで拡大する見通し
2020年のFoldableスマートフォンの販売台数は前年比6.5倍と急成長が見込まれるが、約70%のシェアを保有するSEC(Samsung Electronics Co.,Ltd.)がカバー材料を透明PIフィルムからUTG(Ultra Thin Glass:極薄ガラス)に切り替えたこと、2020年に発売されたMotorolaのRazrはディスプレイ面積が小さい上に透明PIフィルム1枚使いであることなどから、端末台数に対してフィルム面積の伸び率は低い水準となった。
トップメーカーのSECでは引き続きUTGカバーを採用すると見られるが、現状では、UTGの供給能力に限界があることに加えて、割れリスクの問題もありSEC以外の端末メーカーがUTGを採用する可能性は低く、透明PIフィルムを始めとするフィルムカバーが採用されるものと見られる。2021年のFoldableスマートフォンカバー用透明PIフィルム世界市場規模は前年比333.3%の50万平方メートル(メーカー出荷数量ベース)になると予測する。
3.将来展望
業界内には、表面高硬度とFoldable対応を両立させたUTGが出てきたことで、Foldable端末カバー材料がガラスで決着し、ガラス代替のフィルムは不要との声もある。しかし、UTGは折曲げに対応しているものの割れないわけではなく、工程内で割れてしまった場合、非常に細かい破片が飛散してしまう。薄膜ガラスの破片が設備に入り込んだ場合、稼働をストップさせて隅々に入り込んだガラス片を取り除かねばならないなど、万一の破損のリスクが高い。
また、UTGは9Hの表面硬度を持つ反面、極薄であるため爪で引掻いた程度でもへこみが生じるなど、フィルムと同様の問題がある。高硬度材料であるため衝撃が吸収されず、ペンドロップ時や折り畳んだ際に僅かな異物を噛みこんでしまった場合、衝撃によりOLEDが破損しやすい。このため、カバーにUTGを使用した端末では衝撃吸収のためPETフィルムやウレタンフィルムがラミネートされており、最表面が高硬度なガラスというメリットが十分に活かされているとは言えない状況である。
さらに、現在市場に投入されているFoldable端末は二つ折りタイプであるが、端末メーカーサイドでは「折畳んだ時にはより小さく、広げた時にはより大画面に」というコンセプトの元、Z字型や両開き(観音開き)型などの三つ折りタイプの開発が進められている。こうした特殊形状の端末では、従来よりも一段上の薄肉化が求められるが、現状のUTGの性能を見ると三つ折り・特殊形状の端末カバーとしての採用はハードルが高い。加えて、Foldable対応のUTGのサプライヤーは限られており、供給能力にも限界がある。
割れリスクのあるUTGの貼り合せや、端末への組み込みなどの際の歩留まり低下=収益性の低下などの問題から、Foldableスマートフォンカバーが全てUTGに切り替わるとは考えにくく、当面の間は透明PIフィルムを始めとするフィルムカバーも採用されていくものと考えられる。
※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2612
調査要綱
1.調査期間: 2020年7月~11月
2.調査対象: フィルムメーカー、コンバーター
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面接取材、ならびに文献調査併用
4.発刊日:2020年11月30日
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株式会社矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム
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1.市場概況
2020年の高機能フィルム世界市場は、旧正月明けの2月初めから5月頃にかけて、世界的な新型コロナウイルス感染症の流行により先行きが見通せない状況であった。フィルムメーカーやコンバーターの中には、2020年前半の工場稼働率が一時は20~30%程度まで落ち込むケースもあるなど、年間を通した事業計画策定にも支障が出る状況となり、高機能フィルム市場は2020年以降2~3年は需要低迷が続くという悲観的な声も聞かれた。
しかし、実際にはコロナ禍による需要縮小の流れは、長く続かなかった。中国では、他に先駆けて2020年4月頃、その他地域も6月頃から経済活動を再開しており、コロナ禍収束の兆しは見えないながらも自動車を始めとする最終製品の生産活動は再び活発化している。
Withコロナの状況下、今後数年にわたって需要拡大が期待されている高機能フィルムは、5G(第5世代移動体通信サービス)や自動運転などの新たなマーケットで、部材や副資材として使用される低誘電フィルムやFoldable(折りたたみ)端末カバー用フィルム、高平滑なMLCCリリースフィルムなどである。
このうち、Foldableスマートフォンカバー用透明PI(ポリイミド)フィルム世界市場規模は、フィルム加工及び組み込み段階での歩留まりなどを考慮すると、2020年には15万平方メートル(メーカー出荷数量ベース)になる見込みである。
2.注目トピック~透明PIフィルム世界市場規模は、2021年に50万平方メートルまで拡大する見通し
2020年のFoldableスマートフォンの販売台数は前年比6.5倍と急成長が見込まれるが、約70%のシェアを保有するSEC(Samsung Electronics Co.,Ltd.)がカバー材料を透明PIフィルムからUTG(Ultra Thin Glass:極薄ガラス)に切り替えたこと、2020年に発売されたMotorolaのRazrはディスプレイ面積が小さい上に透明PIフィルム1枚使いであることなどから、端末台数に対してフィルム面積の伸び率は低い水準となった。
トップメーカーのSECでは引き続きUTGカバーを採用すると見られるが、現状では、UTGの供給能力に限界があることに加えて、割れリスクの問題もありSEC以外の端末メーカーがUTGを採用する可能性は低く、透明PIフィルムを始めとするフィルムカバーが採用されるものと見られる。2021年のFoldableスマートフォンカバー用透明PIフィルム世界市場規模は前年比333.3%の50万平方メートル(メーカー出荷数量ベース)になると予測する。
3.将来展望
業界内には、表面高硬度とFoldable対応を両立させたUTGが出てきたことで、Foldable端末カバー材料がガラスで決着し、ガラス代替のフィルムは不要との声もある。しかし、UTGは折曲げに対応しているものの割れないわけではなく、工程内で割れてしまった場合、非常に細かい破片が飛散してしまう。薄膜ガラスの破片が設備に入り込んだ場合、稼働をストップさせて隅々に入り込んだガラス片を取り除かねばならないなど、万一の破損のリスクが高い。
また、UTGは9Hの表面硬度を持つ反面、極薄であるため爪で引掻いた程度でもへこみが生じるなど、フィルムと同様の問題がある。高硬度材料であるため衝撃が吸収されず、ペンドロップ時や折り畳んだ際に僅かな異物を噛みこんでしまった場合、衝撃によりOLEDが破損しやすい。このため、カバーにUTGを使用した端末では衝撃吸収のためPETフィルムやウレタンフィルムがラミネートされており、最表面が高硬度なガラスというメリットが十分に活かされているとは言えない状況である。
さらに、現在市場に投入されているFoldable端末は二つ折りタイプであるが、端末メーカーサイドでは「折畳んだ時にはより小さく、広げた時にはより大画面に」というコンセプトの元、Z字型や両開き(観音開き)型などの三つ折りタイプの開発が進められている。こうした特殊形状の端末では、従来よりも一段上の薄肉化が求められるが、現状のUTGの性能を見ると三つ折り・特殊形状の端末カバーとしての採用はハードルが高い。加えて、Foldable対応のUTGのサプライヤーは限られており、供給能力にも限界がある。
割れリスクのあるUTGの貼り合せや、端末への組み込みなどの際の歩留まり低下=収益性の低下などの問題から、Foldableスマートフォンカバーが全てUTGに切り替わるとは考えにくく、当面の間は透明PIフィルムを始めとするフィルムカバーも採用されていくものと考えられる。
※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2612
調査要綱
1.調査期間: 2020年7月~11月
2.調査対象: フィルムメーカー、コンバーター
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面接取材、ならびに文献調査併用
4.発刊日:2020年11月30日
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