この報告書は、トランスフォーム薬物政策財団が、2020年6月に発行した“Altered States: Cannabis regulation in the US ”の和訳版です。日本臨床カンナビノイド学会(新垣実理事長)は、本報告書の和訳を20年8月14日に本学会サイトにて公表し、ダウンロードできるようにしました。
序文(抜粋)
コロラド州とワシントン州は2012年に成人用・非医療用の大麻草を法的規制したため、米国の9州がこれに追随し、さらなる州が追随するようになった。1 多くの人が合法の医療用大麻の恩恵を受けているが、それは我々の報告書の焦点ではない。一連の急速な変化は、米国が大麻草の法的規制への世界的な変化の最前線に位置している。
州レベルでの変化にもかかわらず、大麻草の栽培、所持および販売は、連邦法では依然として違法である。これは、州が独立して行動していることを意味し、その結果、法管轄区域間で規制にかなりの差異が生じている。実際、一連の自然実験が行われており、それぞれが大麻草をどのように管理するかについて異なったモデルを提示している。結果の完全な評価には時間がかかり、より長期の研究が完了するまで、詳細な結果を知ることはできないであろう。
しかし、これまで大麻草の法的規制された州を横断することで、さまざまなモデルの背後にある原理を比較し、その当初の影響のいくつかを検討することができる。本報告書では、主要な法的規制問題をテーマ別に検討し、今後の政策改革に向けて得られる教訓の一部を概説する。
主要用語
非犯罪化: 個人の薬物所持に対する刑事罰を取り除き、生産と供給が違法なままである(民事上または行政上の制裁措置が残る可能性がある)2
合法化: 生産、供給、所持するために違法な薬物を合法化すること。
法的規制: 合法化された薬物の製造、供給、使用に関する管理を実施すること。
目次
医療市場からの移行・・・5
規制モデルの決定・・・7
免許の付与・・・8
市町村管理・・・10
課税水準・・・12
購入可能な製品の制限・・・14
包装、広告およびマーケティングに関する要件の強化・・・15
犯罪記録の削除(抹消)・・・18
社会的公正措置・・・21
教訓・・・26
教訓(一部抜粋)
大麻の法的規制は、まだ比較的新しい政策イノベーションである。しかし、すでに我々は、異なる規制モデルがどのように異なる結果をもたらすかを理解することができる。今後、大麻草を合法化しようとする州は、どのようにして自らの規制を実施し、公衆衛生を最優先にして、小売市場に対して、地域社会を念頭に置いて開発し、課税を広範な社会的利益の達成に役立てることができるかについて、実際の実例を持っている。
大麻を全く同じ方法で規制している州は1つもない。しかしながら、他の州の事例や経験を参考にしながら、ある程度の「政策移管」があったことは明らかである。例えば、マーケティング及び包装に関する規制は、全国的に類似している。この傾向は、大麻を法的規制する際に、公衆衛生の保護、犯罪の削減、子どもの保護のためだけでなく、一部の州では、社会的公正を積極的に推進するために、同様の政策目標が存在することを浮き彫りにしている。
州は、過去の大麻禁止の法執行によって不均衡な影響を受けた個人や集団との関係を修復し、有意義な参加を確保する機会として、大麻規制の重要性を認識するようになってきている。また、新たに規制を導入する州が利用するためのケース・スタディを提供する様々な措置が現在講じられている。法的規制がより広範に展開されるにつれて、これが重要な焦点となり、当初から法的規制に組み込まれたものとなることを期待したい。
序文(抜粋)
コロラド州とワシントン州は2012年に成人用・非医療用の大麻草を法的規制したため、米国の9州がこれに追随し、さらなる州が追随するようになった。1 多くの人が合法の医療用大麻の恩恵を受けているが、それは我々の報告書の焦点ではない。一連の急速な変化は、米国が大麻草の法的規制への世界的な変化の最前線に位置している。
州レベルでの変化にもかかわらず、大麻草の栽培、所持および販売は、連邦法では依然として違法である。これは、州が独立して行動していることを意味し、その結果、法管轄区域間で規制にかなりの差異が生じている。実際、一連の自然実験が行われており、それぞれが大麻草をどのように管理するかについて異なったモデルを提示している。結果の完全な評価には時間がかかり、より長期の研究が完了するまで、詳細な結果を知ることはできないであろう。
しかし、これまで大麻草の法的規制された州を横断することで、さまざまなモデルの背後にある原理を比較し、その当初の影響のいくつかを検討することができる。本報告書では、主要な法的規制問題をテーマ別に検討し、今後の政策改革に向けて得られる教訓の一部を概説する。
主要用語
非犯罪化: 個人の薬物所持に対する刑事罰を取り除き、生産と供給が違法なままである(民事上または行政上の制裁措置が残る可能性がある)2
合法化: 生産、供給、所持するために違法な薬物を合法化すること。
法的規制: 合法化された薬物の製造、供給、使用に関する管理を実施すること。
目次
医療市場からの移行・・・5
規制モデルの決定・・・7
免許の付与・・・8
市町村管理・・・10
課税水準・・・12
購入可能な製品の制限・・・14
包装、広告およびマーケティングに関する要件の強化・・・15
犯罪記録の削除(抹消)・・・18
社会的公正措置・・・21
教訓・・・26
教訓(一部抜粋)
大麻の法的規制は、まだ比較的新しい政策イノベーションである。しかし、すでに我々は、異なる規制モデルがどのように異なる結果をもたらすかを理解することができる。今後、大麻草を合法化しようとする州は、どのようにして自らの規制を実施し、公衆衛生を最優先にして、小売市場に対して、地域社会を念頭に置いて開発し、課税を広範な社会的利益の達成に役立てることができるかについて、実際の実例を持っている。
大麻を全く同じ方法で規制している州は1つもない。しかしながら、他の州の事例や経験を参考にしながら、ある程度の「政策移管」があったことは明らかである。例えば、マーケティング及び包装に関する規制は、全国的に類似している。この傾向は、大麻を法的規制する際に、公衆衛生の保護、犯罪の削減、子どもの保護のためだけでなく、一部の州では、社会的公正を積極的に推進するために、同様の政策目標が存在することを浮き彫りにしている。
州は、過去の大麻禁止の法執行によって不均衡な影響を受けた個人や集団との関係を修復し、有意義な参加を確保する機会として、大麻規制の重要性を認識するようになってきている。また、新たに規制を導入する州が利用するためのケース・スタディを提供する様々な措置が現在講じられている。法的規制がより広範に展開されるにつれて、これが重要な焦点となり、当初から法的規制に組み込まれたものとなることを期待したい。
本学会は、大麻草およびカンナビノイド医療に関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。
合法化した州:米国の大麻法的規制についての最新調査報告書のリンクはこちら
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=105522
日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2019年7月段階で、正会員(医療従事者、研究者)67名、賛助法人会員12名、 賛助個人会員23名、合計102名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/
日本の大麻取締法 Cannabis Control Act
我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。
つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2016年の時点で、全国作付面積7.9ha、大麻栽培者34名、大麻研究者400名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。
合法化した州:米国の大麻法的規制についての最新調査報告書のリンクはこちら
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=105522
日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2019年7月段階で、正会員(医療従事者、研究者)67名、賛助法人会員12名、 賛助個人会員23名、合計102名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/
日本の大麻取締法 Cannabis Control Act
我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。
つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2016年の時点で、全国作付面積7.9ha、大麻栽培者34名、大麻研究者400名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。