本プレスリリースは2020年6月16日に米国で配信された英語版の抄訳です。
経営コンサルティング会社A.T. カーニー(東京都港区、ブランド名はKEARNEY)は、2020年海外直接投資信頼度指数調査の結果を発表し、投資先として魅力のある国上位25カ国を発表した。
今年も米国が首位の座を維持し、2位にはカナダが浮上、3位はひとつ順位を落としたドイツ。日本は昨年より順位を2つあげ4位だった。
経営コンサルティング会社A.T. カーニー(東京都港区、ブランド名はKEARNEY)は、2020年海外直接投資信頼度指数調査の結果を発表し、投資先として魅力のある国上位25カ国を発表した。
今年も米国が首位の座を維持し、2位にはカナダが浮上、3位はひとつ順位を落としたドイツ。日本は昨年より順位を2つあげ4位だった。
概要
今回の海外直接投資信頼度指数(Foreign Direct Investment Confidence Index)調査は、新型コロナウイルス(COVID-19)が世界各地で致命的な広がりを見せ始め、市場に衝撃が走り始めた今年1月から3月にかけて実施されたものであり、世界が大きな「嵐」に突入していく中で、危機に瀕した瞬間を捉えたものだ。調査を開始したのが新型コロナウイルス流行前であり、企業経営者たちは、世界経済や直接投資の将来に対してそれなりに強気な見方をしていた。実際、昨年よりも多くの投資家が来年については楽観視していると答えていた。しかし、調査の終盤に世界が「嵐」に突入したことを認識すると、先進国、新興国、フロンティア市場を問わず、投資家の信頼度は低下し、パンデミックの急速な流行を反映した形となった。
新型コロナウイルスの急速な拡大は重要な変曲点である。パンデミックとそれに続く経済ショックが、いかに外部の経営環境が迅速かつ深刻に変化しうるかを示している。先進国市場が今回の調査でも好調を維持しているのは、魅力的な投資環境や強力な技術インフラなど、投資判断で優先される要素に強みを発揮しているからだと考えられる。
2013年以来、本調査の上位にランクインし続けている米国が、外国人投資家にとって常に魅力的な国である理由はビジネスに適した規制環境、市場規模、技術インフラを備えているからであるが、今後、米中の対立がさらに悪化した場合、投資信頼度にどう影響するかが懸念される。
一部の市場は当面の間、パンデミック以前の経済的潜在力まで回復しない可能性がある。新興およびフロンティア市場は、不十分な医療インフラ、限られた財政的選択肢、全体的な貧困レベルの高さなどの要因が組み合わさり、特に大きな被害を受けることになるだろう。
Kearney Foreign Direct Investment Confidence Index(海外直接投資信頼度指数調査)の創始者でA.T. カーニーのマクロ経済部門シンクタンクであるグローバル・ビジネス・ポリシー・カウンシル(GBPC)会長であるポール・ローディシナ(Paul A. Laudicina)は、「投資家らは最後の瞬間になってから経済の混乱が迫っていることに気づき、その多くは足元をすくわれることになりました」 と述べている。
海外直接投資信頼度指数は、世界の経営環境が日々一定であると想定することはできないと、経営者に警鐘を鳴らすものでなければならない。深刻な外生的ショックを予測し、計画を立てるためには、戦略的な洞察を得るツールと、改善された計画戦略を導入することが肝要である。当調査では、また、投資家が重要な変化を期待している分野である「気候変動」が、企業の既存の海外直接投資に影響を与えている、と指摘している。
GBPCのマネージング・ディレクターで、本調査報告書の共著者エリック・ピーターソン(Erik R. Peterson)は、「今回の調査に反映された気候変動リスクに対する意識の高さは、投資家がこれらの問題を念頭に置いていることを示唆していますが、これらのリスクに備えるためには、慎重な計画と戦略的思考が必要となります」と述べている。
回答者のうち60%もの投資家が、今後3年間で気候変動に関連した財務上の損失を予測し、また、同じく85%という圧倒的多数の投資家にとって、潜在的な海外直接投資の目標に対する環境の影響が、投資決定の判断要素となっている。
地域別概要
■ アメリカ地域:
アメリカ(北米および中南米)地域の結果はまちまちだった。米国が8年連続でトップの市場となり、カナダが 2 位に躍り出た。ブラジルは1年ぶりにランクインした。新型コロナウイルスの拡大を受け、調査期間中に、地域経済の見通しに対する投資家の楽観的な見方は低下した。
■ 欧州地域:
14の市場を含む欧州は、当ランキングに入った国の数が最も多い地域となった。ポルトガルは1年ぶりに指数に復帰し、21位にランク入りしている。投資家の欧州市場への関心が継続しているのは、熟練した労働力、高度な技術インフラ、経済の安定性に加えて、緩やかな規制環境に起因していると考えられる。欧州に対する投資家の信頼度は終始安定を見せた。
■ 中東および北アフリカ:
今回、アラブ首長国連邦が中東・北アフリカ地域から唯一ランク入りしており、2017年の21位から上昇して19位となった。しかし、調査が終了してから、新型コロナウイルスのパンデミックと原油価格の下落が同地域の経済に大きな打撃を与えているため、地域の情勢はむしろネガティブなものとなっている。
■ アジア太平洋地域:
ランキング入りしたアジア太平洋地域の市場数は昨年の8カ国から今年は7カ国に減少し、トップ10には日本、中国、オーストラリアの3カ国のみがランクインしている。中国は8位へと順位を落とし、過去最低の順位となったが、新興国の中では最高位であることに変わりはない。新型コロナウイルスに最初に襲われたアジア太平洋地域の投資家心理は、調査期間中に低下した。
日本は2つ順位を上げて4位へ
日本のパフォーマンスの牽引要素のひとつは、2019年に日本が世界経済フォーラムの「世界競争力指数」の6位にランク入りしたこと。
さらに国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、2019年の対日投資フローは9%の緩やかな増加で、110億ドルに達した。安定した政治状況やポジティブなビジネス環境といった傾向が、海外直接投資が日本に引き付けられる要因となっている。
しかしながら新型コロナウイルスの大流行により2020年東京オリンピック・パラリンピック大会が延期されたことは、経済的に打撃を与えた(GDPの約0.1%の金額と推定される)。
ポストコロナの経済指標は弱まる可能性が高く、今後各種の対策が望まれる。
■ 調査概要
Kearney Foreign Direct Investment Confidence Index(海外直接投資信頼度指数調査)は、グローバル企業経営者層を対象とした年次調査で、今後3年間に大きな投資を呼び込む可能性が高いと思われる市場を順位付けしている。海外直接投資(FDI)の流れを振り返る、いわば後方視的な他のデータとは異なり、投資家が今後数年間にどの市場をターゲットとして海外直接投資を行うかについて、独自の前方視的な分析を提示するものである。1998年の調査開始以来、海外直接投資信頼度指数調査でランクインした国々と、その後数年間の実際の海外直接投資フローにおける上位投資先との間には密接な相関が見られる。
2020年海外直接投資信頼度指数は、世界の大手企業の上級幹部500人を対象とし、2020年1月から3月にかけて実施した独自調査から得た一次データを使用して作成された。回答者の役職はCxOレベルの役員や地域統括責任者など。全調査対象企業の年間売上高は5億ドル以上。調査対象企業の本社所在地は世界30カ国にまたがり、業種は全産業セクターにわたる。調査対象国は国際連合貿易開発会議(UNCTAD)のデータに基づき選定した。当指数に含まれる25カ国で、近年の全世界におけるFDIフローの95%超を占めている。回答企業のうち、サービスセクター企業が約44%、工業系企業が37%、IT企業が20%を占めている。
当指数は今後3年間の対市場直接投資見込みに関する質問に対する高、中、低の回答の加重平均で計算されている。指標数値は、当該国から見て海外市場に拠点を置く企業のみの回答に基づいて計算されている。例えば米国の指標数値は米国に本拠地を置く投資家の回答を除いて計算されている。指標数値が大きいほど投資先としての魅力度が高いことを示している。
当調査報告のFDIフロー数値はUNCTADの最新統計で、2019年の数値は全て推定値である。特記のない限り、特定のFDI取引価格に関するデータはDealogicから得た。また、経済成長率の数値は、特記のない限り、すべてオックスフォード・エコノミクスから入手可能な最新の推計値と予測値であり、その他の二次ソースには、投資促進機関、中央銀行、財務省、産業省、関連ニュースメディア、その他の主要データソースを活用した。
*最新版レポート全文(英語)や過去のFDICIはこちらをご覧ください
https://www.kearney.com/foreign-direct-investment-confidence-index
今回の海外直接投資信頼度指数(Foreign Direct Investment Confidence Index)調査は、新型コロナウイルス(COVID-19)が世界各地で致命的な広がりを見せ始め、市場に衝撃が走り始めた今年1月から3月にかけて実施されたものであり、世界が大きな「嵐」に突入していく中で、危機に瀕した瞬間を捉えたものだ。調査を開始したのが新型コロナウイルス流行前であり、企業経営者たちは、世界経済や直接投資の将来に対してそれなりに強気な見方をしていた。実際、昨年よりも多くの投資家が来年については楽観視していると答えていた。しかし、調査の終盤に世界が「嵐」に突入したことを認識すると、先進国、新興国、フロンティア市場を問わず、投資家の信頼度は低下し、パンデミックの急速な流行を反映した形となった。
新型コロナウイルスの急速な拡大は重要な変曲点である。パンデミックとそれに続く経済ショックが、いかに外部の経営環境が迅速かつ深刻に変化しうるかを示している。先進国市場が今回の調査でも好調を維持しているのは、魅力的な投資環境や強力な技術インフラなど、投資判断で優先される要素に強みを発揮しているからだと考えられる。
2013年以来、本調査の上位にランクインし続けている米国が、外国人投資家にとって常に魅力的な国である理由はビジネスに適した規制環境、市場規模、技術インフラを備えているからであるが、今後、米中の対立がさらに悪化した場合、投資信頼度にどう影響するかが懸念される。
一部の市場は当面の間、パンデミック以前の経済的潜在力まで回復しない可能性がある。新興およびフロンティア市場は、不十分な医療インフラ、限られた財政的選択肢、全体的な貧困レベルの高さなどの要因が組み合わさり、特に大きな被害を受けることになるだろう。
Kearney Foreign Direct Investment Confidence Index(海外直接投資信頼度指数調査)の創始者でA.T. カーニーのマクロ経済部門シンクタンクであるグローバル・ビジネス・ポリシー・カウンシル(GBPC)会長であるポール・ローディシナ(Paul A. Laudicina)は、「投資家らは最後の瞬間になってから経済の混乱が迫っていることに気づき、その多くは足元をすくわれることになりました」 と述べている。
海外直接投資信頼度指数は、世界の経営環境が日々一定であると想定することはできないと、経営者に警鐘を鳴らすものでなければならない。深刻な外生的ショックを予測し、計画を立てるためには、戦略的な洞察を得るツールと、改善された計画戦略を導入することが肝要である。当調査では、また、投資家が重要な変化を期待している分野である「気候変動」が、企業の既存の海外直接投資に影響を与えている、と指摘している。
GBPCのマネージング・ディレクターで、本調査報告書の共著者エリック・ピーターソン(Erik R. Peterson)は、「今回の調査に反映された気候変動リスクに対する意識の高さは、投資家がこれらの問題を念頭に置いていることを示唆していますが、これらのリスクに備えるためには、慎重な計画と戦略的思考が必要となります」と述べている。
回答者のうち60%もの投資家が、今後3年間で気候変動に関連した財務上の損失を予測し、また、同じく85%という圧倒的多数の投資家にとって、潜在的な海外直接投資の目標に対する環境の影響が、投資決定の判断要素となっている。
地域別概要
■ アメリカ地域:
アメリカ(北米および中南米)地域の結果はまちまちだった。米国が8年連続でトップの市場となり、カナダが 2 位に躍り出た。ブラジルは1年ぶりにランクインした。新型コロナウイルスの拡大を受け、調査期間中に、地域経済の見通しに対する投資家の楽観的な見方は低下した。
■ 欧州地域:
14の市場を含む欧州は、当ランキングに入った国の数が最も多い地域となった。ポルトガルは1年ぶりに指数に復帰し、21位にランク入りしている。投資家の欧州市場への関心が継続しているのは、熟練した労働力、高度な技術インフラ、経済の安定性に加えて、緩やかな規制環境に起因していると考えられる。欧州に対する投資家の信頼度は終始安定を見せた。
■ 中東および北アフリカ:
今回、アラブ首長国連邦が中東・北アフリカ地域から唯一ランク入りしており、2017年の21位から上昇して19位となった。しかし、調査が終了してから、新型コロナウイルスのパンデミックと原油価格の下落が同地域の経済に大きな打撃を与えているため、地域の情勢はむしろネガティブなものとなっている。
■ アジア太平洋地域:
ランキング入りしたアジア太平洋地域の市場数は昨年の8カ国から今年は7カ国に減少し、トップ10には日本、中国、オーストラリアの3カ国のみがランクインしている。中国は8位へと順位を落とし、過去最低の順位となったが、新興国の中では最高位であることに変わりはない。新型コロナウイルスに最初に襲われたアジア太平洋地域の投資家心理は、調査期間中に低下した。
日本は2つ順位を上げて4位へ
日本のパフォーマンスの牽引要素のひとつは、2019年に日本が世界経済フォーラムの「世界競争力指数」の6位にランク入りしたこと。
さらに国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、2019年の対日投資フローは9%の緩やかな増加で、110億ドルに達した。安定した政治状況やポジティブなビジネス環境といった傾向が、海外直接投資が日本に引き付けられる要因となっている。
しかしながら新型コロナウイルスの大流行により2020年東京オリンピック・パラリンピック大会が延期されたことは、経済的に打撃を与えた(GDPの約0.1%の金額と推定される)。
ポストコロナの経済指標は弱まる可能性が高く、今後各種の対策が望まれる。
■ 調査概要
Kearney Foreign Direct Investment Confidence Index(海外直接投資信頼度指数調査)は、グローバル企業経営者層を対象とした年次調査で、今後3年間に大きな投資を呼び込む可能性が高いと思われる市場を順位付けしている。海外直接投資(FDI)の流れを振り返る、いわば後方視的な他のデータとは異なり、投資家が今後数年間にどの市場をターゲットとして海外直接投資を行うかについて、独自の前方視的な分析を提示するものである。1998年の調査開始以来、海外直接投資信頼度指数調査でランクインした国々と、その後数年間の実際の海外直接投資フローにおける上位投資先との間には密接な相関が見られる。
2020年海外直接投資信頼度指数は、世界の大手企業の上級幹部500人を対象とし、2020年1月から3月にかけて実施した独自調査から得た一次データを使用して作成された。回答者の役職はCxOレベルの役員や地域統括責任者など。全調査対象企業の年間売上高は5億ドル以上。調査対象企業の本社所在地は世界30カ国にまたがり、業種は全産業セクターにわたる。調査対象国は国際連合貿易開発会議(UNCTAD)のデータに基づき選定した。当指数に含まれる25カ国で、近年の全世界におけるFDIフローの95%超を占めている。回答企業のうち、サービスセクター企業が約44%、工業系企業が37%、IT企業が20%を占めている。
当指数は今後3年間の対市場直接投資見込みに関する質問に対する高、中、低の回答の加重平均で計算されている。指標数値は、当該国から見て海外市場に拠点を置く企業のみの回答に基づいて計算されている。例えば米国の指標数値は米国に本拠地を置く投資家の回答を除いて計算されている。指標数値が大きいほど投資先としての魅力度が高いことを示している。
当調査報告のFDIフロー数値はUNCTADの最新統計で、2019年の数値は全て推定値である。特記のない限り、特定のFDI取引価格に関するデータはDealogicから得た。また、経済成長率の数値は、特記のない限り、すべてオックスフォード・エコノミクスから入手可能な最新の推計値と予測値であり、その他の二次ソースには、投資促進機関、中央銀行、財務省、産業省、関連ニュースメディア、その他の主要データソースを活用した。
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