WHO(世界保健機構)が大麻草およびその関連物質について今年1月に国連事務総長あてに勧告を発表し、国際的な議論が進む中で、新たに大麻に規制緩和をした国と地域があります。日本臨床カンナビノイド学会(新垣実理事長)は、2019年に大麻に規制緩和をした国と地域の調査結果を2019年12月27日の本プレスリリースにて発表しました。
調査結果の概要は、医療用大麻の合法化は7地域、嗜好用大麻の合法化は3地域、産業用大麻は、連邦法の施行を含む3地域がありました。国際的な薬物政策では、国連機関の共通の立場が採択され、いくつかの地域では大麻の非犯罪化や恩赦が導入されました。日本においても、令和天皇大嘗祭に必要な大麻布のための栽培許可、3月と5月の国会質問にて大麻由来の薬物での治験(臨床試験)は可能という見解を厚労省が示し、大きな進展が見られました。
本調査では下記の用語で統一して表記した。
医療用大麻:
大麻草を医療目的で使用するハーブ(生薬)療法の一種。大麻草に含まれる独特の成分「カンナビノイド」を抽出し、製剤化したカンナビノイド医薬品とは区別される。
嗜好用大麻:
大麻草を嗜好目的で使用すること。合法化した地域では、タバコやアルコールのように成人のみを対象として、課税管理する制度を採用したところがほとんどである。
産業用大麻:
大麻草に含まれ、向精神作用のあるTHC濃度が1%未満の品種を栽培し、そこから衣類、食品、化粧品、建材、製紙、飼料、敷料、自動車用品などの産業用途に使用すること。嗜好用や医療用のマリファナと区別するために、ヘンプ(Hemp)と呼ばれています。
〇調査結果 19年12月27日時点
1月1日 米国 ・・・改正農業法2018施行
産業用大麻をTHC0.3%以下と定義 規制物質から外す
1月19日 国連システム事務局長調整委員会(CEB)
31の国連機関を代表する国連の最高執行委員会は、所有と使用の非犯罪化を支持する薬物政策の共通の立場を採択
1月19日 米領バージン諸島・・・ 医療用大麻の合法化
1月24日 WHO/ECDD→国連 ・・・大麻およびカンナビノイドの医療価値を認めるWHO勧告
2月16日 キプロス ・・・医療用大麻の合法化
2月21日 タイ ・・・医療用大麻の合法化
3月19日 米国フロリダ州・・・ 医療用大麻の合法化(17年に一部合法化していた)
4月 日本徳島県・・・ 令和天皇大嘗祭のアラタエ(大麻布)のための栽培許可
4月1日 イスラエル・・・ 大麻の非犯罪化が発効
4月5日 米国ニューメキシコ州・・・ 12年前の医療用大麻法を全面改正
4月9日 米国グアム・・・ 嗜好用大麻の合法化
5月12日 米国ノースダコタ州・・・ 大麻の非犯罪化 初犯0.5オンス以下の大麻所持を最大1000ドルの罰金刑のみ 施行は19年8月1日
5月7日 ニュージーランド ・・・2020年11月21日の総選挙時に大麻の個人使用を合法化する国民投票を行う方針を発表
5月16日 日本・・・国会質問にて、大麻由来の薬物での治験は可能という見解を厚労省が示す
6月19日 ロシア・・・ 議会が医療用大麻栽培の法律を可決→連邦議会承認→大統領署名が必要
6月25日 米国イリノイ州・・・ 議会で嗜好用大麻が合法化、米国11州目
(施行は20年1月1日) (○2014年医療用)
7月9日 米国ハワイ州・・・ 3g以下のマリファナ所持の刑罰廃止し、代わりに130ドルの罰金刑となる非犯罪化へ
(施行は20年1月11日)
7月30日 米国ニューヨーク州・・・ 嗜好用大麻を非犯罪化
8月1日 カナダ・・・ マリファナ所持の犯罪歴を消滅させる恩赦の手続き開始
8月30日 タイ・・・ 大麻抽出物はCBDが主成分であればTHC0.2%までとする
9月1日 ジンバブエ・・・ 産業用大麻を栽培許可(有効期間は5年)
9月17日 エクアドル・・・ 国民議会が医療用大麻を承認
9月18日 パラグアイ・・・ 国民健康監視局(DINAVISA)で医療用大麻栽培のライセンスプロセスを開始
9月23日 EU(欧州連合)・・・ CBD医薬品のエピディオレックスを欧州医薬品庁が承認
9月25日 オーストラリア ・・・首都特別地域(ACT)の嗜好用大麻を合法化
1人50gまでの所持、1世帯4株までの栽培 1月末施行
10月17日 カナダ・・・ 嗜好用大麻(食用、化粧品)の合法化、申請60日後までに販売が許可
10月24日 タイ・・・ 産業用大麻はTHC1%以下の品種と正式に定義する
10月29日 米国・・・ 農務省(USDA)が産業用大麻の暫定的な生産規制を定めた
12月1日 米国ミシガン州・・・ 嗜好用大麻の店頭販売開始
12月3日 ブラジル・・・ 医薬品規制当局(ANVISA)が産業用大麻の栽培を許可
12月16日 ザンビア・・・ 医療用大麻の輸出と生産を合法化
調査結果の概要は、医療用大麻の合法化は7地域、嗜好用大麻の合法化は3地域、産業用大麻は、連邦法の施行を含む3地域がありました。国際的な薬物政策では、国連機関の共通の立場が採択され、いくつかの地域では大麻の非犯罪化や恩赦が導入されました。日本においても、令和天皇大嘗祭に必要な大麻布のための栽培許可、3月と5月の国会質問にて大麻由来の薬物での治験(臨床試験)は可能という見解を厚労省が示し、大きな進展が見られました。
本調査では下記の用語で統一して表記した。
医療用大麻:
大麻草を医療目的で使用するハーブ(生薬)療法の一種。大麻草に含まれる独特の成分「カンナビノイド」を抽出し、製剤化したカンナビノイド医薬品とは区別される。
嗜好用大麻:
大麻草を嗜好目的で使用すること。合法化した地域では、タバコやアルコールのように成人のみを対象として、課税管理する制度を採用したところがほとんどである。
産業用大麻:
大麻草に含まれ、向精神作用のあるTHC濃度が1%未満の品種を栽培し、そこから衣類、食品、化粧品、建材、製紙、飼料、敷料、自動車用品などの産業用途に使用すること。嗜好用や医療用のマリファナと区別するために、ヘンプ(Hemp)と呼ばれています。
〇調査結果 19年12月27日時点
1月1日 米国 ・・・改正農業法2018施行
産業用大麻をTHC0.3%以下と定義 規制物質から外す
1月19日 国連システム事務局長調整委員会(CEB)
31の国連機関を代表する国連の最高執行委員会は、所有と使用の非犯罪化を支持する薬物政策の共通の立場を採択
1月19日 米領バージン諸島・・・ 医療用大麻の合法化
1月24日 WHO/ECDD→国連 ・・・大麻およびカンナビノイドの医療価値を認めるWHO勧告
2月16日 キプロス ・・・医療用大麻の合法化
2月21日 タイ ・・・医療用大麻の合法化
3月19日 米国フロリダ州・・・ 医療用大麻の合法化(17年に一部合法化していた)
4月 日本徳島県・・・ 令和天皇大嘗祭のアラタエ(大麻布)のための栽培許可
4月1日 イスラエル・・・ 大麻の非犯罪化が発効
4月5日 米国ニューメキシコ州・・・ 12年前の医療用大麻法を全面改正
4月9日 米国グアム・・・ 嗜好用大麻の合法化
5月12日 米国ノースダコタ州・・・ 大麻の非犯罪化 初犯0.5オンス以下の大麻所持を最大1000ドルの罰金刑のみ 施行は19年8月1日
5月7日 ニュージーランド ・・・2020年11月21日の総選挙時に大麻の個人使用を合法化する国民投票を行う方針を発表
5月16日 日本・・・国会質問にて、大麻由来の薬物での治験は可能という見解を厚労省が示す
6月19日 ロシア・・・ 議会が医療用大麻栽培の法律を可決→連邦議会承認→大統領署名が必要
6月25日 米国イリノイ州・・・ 議会で嗜好用大麻が合法化、米国11州目
(施行は20年1月1日) (○2014年医療用)
7月9日 米国ハワイ州・・・ 3g以下のマリファナ所持の刑罰廃止し、代わりに130ドルの罰金刑となる非犯罪化へ
(施行は20年1月11日)
7月30日 米国ニューヨーク州・・・ 嗜好用大麻を非犯罪化
8月1日 カナダ・・・ マリファナ所持の犯罪歴を消滅させる恩赦の手続き開始
8月30日 タイ・・・ 大麻抽出物はCBDが主成分であればTHC0.2%までとする
9月1日 ジンバブエ・・・ 産業用大麻を栽培許可(有効期間は5年)
9月17日 エクアドル・・・ 国民議会が医療用大麻を承認
9月18日 パラグアイ・・・ 国民健康監視局(DINAVISA)で医療用大麻栽培のライセンスプロセスを開始
9月23日 EU(欧州連合)・・・ CBD医薬品のエピディオレックスを欧州医薬品庁が承認
9月25日 オーストラリア ・・・首都特別地域(ACT)の嗜好用大麻を合法化
1人50gまでの所持、1世帯4株までの栽培 1月末施行
10月17日 カナダ・・・ 嗜好用大麻(食用、化粧品)の合法化、申請60日後までに販売が許可
10月24日 タイ・・・ 産業用大麻はTHC1%以下の品種と正式に定義する
10月29日 米国・・・ 農務省(USDA)が産業用大麻の暫定的な生産規制を定めた
12月1日 米国ミシガン州・・・ 嗜好用大麻の店頭販売開始
12月3日 ブラジル・・・ 医薬品規制当局(ANVISA)が産業用大麻の栽培を許可
12月16日 ザンビア・・・ 医療用大麻の輸出と生産を合法化
Δ9-THC:
デルタ9-テトラヒドロカンナビノール。THCとも表記される。121種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、最も向精神作用のある成分。いわゆるマリファナの主成分として知られている。
CBD:
カンナビジオール。121種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、向精神作用のない成分で、てんかんの他に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、神経性疼痛、統合失調症、社会不安、抑うつ、抗がん、吐き気抑制、炎症性疾患、関節リウマチ、感染症、クローン病、心血管疾患、糖尿病合併症などの治療効果を有する可能性があると報告されている。2018年6月に行われたWHO/ECDD(依存性薬物専門家委員会)の批判的審査では、純粋なCBDは国際薬物規制の対象外であると勧告している。
カンナビノイド医薬品エピディオレックス(Epidiolex):
GW製薬の米国子会社Greenwich Biosciencesが開発した難治性てんかんの一種であるレノックス・ガストー症候群(LGS)またはドラベ症候群に関連する発作の治療のための抗てんかん薬(AED)である。Δ9-THCをほとんど含まず、CBD含有率が高い大麻草のクローン株からCO2抽出された植物性原液(BDS)から作られたものであり、1本100ml中に10000mg(10%濃度)のCBDを含有する。2歳以上の患者を対象とし、20mg/kg/日を標準摂取量としている。
日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2019年7月段階で、正会員(医療従事者、研究者)67名、賛助法人会員12名、 賛助個人会員23名、合計102名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/
日本の大麻取締法
我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2016年の時点で、全国作付面積7.9ha、大麻栽培者34名、大麻研究者400名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。
デルタ9-テトラヒドロカンナビノール。THCとも表記される。121種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、最も向精神作用のある成分。いわゆるマリファナの主成分として知られている。
CBD:
カンナビジオール。121種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、向精神作用のない成分で、てんかんの他に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、神経性疼痛、統合失調症、社会不安、抑うつ、抗がん、吐き気抑制、炎症性疾患、関節リウマチ、感染症、クローン病、心血管疾患、糖尿病合併症などの治療効果を有する可能性があると報告されている。2018年6月に行われたWHO/ECDD(依存性薬物専門家委員会)の批判的審査では、純粋なCBDは国際薬物規制の対象外であると勧告している。
カンナビノイド医薬品エピディオレックス(Epidiolex):
GW製薬の米国子会社Greenwich Biosciencesが開発した難治性てんかんの一種であるレノックス・ガストー症候群(LGS)またはドラベ症候群に関連する発作の治療のための抗てんかん薬(AED)である。Δ9-THCをほとんど含まず、CBD含有率が高い大麻草のクローン株からCO2抽出された植物性原液(BDS)から作られたものであり、1本100ml中に10000mg(10%濃度)のCBDを含有する。2歳以上の患者を対象とし、20mg/kg/日を標準摂取量としている。
日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2019年7月段階で、正会員(医療従事者、研究者)67名、賛助法人会員12名、 賛助個人会員23名、合計102名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/
日本の大麻取締法
我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2016年の時点で、全国作付面積7.9ha、大麻栽培者34名、大麻研究者400名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。