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報道関係各位
2019年6月21日発表
「日本語教育の推進に関する法律」成立に関する日本語教育学会の見解
公益社団法人日本語教育学会
URL:http://www.nkg.or.jp/
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1. 法律制定の意義
本法律により、日本語教育の推進が、国内においては多様な文化を尊重した共生社会の実現、海外においては諸外国との交流の促進並びに友好関係の維持・発展に寄与するものであることが、初めて明記されました。本会の「理念体系」にも、「異なることばや文化を有する人々を隣人として捉え、相互に理解しあい、尊重する」ための、「共生の場づくり」が大切であることが述べられています。そして、その共生の場づくりには、ことばがなくてはならないものです。
特に日本国内において、在住外国人に対する日本語教育の公的保障の必要性を通した共生社会の実現は、日本語教育界において長年議論されてきたことです。法律制定という形で、日本語教育の公的な位置付けが明確になったことは大変意義のあることだと考えています。
また、海外には日本語学習者が多数存在します。本法律の制定により、日本語教育を通した世界各国との友好関係の促進に加え、日本にルーツを持つ海外在住者への日本語教育もより活性化されることが期待できます。
本法律では、日本語教育の基本理念の構築、日本語教育の責任主体の明確化、日本語教育推進のための会議体の設定と専門家の関与が明文化されており、これらの点でも大変意義のあることと考えます。
2. 本法律制定により想定される波及効果
(1) 共生社会実現のための日本語教育事業に法的根拠が与えられたことにより、日本語教育への取り組みを考えている地方公共団体の後押しになるものと考えます。併せて、公的資金による日本語教育事業の増加により、日本語教育の質の向上が期待できます。
(2) 日本語を母語としない外国人とのコミュニケーションが、今後の日本社会における「社会的課題」であることを一般に広く知ってもらうことで、日本語教育の必要性が理解されることとなります。日本語によるコミュニケーションについては、外国人を受け入れている日本社会が主体となって日本語教育に関して責任を持つのだという世論の形成が期待できると考えます。
(3) 海外における日本語教育の推進によって、世界各国での知日家・親日家のさらなる育成が期待できます。また、日本にルーツのある海外在住者への日本語教育の充実により、世界各国で日本とのつながりを持ち続ける人たちの増加が期待できます。
3. 今後の課題と課題解決のための日本語教育学会の取り組み
(1) 本来、日本語教育政策は、社会統合に関する包括的な政策の下に位置付けられる必要があると考えます。今後、上位の包括的な法律・政策の実現を強く求めていきます。同時に、本法律の内容等について、日本語教育関係者はもとより、広く一般に対して理解を広めるための啓発活動に注力し、今後の日本語教育施策の充実とそれを通した共生社会の実現に寄与します。
(2) 今回の法律は理念法です。実体のある形にするためには、今後、個々の日本語教育施策を支える法的整備と政策の推進が不可欠です。本会としてのこれまでの調査研究や教育実践の蓄積、会員によるネットワーク等を活用し、より具体的な政策が実現できるように専門的知見をもって貢献をしたいと考えます。
(3) 国、地方公共団体、事業者それぞれの責務が明記されましたが、実際には地方公共団体に過度な負担がかかることが懸念されます。関係各所が責務を果たせるようなさらなる仕組みづくりとしてどのような体制・制度が考えられるか、生活者の日本語教育、年少者の日本語教育、働く人の日本語教育の社会的あり方を中心として引き続き議論し、具体的な提案を行っていきます。
(4) 在住外国人については、技能実習制度や留学生受け入れに関して、高額な仲介料の搾取やさまざまな人権侵害事案が発生する等、看過できない事例が散見されます。このような事案は教育の議論を超える面もありますが、今回の法整備を基盤として、日本社会が世界に誇れるような、人権を尊重した外国人の受け入れ体制を整え、共生社会の実現を目指していく必要があると考えます。本会は、教育機関の適切な評価基準の策定や良質な教育現場への支援措置の検討等に貢献することで、日本語教育の質の向上という観点から、よりよい制度設計のために尽力したいと考えています。
以上
【本件に関するお問い合わせ先】
公益社団法人日本語教育学会 (事務局長:大塚徹)
電話番号:03-3262-4291 Email:office@nkg.or.jp
報道関係各位
2019年6月21日発表
「日本語教育の推進に関する法律」成立に関する日本語教育学会の見解
公益社団法人日本語教育学会
URL:http://www.nkg.or.jp/
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1. 法律制定の意義
本法律により、日本語教育の推進が、国内においては多様な文化を尊重した共生社会の実現、海外においては諸外国との交流の促進並びに友好関係の維持・発展に寄与するものであることが、初めて明記されました。本会の「理念体系」にも、「異なることばや文化を有する人々を隣人として捉え、相互に理解しあい、尊重する」ための、「共生の場づくり」が大切であることが述べられています。そして、その共生の場づくりには、ことばがなくてはならないものです。
特に日本国内において、在住外国人に対する日本語教育の公的保障の必要性を通した共生社会の実現は、日本語教育界において長年議論されてきたことです。法律制定という形で、日本語教育の公的な位置付けが明確になったことは大変意義のあることだと考えています。
また、海外には日本語学習者が多数存在します。本法律の制定により、日本語教育を通した世界各国との友好関係の促進に加え、日本にルーツを持つ海外在住者への日本語教育もより活性化されることが期待できます。
本法律では、日本語教育の基本理念の構築、日本語教育の責任主体の明確化、日本語教育推進のための会議体の設定と専門家の関与が明文化されており、これらの点でも大変意義のあることと考えます。
2. 本法律制定により想定される波及効果
(1) 共生社会実現のための日本語教育事業に法的根拠が与えられたことにより、日本語教育への取り組みを考えている地方公共団体の後押しになるものと考えます。併せて、公的資金による日本語教育事業の増加により、日本語教育の質の向上が期待できます。
(2) 日本語を母語としない外国人とのコミュニケーションが、今後の日本社会における「社会的課題」であることを一般に広く知ってもらうことで、日本語教育の必要性が理解されることとなります。日本語によるコミュニケーションについては、外国人を受け入れている日本社会が主体となって日本語教育に関して責任を持つのだという世論の形成が期待できると考えます。
(3) 海外における日本語教育の推進によって、世界各国での知日家・親日家のさらなる育成が期待できます。また、日本にルーツのある海外在住者への日本語教育の充実により、世界各国で日本とのつながりを持ち続ける人たちの増加が期待できます。
3. 今後の課題と課題解決のための日本語教育学会の取り組み
(1) 本来、日本語教育政策は、社会統合に関する包括的な政策の下に位置付けられる必要があると考えます。今後、上位の包括的な法律・政策の実現を強く求めていきます。同時に、本法律の内容等について、日本語教育関係者はもとより、広く一般に対して理解を広めるための啓発活動に注力し、今後の日本語教育施策の充実とそれを通した共生社会の実現に寄与します。
(2) 今回の法律は理念法です。実体のある形にするためには、今後、個々の日本語教育施策を支える法的整備と政策の推進が不可欠です。本会としてのこれまでの調査研究や教育実践の蓄積、会員によるネットワーク等を活用し、より具体的な政策が実現できるように専門的知見をもって貢献をしたいと考えます。
(3) 国、地方公共団体、事業者それぞれの責務が明記されましたが、実際には地方公共団体に過度な負担がかかることが懸念されます。関係各所が責務を果たせるようなさらなる仕組みづくりとしてどのような体制・制度が考えられるか、生活者の日本語教育、年少者の日本語教育、働く人の日本語教育の社会的あり方を中心として引き続き議論し、具体的な提案を行っていきます。
(4) 在住外国人については、技能実習制度や留学生受け入れに関して、高額な仲介料の搾取やさまざまな人権侵害事案が発生する等、看過できない事例が散見されます。このような事案は教育の議論を超える面もありますが、今回の法整備を基盤として、日本社会が世界に誇れるような、人権を尊重した外国人の受け入れ体制を整え、共生社会の実現を目指していく必要があると考えます。本会は、教育機関の適切な評価基準の策定や良質な教育現場への支援措置の検討等に貢献することで、日本語教育の質の向上という観点から、よりよい制度設計のために尽力したいと考えています。
以上
【本件に関するお問い合わせ先】
公益社団法人日本語教育学会 (事務局長:大塚徹)
電話番号:03-3262-4291 Email:office@nkg.or.jp