本プレスリリースは2019年5月7日にA.T. Kearneyより米国で配信された英語版の抄訳です。
経営コンサルティング会社A.T. カーニー(本部:米国イリノイ州シカゴ、東京オフィス:港区)は、2019年海外直接投資信頼度指数調査の結果を発表し、投資先として魅力のある国上位25カ国を発表した。
今年も米国が首位の座を維持し、2位にはドイツが浮上、3位はひとつ順位を落としたカナダ。
英国は引き続き4位、フランスが5位に入り、日本は昨年同様の6位だった。
2019年調査結果のポイント
● A.T. カーニー「2019年海外直接投資信頼度指数/The Foreign Direct Investment Confidence Index(R):FDICI」調査の結果によると、今年も米国が首位の座を維持し、2位にはドイツが浮上、3位はひとつ順位を落としたカナダ。英国は引き続き4位、フランスが5位に入り、日本は昨年同様の6位だった。
● 投資家は世界経済の先行きについて引き続き楽観的な見方を示しているものの、2016年以降初めてその強気な姿勢に陰りが見え始めており、今年が変曲点となっている。
● 先進国市場では政治的および経済的リスクが上昇しており、向こう1年間は大荒れが予想される。
経営コンサルティング会社A.T. カーニー(本部:米国イリノイ州シカゴ、東京オフィス:港区)は、2019年海外直接投資信頼度指数調査の結果を発表し、投資先として魅力のある国上位25カ国を発表した。
今年も米国が首位の座を維持し、2位にはドイツが浮上、3位はひとつ順位を落としたカナダ。
英国は引き続き4位、フランスが5位に入り、日本は昨年同様の6位だった。
2019年調査結果のポイント
● A.T. カーニー「2019年海外直接投資信頼度指数/The Foreign Direct Investment Confidence Index(R):FDICI」調査の結果によると、今年も米国が首位の座を維持し、2位にはドイツが浮上、3位はひとつ順位を落としたカナダ。英国は引き続き4位、フランスが5位に入り、日本は昨年同様の6位だった。
● 投資家は世界経済の先行きについて引き続き楽観的な見方を示しているものの、2016年以降初めてその強気な姿勢に陰りが見え始めており、今年が変曲点となっている。
● 先進国市場では政治的および経済的リスクが上昇しており、向こう1年間は大荒れが予想される。
概要
本調査によれば、今後数年間は世界各地で企業による投資が幅広く展開される可能性が高い。投資家の75%以上が海外直接投資(FDI)の重要性はここ数年間より高まっているとの考えを示し、また企業経営者の80%近くが今後3年間で自分たちの会社がFDIの水準を引き上げるだろうと回答している。
しかし、投資家は幅広い市場を投資対象としており、投資先候補については様々な見方が出ている。今年は、70カ国を超える調査対象国のスコアがほぼいずれも上昇しており、これは20年前に同指数調査を開始して以来最も劇的な上昇傾向である。
投資家が注目する市場には矛盾が存在する。指数のスコア上位25カ国のうち22カ国は先進国市場であり、昨年の記録を凌ぐ最高点をたたき出した一方で、平均スコアの伸び率が最も高いのはフロンティア市場であり、その次が新興国市場、先進国市場は最後尾についている。
この矛盾はおそらく、新興市場とフロンティア市場の数が先進国市場よりはるかに多く、そのため新興国市場およびフロンティア市場の国々が上位25カ国になかなか浮上できないというごく単純な事実であること。そして現時点で先進国市場が好感される一方、投資家が将来の投資機会を求めて新興国市場の詳細な検討に入ったということであろう。 後者を裏付ける材料のひとつは、投資家がこれまで同様どれだけ先進国へのFDIに注目しているとしても、先進国市場に台頭するリスクも同時に考慮に入れているということ。投資家が今年最大のリスクの可能性として挙げたのは先進国市場の政情不安で、これに僅差で経済的危機と事業の規制強化が続く。投資家の間では、このようなリスクが今年起こる可能性は、新興国市場よりも先進国の方がはるかに高いと予想されているのである。
本調査の創始者でA.T. カーニーのマクロ経済部門シンクタンクであるグローバル・ビジネス・ポリシー・カウンシル(GBPC)会長であるポール・ラウディシナ(Paul A. Laudicina)は、「先進国市場に対する投資家の見方にあるこの矛盾は、おそらく投資に対する強い動機ゆえに、先進国市場のリスクに焦点が当たるためでしょう。企業が先進国市場とのコネクションを維持したいと考えることから、実際に投資を動かす要素となるのはおそらく先進国市場のポピュリズムと保護主義のリスクでしょう」との見解を示した。
世界の投資環境がますます複雑になったことで、企業にも投資家とは異なる様々な矛盾が生じつつある。FDICI調査では、このような矛盾は、投資家がマルチローカリズムに適応するための事業戦略の一環として、FDIを優先したことから生じたものであることが示された。マルチローカリズムとは、各地のコミュニティ、産業、製品、文化、慣習の嗜好により特徴付けられる時代のことである。
マルチローカリズム時代がFDIフローに与える最も興味深い影響の一つが、投資先を決定するうえで都市の重要性が高くなるらしいという点である。驚くべきことに、投資家の約60%は投資先を決定するにあたり、投資する国を選定するところから始めるわけではない。彼らは、投資するべき地域を選定するか、世界各国の都市を分析するところから着手するのである。投資家の間では、今後数年間は事業形態に関わらず、巨大都市、大都市にFDIが最も多く流れ込むとの見方だ。
グローバル・ビジネス・ポリシー・カウンシルのマネージング・ディレクターで、本調査報告書の共著者エリック・ピーターソン(Erik R. Peterson)は、「人材、イノベーション、そして経済活動が集まってくることこそ、都市圏が人を惹きつける理由でしょう。これは本調査とA.T. カーニーの最新のグローバル都市指標(Global Cities Index:GCI)との間に強い相関関係があることからも明らかです」と述べている。
地域別概要
● アメリカ地域:
アメリカ(北米および中南米)地域では異なる結果が入り混じっている。米国(1位)とカナダ(3位)は7年連続でともに指数の上位5位に入っているが、メキシコ(25位)は順位を大きく下げた。投資家の34%が今年のアメリカ地域の経済見通しに楽観的な見方を示したにも関わらず、投資家心理指数は昨年ほど強気ではなかった。
● 欧州地域:
欧州は国外投資家にとって魅力の高い投資先であり、ドイツ(2位)、英国(4位)、フランス(5位)をはじめ、ランキング上位25カ国のうち14カ国が欧州諸国である。欧州市場に引き続き投資家の注目が集まっているのは、現在進行中のブレグジットをめぐる不安定さが、企業のEU市場との優先的なアクセスを維持しておきたいとの考えが一部反映された結果であるとみていいだろう。
● アジア太平洋地域:
アジア太平洋地域市場は2019年も好調で、日本(6位)、中国(7位)、オーストラリア(9位)、シンガポール(10位)をはじめ、指数上位に占める国の割合は昨年の7カ国から8カ国に増えた。投資家の地域ごとの経済見通しではアジア太平洋地域が最も楽観視され、特に先進国市場である、日本、ニュージーランドおよびシンガポールに対する見通しが最も楽観的となっている。
【調査概要】
A.T.カーニー海外直接投資信頼度指数(Foreign Direct Investment “FDI” Confidence Index)調査は、グローバル企業経営者層を対象とした年次調査で、今後3年間に大きな投資を呼び込むと予想される市場を順位付けしている。海外直接投資の流れを振り返る他のデータとは異なり、この海外直接投資信頼度指数は今後数年間に投資家がどの市場をターゲットとして海外直接投資を行うかについての独自の予測的分析を提示するものである。1998年の調査開始以来、海外直接投資信頼度指数調査でランクインした国々と、その後数年間の実際の海外直接投資フローにおける上位投資先との間には密接な相関が見られる。
2019年海外直接投資信頼度指数は、世界の大手企業の500人以上の上級役員を対象とし、2019年1月に実施した独自調査から得た一次データを使用して作成された。回答者の役職はCxOレベルの役員や地域統括責任者など。全調査対象企業の年間売上高は5億ドル以上。調査対象企業の本社所在地は世界30カ国にまたがり、業種は全産業セクターにわたる。調査対象国は国際連合貿易開発会議(UNCTAD)のデータに基づき選定した。海外直接投資信頼度指数を求めた30カ国で、近年の全世界におけるFDIフローの90%超を占めている。回答企業のうち、サービスセクター企業が約44%、工業系企業が33%、IT企業が18%を占めている。
本指数は今後3年間の対市場直接投資見込みに関する質問に対する高、中、低の回答の加重平均で計算されている。指標数値は、当該国から見て外国の市場に拠点を置く企業のみの回答に基づいて計算されている。例えば米国の指標数値は米国に本拠地を置く投資家の回答を除いて計算されている。指標数値が大きいほど投資先としての魅力度が高いことを示している。
本レポートのFDIフロー額はUNCTADの最新統計で、2018年の数値は全て推定値である。特記のない限り、特定のFDI取引価格に関するデータはDealogicから得た。二次ソースとして、投資促進機関、中央銀行、財務省、産業省、関連ニュースメディア、その他の主要データソースを活用した。
*最新版レポート全文(英語)や過去のFDICIはこちらをご覧ください
https://www.atkearney.com/foreign-direct-investment-confidence-index
本調査によれば、今後数年間は世界各地で企業による投資が幅広く展開される可能性が高い。投資家の75%以上が海外直接投資(FDI)の重要性はここ数年間より高まっているとの考えを示し、また企業経営者の80%近くが今後3年間で自分たちの会社がFDIの水準を引き上げるだろうと回答している。
しかし、投資家は幅広い市場を投資対象としており、投資先候補については様々な見方が出ている。今年は、70カ国を超える調査対象国のスコアがほぼいずれも上昇しており、これは20年前に同指数調査を開始して以来最も劇的な上昇傾向である。
投資家が注目する市場には矛盾が存在する。指数のスコア上位25カ国のうち22カ国は先進国市場であり、昨年の記録を凌ぐ最高点をたたき出した一方で、平均スコアの伸び率が最も高いのはフロンティア市場であり、その次が新興国市場、先進国市場は最後尾についている。
この矛盾はおそらく、新興市場とフロンティア市場の数が先進国市場よりはるかに多く、そのため新興国市場およびフロンティア市場の国々が上位25カ国になかなか浮上できないというごく単純な事実であること。そして現時点で先進国市場が好感される一方、投資家が将来の投資機会を求めて新興国市場の詳細な検討に入ったということであろう。 後者を裏付ける材料のひとつは、投資家がこれまで同様どれだけ先進国へのFDIに注目しているとしても、先進国市場に台頭するリスクも同時に考慮に入れているということ。投資家が今年最大のリスクの可能性として挙げたのは先進国市場の政情不安で、これに僅差で経済的危機と事業の規制強化が続く。投資家の間では、このようなリスクが今年起こる可能性は、新興国市場よりも先進国の方がはるかに高いと予想されているのである。
本調査の創始者でA.T. カーニーのマクロ経済部門シンクタンクであるグローバル・ビジネス・ポリシー・カウンシル(GBPC)会長であるポール・ラウディシナ(Paul A. Laudicina)は、「先進国市場に対する投資家の見方にあるこの矛盾は、おそらく投資に対する強い動機ゆえに、先進国市場のリスクに焦点が当たるためでしょう。企業が先進国市場とのコネクションを維持したいと考えることから、実際に投資を動かす要素となるのはおそらく先進国市場のポピュリズムと保護主義のリスクでしょう」との見解を示した。
世界の投資環境がますます複雑になったことで、企業にも投資家とは異なる様々な矛盾が生じつつある。FDICI調査では、このような矛盾は、投資家がマルチローカリズムに適応するための事業戦略の一環として、FDIを優先したことから生じたものであることが示された。マルチローカリズムとは、各地のコミュニティ、産業、製品、文化、慣習の嗜好により特徴付けられる時代のことである。
マルチローカリズム時代がFDIフローに与える最も興味深い影響の一つが、投資先を決定するうえで都市の重要性が高くなるらしいという点である。驚くべきことに、投資家の約60%は投資先を決定するにあたり、投資する国を選定するところから始めるわけではない。彼らは、投資するべき地域を選定するか、世界各国の都市を分析するところから着手するのである。投資家の間では、今後数年間は事業形態に関わらず、巨大都市、大都市にFDIが最も多く流れ込むとの見方だ。
グローバル・ビジネス・ポリシー・カウンシルのマネージング・ディレクターで、本調査報告書の共著者エリック・ピーターソン(Erik R. Peterson)は、「人材、イノベーション、そして経済活動が集まってくることこそ、都市圏が人を惹きつける理由でしょう。これは本調査とA.T. カーニーの最新のグローバル都市指標(Global Cities Index:GCI)との間に強い相関関係があることからも明らかです」と述べている。
地域別概要
● アメリカ地域:
アメリカ(北米および中南米)地域では異なる結果が入り混じっている。米国(1位)とカナダ(3位)は7年連続でともに指数の上位5位に入っているが、メキシコ(25位)は順位を大きく下げた。投資家の34%が今年のアメリカ地域の経済見通しに楽観的な見方を示したにも関わらず、投資家心理指数は昨年ほど強気ではなかった。
● 欧州地域:
欧州は国外投資家にとって魅力の高い投資先であり、ドイツ(2位)、英国(4位)、フランス(5位)をはじめ、ランキング上位25カ国のうち14カ国が欧州諸国である。欧州市場に引き続き投資家の注目が集まっているのは、現在進行中のブレグジットをめぐる不安定さが、企業のEU市場との優先的なアクセスを維持しておきたいとの考えが一部反映された結果であるとみていいだろう。
● アジア太平洋地域:
アジア太平洋地域市場は2019年も好調で、日本(6位)、中国(7位)、オーストラリア(9位)、シンガポール(10位)をはじめ、指数上位に占める国の割合は昨年の7カ国から8カ国に増えた。投資家の地域ごとの経済見通しではアジア太平洋地域が最も楽観視され、特に先進国市場である、日本、ニュージーランドおよびシンガポールに対する見通しが最も楽観的となっている。
【調査概要】
A.T.カーニー海外直接投資信頼度指数(Foreign Direct Investment “FDI” Confidence Index)調査は、グローバル企業経営者層を対象とした年次調査で、今後3年間に大きな投資を呼び込むと予想される市場を順位付けしている。海外直接投資の流れを振り返る他のデータとは異なり、この海外直接投資信頼度指数は今後数年間に投資家がどの市場をターゲットとして海外直接投資を行うかについての独自の予測的分析を提示するものである。1998年の調査開始以来、海外直接投資信頼度指数調査でランクインした国々と、その後数年間の実際の海外直接投資フローにおける上位投資先との間には密接な相関が見られる。
2019年海外直接投資信頼度指数は、世界の大手企業の500人以上の上級役員を対象とし、2019年1月に実施した独自調査から得た一次データを使用して作成された。回答者の役職はCxOレベルの役員や地域統括責任者など。全調査対象企業の年間売上高は5億ドル以上。調査対象企業の本社所在地は世界30カ国にまたがり、業種は全産業セクターにわたる。調査対象国は国際連合貿易開発会議(UNCTAD)のデータに基づき選定した。海外直接投資信頼度指数を求めた30カ国で、近年の全世界におけるFDIフローの90%超を占めている。回答企業のうち、サービスセクター企業が約44%、工業系企業が33%、IT企業が18%を占めている。
本指数は今後3年間の対市場直接投資見込みに関する質問に対する高、中、低の回答の加重平均で計算されている。指標数値は、当該国から見て外国の市場に拠点を置く企業のみの回答に基づいて計算されている。例えば米国の指標数値は米国に本拠地を置く投資家の回答を除いて計算されている。指標数値が大きいほど投資先としての魅力度が高いことを示している。
本レポートのFDIフロー額はUNCTADの最新統計で、2018年の数値は全て推定値である。特記のない限り、特定のFDI取引価格に関するデータはDealogicから得た。二次ソースとして、投資促進機関、中央銀行、財務省、産業省、関連ニュースメディア、その他の主要データソースを活用した。
*最新版レポート全文(英語)や過去のFDICIはこちらをご覧ください
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