建築物の金属製内外装工事を手がける菊川工業株式会社(本社:東京都墨田区、代表取締役社長:宇津野嘉彦、以下菊川)は、イギリス・ロンドンの設計事務所Foster + Partners(以下フォスター・アンド・パートナーズ)が王立英国建築家協会(RIBA)のStirling(以下スターリング)賞を、ブルームバーグ欧州新本社ビルにて2018年10月10日に受賞されたことをお知らせします。
スターリング賞は、その年最も優秀な英国建築に贈られる賞で、イギリスで最も権威ある建築賞と言われています。今年受賞したロンドン中心部にあるブルームバーグ欧州新本社ビルは、「一世代に一度のプロジェクト」と称され、審査員満場一致で採択されました。
菊川は、英国歴史に残るこの建築物の内・外装ブロンズ工事に参画しており、供給した総ブロンズ量は700トン以上で、当社の歴史の中でも類のない規模となりました。海外プロジェクトであるにも関わらず当社の製品が採用されたのは、当社の技術提案力、最新設備や新技術を含めた生産体制、実績や品質が評価され、そしてこれらが施主と設計事務所が望む方針と一致したことからでした。
■ 「ブルームバーグ欧州本社ビル」の概要
□ プロジェクト名:Bloomberg’s European Headquarters
□ 工事年:2010~2017
□ 場所:英国 ロンドン
□ 延床面積:102,190m2
□ 施主:Bloomberg L.P. (ブルームバーグ・エル・ピー)
□ 設計:Foster + Partners (フォスター・アンド・パートーズ)
□ ゼネコン:Sir Robert McAlpine Ltd. (サー・ロバート・マクアルパイン社)
□ サブコン:Josef Gartner (ジョセフ・ガートナー)
□ ブロンズ工事:菊川工業株式会社
■ 王立英国建築家協会スターリング(RIBA Stirling)賞とは
王立英国建築家協会(Royal Institute of British Architects, 略してRIBA)は、1837年に王室認可を得た英国の建築家協会で、イギリスの建築家に関して最も伝統のある職能団体の一つです。RIBAは過去50年に渡って、毎年建築物に対する賞を数多発表しますが、その中でも英国内で最も優れているとされる建築物の建築家や設計事務所に与えられるのが、スターリング賞です。
スターリング賞は、1996年に英国で重要な建築家のひとりであるジェームズ・スターリングの名を冠して創設され、過去の受賞者には、ザハ・ハディド・アーキテクトやヘルツォーク&ド・ムーロン、リチャード・ロジャース、今回も受賞したフォスター・アンド・パートナーズなど、世界的な建築家や設計事務所がその名を連ねています。
スターリング賞の選考基準は、デザイン(デザイン・ビジョンや独創性・革新性)、人々への価値(アクセシビリティやサステナビリティ・快適度)、社会性(建設目的とその達成度、施主満足度)といった要素です。
今回のブルームバーグ欧州本社ビルの採択は、施主との関係性や、環境への配慮、内部螺旋階段に代表されるデザインの革新性が認められました。
■ ブロンズ工事参画の経緯
当社の同ビル建設工事への参画は、フォスター・アンド・パートナーズに、菊川のブロンズ仕上げ技術の一つ、硫化イブシを選定いただき、仕様としてスペックインしていただいたのがきっかけでした。しかし、当社にとっては海外の現場であるため、輸送コストをはじめ欧州のライバル企業に比べ受注への道のりは厳しいものでした。そのような中、設計事務所が要望する高難度な意匠の実現力、例えば丁寧な職人技・技術提案力・最新技術導入を含めた生産体制・ブロンズ製品の実績・環境への取り組み要望への対応など、オーダーメイドならではの対応が、高評価につながりました。また、試作やさまざまなサイズのモックアップを何度も製作し、デザインや精度・性能を事前に確認し、図面にフィードバックしていくことで安定した高品質の製品づくりへと繋げていく姿勢が評価され、良品を望む施主の方針とも合致し、結果ほぼ全数のブロンズ製品を当社が製作することとなりました。ブロンズ工事において、設計事務所が求める挑戦的なデザインを高次元で実現したことは、本プロジェクトの成功に大きく貢献しました。
■ 菊川が参画した内・外装ブロンズ工事
□ 外装フィン工事
新本社ビルの外装がまとう、およそ1000体のヒレのような形状のブロンズ・フィンを菊川が設計・製作しています。97タイプもの種類があるこれらのフィンは、最大で幅2300mm、高さ3300mm、重量は約500kgにもなります。建物が自然に「呼吸」するというデザイン・コンセプトのもと、空気の流れを考慮した形状で、ギルフィンと呼ばれる「魚のエラ」に類似した複雑な曲線美を描きます。
□ 内装螺旋階段工事
ブルームバーグ工事のシンボルの一つとなっている、巨大な内部螺旋階段。俯瞰すると三つ葉結び状になる、この階段のパネル全体を菊川で設計・製作しています。
「つなぎ目のない」意匠がポイントとなるこのパネルのサイズは、最大で幅2600mm、高さ2731mm、重量が450kgになります。市場にある薄板の材料が幅1250mm迄のため、材料をつなげて製作する新発想と新技術が詰まった製品です。
□ 外装低層ブロンズ工事
建物の外装の低層部は、他層と異なり、その昔存在した川の流れをイメージさせる、緩やかな波を描くデザインとなっています。この周辺に施工されたブロンズ製品も菊川が設計・製作しています。例えば、1階上部に周回する約300もの庇状ブロンズ製品、製品の曲げ部分のキワまでパンチングが施された緩やかな曲線美を描くパンチング付きのルーバー、断面のひし形の対角線が130mmと350mmで、先端角度が26°と鋭角な方立製品を曲げと一辺の溶接だけで実現しています。
■ 使用技術の例
□ ファイバーレーザー溶接
光を熱源とした最新の溶接技術をロボット技術と融合した溶接方法。高精度で高密度な溶接は、仕上げや製品形状への影響を大幅に減らし、複雑な形状の製品製作にも寄与します。本プロジェクトでは、螺旋階段の3次元カーブを形成する笠木のフタなど、複雑な形状で人の目に触れる箇所に適用しています。
□ FSW(摩擦攪拌接合)
摩擦熱と回転力で金属材を接合する技術。従来の溶接方法に比べ、高品質で高強度な接合が出来ます。本プロジェクトでの主な使い方は、市場に存在しない材料サイズの製品製作を実現するための丹銅板材接合です。完成した大板・長尺・幅広の製品は、つなぎ目も歪みも、ほとんど分からないほど高品質だと、高い評価をいただきました。
□ 3次元加工
球体に代表される、曲線や曲面をX・Y・Z軸に持つ立体形状の製品を製作する金属加工技術の総称。一般的な、切る・叩く・熱を加える・つなげるといった板金加工技術に加えて、職人技としてのノウハウを試行錯誤と経験を積み重ね、発展してきました。本プロジェクトでは、ハニカムを曲面パネルに接着することで、その形状を固定し、パネルの平滑度や剛性を保つという工法を新しく開発しています。
□ 硫化イブシ仕上げ
現行の10円玉が時間とともに落ち着いた風合いに変化するように、銅合金は時間とともに色が変わっていきます。硫化イブシ仕上げとは、この色調変化を人工的に作り上げる伝統的な職人仕上げです。ブルームバーグの工事では、その意匠に欠かすことの出来ない落ち着いた色調として採択され、総量43,000m2にもなるブロンズ製品全てに、この仕上げを施しています。
□ 3次元設計技術
3次元形状の板金加工を実現するには、まず3次元での設計技術が必要となります。ブルームバーグにおいて、やりとりは全て、施主の要望である3Dデータで行っています。複雑な形状を製作可能にする実施設計や生産設計・組立図から梱包計画まで、全てこの3Dデータにて行いました。
■ 施主・設計事務所について
□ Bloomberg L.P.(ブルームバーグ・エル・ピー)
本社:米国ニューヨーク、代表取締役社長:Michael Bloomberg
1981年創業の、金融・ビジネス・政治に関する情報の配信・通信・放送を行う大手総合情報サービス会社。
[URL] https://about.bloomberg.co.jp/
□ Foster + Partners(フォスター・アンド・パートナーズ)
本社:英国ロンドン、設立者:Norman Foster, Spencer de Grey
1967年設立の建築設計事務所で、ドイツ連邦議会新議事堂「ライヒスターク」や英国ロンドンの「スイス・リ(再保険会社)本社ビル」、米国のアップル新社屋、香港の「香港上海銀行本店」など、革新的な建築物や都市を手がけています。今回のスターリング賞受賞は、史上最多となる3度目。
[ URL(英語)] https://www.fosterandpartners.com/
■ 菊川工業会社概要
菊川工業は1933年創業のオーダーメイドの金属建材メーカーです。創業以来、時代をリードする建築物に果敢に挑戦して参りました。昨年に竣工した「東京ミッドタウン日比谷」や2016年竣工の「すみだ北斎美術館」の外装パネル、世界遺産「薬師寺」の食堂(じきどう)復興工事における化粧天井などにも参画しています。2009年からは環境製品、そして2017年からは内装・インテリア工事にも取り組むなど、常に新しい課題に挑み続けています。
<施工例>
フジテレビ本社ビル/球体外装、東京スカイツリー/展望台パネル、東京駅丸の内駅舎/柱型、渋谷ヒカリエ/シアター外装、東急プラザ表参道/万華鏡パネル、渋谷ヒカリエ/東急シアターオーブ天井パネルなど、海外物件を含め多数
スターリング賞は、その年最も優秀な英国建築に贈られる賞で、イギリスで最も権威ある建築賞と言われています。今年受賞したロンドン中心部にあるブルームバーグ欧州新本社ビルは、「一世代に一度のプロジェクト」と称され、審査員満場一致で採択されました。
菊川は、英国歴史に残るこの建築物の内・外装ブロンズ工事に参画しており、供給した総ブロンズ量は700トン以上で、当社の歴史の中でも類のない規模となりました。海外プロジェクトであるにも関わらず当社の製品が採用されたのは、当社の技術提案力、最新設備や新技術を含めた生産体制、実績や品質が評価され、そしてこれらが施主と設計事務所が望む方針と一致したことからでした。
■ 「ブルームバーグ欧州本社ビル」の概要
□ プロジェクト名:Bloomberg’s European Headquarters
□ 工事年:2010~2017
□ 場所:英国 ロンドン
□ 延床面積:102,190m2
□ 施主:Bloomberg L.P. (ブルームバーグ・エル・ピー)
□ 設計:Foster + Partners (フォスター・アンド・パートーズ)
□ ゼネコン:Sir Robert McAlpine Ltd. (サー・ロバート・マクアルパイン社)
□ サブコン:Josef Gartner (ジョセフ・ガートナー)
□ ブロンズ工事:菊川工業株式会社
■ 王立英国建築家協会スターリング(RIBA Stirling)賞とは
王立英国建築家協会(Royal Institute of British Architects, 略してRIBA)は、1837年に王室認可を得た英国の建築家協会で、イギリスの建築家に関して最も伝統のある職能団体の一つです。RIBAは過去50年に渡って、毎年建築物に対する賞を数多発表しますが、その中でも英国内で最も優れているとされる建築物の建築家や設計事務所に与えられるのが、スターリング賞です。
スターリング賞は、1996年に英国で重要な建築家のひとりであるジェームズ・スターリングの名を冠して創設され、過去の受賞者には、ザハ・ハディド・アーキテクトやヘルツォーク&ド・ムーロン、リチャード・ロジャース、今回も受賞したフォスター・アンド・パートナーズなど、世界的な建築家や設計事務所がその名を連ねています。
スターリング賞の選考基準は、デザイン(デザイン・ビジョンや独創性・革新性)、人々への価値(アクセシビリティやサステナビリティ・快適度)、社会性(建設目的とその達成度、施主満足度)といった要素です。
今回のブルームバーグ欧州本社ビルの採択は、施主との関係性や、環境への配慮、内部螺旋階段に代表されるデザインの革新性が認められました。
■ ブロンズ工事参画の経緯
当社の同ビル建設工事への参画は、フォスター・アンド・パートナーズに、菊川のブロンズ仕上げ技術の一つ、硫化イブシを選定いただき、仕様としてスペックインしていただいたのがきっかけでした。しかし、当社にとっては海外の現場であるため、輸送コストをはじめ欧州のライバル企業に比べ受注への道のりは厳しいものでした。そのような中、設計事務所が要望する高難度な意匠の実現力、例えば丁寧な職人技・技術提案力・最新技術導入を含めた生産体制・ブロンズ製品の実績・環境への取り組み要望への対応など、オーダーメイドならではの対応が、高評価につながりました。また、試作やさまざまなサイズのモックアップを何度も製作し、デザインや精度・性能を事前に確認し、図面にフィードバックしていくことで安定した高品質の製品づくりへと繋げていく姿勢が評価され、良品を望む施主の方針とも合致し、結果ほぼ全数のブロンズ製品を当社が製作することとなりました。ブロンズ工事において、設計事務所が求める挑戦的なデザインを高次元で実現したことは、本プロジェクトの成功に大きく貢献しました。
■ 菊川が参画した内・外装ブロンズ工事
□ 外装フィン工事
新本社ビルの外装がまとう、およそ1000体のヒレのような形状のブロンズ・フィンを菊川が設計・製作しています。97タイプもの種類があるこれらのフィンは、最大で幅2300mm、高さ3300mm、重量は約500kgにもなります。建物が自然に「呼吸」するというデザイン・コンセプトのもと、空気の流れを考慮した形状で、ギルフィンと呼ばれる「魚のエラ」に類似した複雑な曲線美を描きます。
□ 内装螺旋階段工事
ブルームバーグ工事のシンボルの一つとなっている、巨大な内部螺旋階段。俯瞰すると三つ葉結び状になる、この階段のパネル全体を菊川で設計・製作しています。
「つなぎ目のない」意匠がポイントとなるこのパネルのサイズは、最大で幅2600mm、高さ2731mm、重量が450kgになります。市場にある薄板の材料が幅1250mm迄のため、材料をつなげて製作する新発想と新技術が詰まった製品です。
□ 外装低層ブロンズ工事
建物の外装の低層部は、他層と異なり、その昔存在した川の流れをイメージさせる、緩やかな波を描くデザインとなっています。この周辺に施工されたブロンズ製品も菊川が設計・製作しています。例えば、1階上部に周回する約300もの庇状ブロンズ製品、製品の曲げ部分のキワまでパンチングが施された緩やかな曲線美を描くパンチング付きのルーバー、断面のひし形の対角線が130mmと350mmで、先端角度が26°と鋭角な方立製品を曲げと一辺の溶接だけで実現しています。
■ 使用技術の例
□ ファイバーレーザー溶接
光を熱源とした最新の溶接技術をロボット技術と融合した溶接方法。高精度で高密度な溶接は、仕上げや製品形状への影響を大幅に減らし、複雑な形状の製品製作にも寄与します。本プロジェクトでは、螺旋階段の3次元カーブを形成する笠木のフタなど、複雑な形状で人の目に触れる箇所に適用しています。
□ FSW(摩擦攪拌接合)
摩擦熱と回転力で金属材を接合する技術。従来の溶接方法に比べ、高品質で高強度な接合が出来ます。本プロジェクトでの主な使い方は、市場に存在しない材料サイズの製品製作を実現するための丹銅板材接合です。完成した大板・長尺・幅広の製品は、つなぎ目も歪みも、ほとんど分からないほど高品質だと、高い評価をいただきました。
□ 3次元加工
球体に代表される、曲線や曲面をX・Y・Z軸に持つ立体形状の製品を製作する金属加工技術の総称。一般的な、切る・叩く・熱を加える・つなげるといった板金加工技術に加えて、職人技としてのノウハウを試行錯誤と経験を積み重ね、発展してきました。本プロジェクトでは、ハニカムを曲面パネルに接着することで、その形状を固定し、パネルの平滑度や剛性を保つという工法を新しく開発しています。
□ 硫化イブシ仕上げ
現行の10円玉が時間とともに落ち着いた風合いに変化するように、銅合金は時間とともに色が変わっていきます。硫化イブシ仕上げとは、この色調変化を人工的に作り上げる伝統的な職人仕上げです。ブルームバーグの工事では、その意匠に欠かすことの出来ない落ち着いた色調として採択され、総量43,000m2にもなるブロンズ製品全てに、この仕上げを施しています。
□ 3次元設計技術
3次元形状の板金加工を実現するには、まず3次元での設計技術が必要となります。ブルームバーグにおいて、やりとりは全て、施主の要望である3Dデータで行っています。複雑な形状を製作可能にする実施設計や生産設計・組立図から梱包計画まで、全てこの3Dデータにて行いました。
■ 施主・設計事務所について
□ Bloomberg L.P.(ブルームバーグ・エル・ピー)
本社:米国ニューヨーク、代表取締役社長:Michael Bloomberg
1981年創業の、金融・ビジネス・政治に関する情報の配信・通信・放送を行う大手総合情報サービス会社。
[URL] https://about.bloomberg.co.jp/
□ Foster + Partners(フォスター・アンド・パートナーズ)
本社:英国ロンドン、設立者:Norman Foster, Spencer de Grey
1967年設立の建築設計事務所で、ドイツ連邦議会新議事堂「ライヒスターク」や英国ロンドンの「スイス・リ(再保険会社)本社ビル」、米国のアップル新社屋、香港の「香港上海銀行本店」など、革新的な建築物や都市を手がけています。今回のスターリング賞受賞は、史上最多となる3度目。
[ URL(英語)] https://www.fosterandpartners.com/
■ 菊川工業会社概要
菊川工業は1933年創業のオーダーメイドの金属建材メーカーです。創業以来、時代をリードする建築物に果敢に挑戦して参りました。昨年に竣工した「東京ミッドタウン日比谷」や2016年竣工の「すみだ北斎美術館」の外装パネル、世界遺産「薬師寺」の食堂(じきどう)復興工事における化粧天井などにも参画しています。2009年からは環境製品、そして2017年からは内装・インテリア工事にも取り組むなど、常に新しい課題に挑み続けています。
<施工例>
フジテレビ本社ビル/球体外装、東京スカイツリー/展望台パネル、東京駅丸の内駅舎/柱型、渋谷ヒカリエ/シアター外装、東急プラザ表参道/万華鏡パネル、渋谷ヒカリエ/東急シアターオーブ天井パネルなど、海外物件を含め多数