A.T. カーニー『2014年度グローバル・サービス・ロケーション指数調査』は、2004年より継続的に実施されており、企業のITサービス、コールセンター、バックオフィス業務などの海外移転先であるオフショア市場の選択の指針となるべく各国の魅力度を評価し、さらにグローバル・サービス産業の現状と今後の展望を分析したものである。「経済的魅力」「労働力(規模とスキル)」「ビジネス環境」の3分野の39の評価項目について各オフショア市場のスコアを算出し、上位51カ国のランキングを行っている(順位表 参照)。
■ インド・中国・マレーシアの上位は揺るがず
上位3カ国のインド、中国、マレーシアはローコストでありながらスキルを持つ豊富な人材に優れ、前々回(09年)ならびに前回調査(11年)から変化がない。上位10か国のうち、アジアが6か国を占め、バングラデシュが調査以来初のランキング入りをはたした。 インドも中国もオフショア市場としてはともに魅力的であるものの、高騰する中国の人件費に比べ、インドの人件費が依然低く抑えられていること、労働者の高い教育水準と英語能力がインドに優位性をもたらしている。 中央ヨーロッパは、成熟したサービス産業で高いスキルを持った人材の人件費が西ヨーロッパに比べ約半分。 コスト面では東南ヨーロッパも魅力的ではあるが、未成熟産業と規制状況のバランスが必要となるであろう。 中東・北アフリカは、欧州に近接し、巨大かつ優秀な人材プールを擁しているためにオフショア先としての魅力度が高い。
■ 軌道修正の開始 -今後はインハウスに集約するという反対の動きも
『2014年度グローバル・サービス・ロケーション指数調査』によれば、2000年代半ばの積極的な間接部門のアウトソーシング化や多国籍化を見直し、これまで外注先に委託していた業務を自社のサービスセンターや従業員に“帰還”させようという動きがでてきた。これは特に戦略的に重要性の増したIT部門に顕著に見られ、過去10年のデジタル化の進展により、間接部門の本国帰還が大幅に増加している。 本調査を担当した、A.T. カーニーのパートナーであり、グローバル・ビジネス・ポリシー・カウンシル(シンクタンク)の代表をつとめるエリック・ピーターソン(Erik Peterson)は「これまで費用対効果を第一に考えて決定をくだしていた案件も今後は他の要素を考慮しなければならなくなるだろう、例えばその部門がビジネスの中核であるか、それゆえ外注ではなく社内に取り込んだほうがよいのか、さらに外部規制要因がビジネスの取引、説明責任、知的所有権や顧客のプライバシーを保護するうえでどう影響を及ぼすか等」と述べている。
■ 次の選択肢は拠点を持たないこと?
本調査が示唆するもう一つの動きが“no location = 拠点のない”、つまりオートメーション化の進展やフリーランス・個人事業主への業務委託により、将来的には物理的な場所や地の利ということが意味をなさなくなるかもしれないということ。前出のピーターソンいわく 「過去数十年のあいだに、一つの組織の所在地は一カ所だけという時代に終わりをつげ、今や一企業が世界中に何十もの拠点を有していたりする。将来的に、素早く容易にオートメーション化が進展すれば全く新しいカテゴリーの職種が生まれ、我々も“拠点のない”世界へ移行しなくてはならなくなるかもしれない」 また本調査を担当し、A.T. カーニーのグローバル・ビジネス・ポリシー・カウンシル(シンクタンク)のシニア・マネージャーであるヨハン・ゴット(Johan Gott)はこう付け加える「“拠点のない”業態が増大すれば、付加価値が低くニッチな市場に特化してしまった国にとってはビジネスの機会を損なうかもしれない。そうならないためには積極的にバリューチェーンを高める戦略と、常に業界の動向を把握することが必要である。」
グローバル・サービス・ロケーション指数調査について
本調査は2004年に開始され、継続的に実施されてきました。グローバル・サービス・アウトソーシング業界の状況と展望、ならびにアウトソーシング・サービスを提供する各国(オフショア先)の魅力度の提示を目的としています。調査では、サービス機能(IT、BPO、コールセンターなど)のオフショア先としての各国の魅力度を「経済的魅力度」「労働力(規模とスキル)」「ビジネス環境」の3分野の39項目について評価し、上位51カ国をランキングしています。
調査報告書文責: Paul Laudicina, Erik Peterson, Johan Gott (A.T. カーニー ワシントンD.C. オフィス)
2014年9月15日に配信されたプレスリリースの日本語版です。
調査報告の原文(英語)はこちら http://www.atkearney.com/research-studies/global-services-location-index/full-report
【この件に関するお問合せ先】
A.T. カーニー株式会社 inquiry.jp@atkearney.com
■ インド・中国・マレーシアの上位は揺るがず
上位3カ国のインド、中国、マレーシアはローコストでありながらスキルを持つ豊富な人材に優れ、前々回(09年)ならびに前回調査(11年)から変化がない。上位10か国のうち、アジアが6か国を占め、バングラデシュが調査以来初のランキング入りをはたした。 インドも中国もオフショア市場としてはともに魅力的であるものの、高騰する中国の人件費に比べ、インドの人件費が依然低く抑えられていること、労働者の高い教育水準と英語能力がインドに優位性をもたらしている。 中央ヨーロッパは、成熟したサービス産業で高いスキルを持った人材の人件費が西ヨーロッパに比べ約半分。 コスト面では東南ヨーロッパも魅力的ではあるが、未成熟産業と規制状況のバランスが必要となるであろう。 中東・北アフリカは、欧州に近接し、巨大かつ優秀な人材プールを擁しているためにオフショア先としての魅力度が高い。
■ 軌道修正の開始 -今後はインハウスに集約するという反対の動きも
『2014年度グローバル・サービス・ロケーション指数調査』によれば、2000年代半ばの積極的な間接部門のアウトソーシング化や多国籍化を見直し、これまで外注先に委託していた業務を自社のサービスセンターや従業員に“帰還”させようという動きがでてきた。これは特に戦略的に重要性の増したIT部門に顕著に見られ、過去10年のデジタル化の進展により、間接部門の本国帰還が大幅に増加している。 本調査を担当した、A.T. カーニーのパートナーであり、グローバル・ビジネス・ポリシー・カウンシル(シンクタンク)の代表をつとめるエリック・ピーターソン(Erik Peterson)は「これまで費用対効果を第一に考えて決定をくだしていた案件も今後は他の要素を考慮しなければならなくなるだろう、例えばその部門がビジネスの中核であるか、それゆえ外注ではなく社内に取り込んだほうがよいのか、さらに外部規制要因がビジネスの取引、説明責任、知的所有権や顧客のプライバシーを保護するうえでどう影響を及ぼすか等」と述べている。
■ 次の選択肢は拠点を持たないこと?
本調査が示唆するもう一つの動きが“no location = 拠点のない”、つまりオートメーション化の進展やフリーランス・個人事業主への業務委託により、将来的には物理的な場所や地の利ということが意味をなさなくなるかもしれないということ。前出のピーターソンいわく 「過去数十年のあいだに、一つの組織の所在地は一カ所だけという時代に終わりをつげ、今や一企業が世界中に何十もの拠点を有していたりする。将来的に、素早く容易にオートメーション化が進展すれば全く新しいカテゴリーの職種が生まれ、我々も“拠点のない”世界へ移行しなくてはならなくなるかもしれない」 また本調査を担当し、A.T. カーニーのグローバル・ビジネス・ポリシー・カウンシル(シンクタンク)のシニア・マネージャーであるヨハン・ゴット(Johan Gott)はこう付け加える「“拠点のない”業態が増大すれば、付加価値が低くニッチな市場に特化してしまった国にとってはビジネスの機会を損なうかもしれない。そうならないためには積極的にバリューチェーンを高める戦略と、常に業界の動向を把握することが必要である。」
グローバル・サービス・ロケーション指数調査について
本調査は2004年に開始され、継続的に実施されてきました。グローバル・サービス・アウトソーシング業界の状況と展望、ならびにアウトソーシング・サービスを提供する各国(オフショア先)の魅力度の提示を目的としています。調査では、サービス機能(IT、BPO、コールセンターなど)のオフショア先としての各国の魅力度を「経済的魅力度」「労働力(規模とスキル)」「ビジネス環境」の3分野の39項目について評価し、上位51カ国をランキングしています。
調査報告書文責: Paul Laudicina, Erik Peterson, Johan Gott (A.T. カーニー ワシントンD.C. オフィス)
2014年9月15日に配信されたプレスリリースの日本語版です。
調査報告の原文(英語)はこちら http://www.atkearney.com/research-studies/global-services-location-index/full-report
【この件に関するお問合せ先】
A.T. カーニー株式会社 inquiry.jp@atkearney.com