言論NPO(代表 工藤泰志)は、韓国のシンクタンクである東アジア研究院(EAI)(院長:イ・スクジョン、漢字名:李淑鍾)とともに、第1回日韓共同世論調査を実施し、本日その結果を発表いたしました。今回の調査結果からは、この一年間での日韓両国関係や相手国に対する印象が大幅に悪化したということが明らかになりました。その背景には、国民間の直接交流が不足し、相手国を知るための情報源の多くを自国のメディアに依存しており、相手国への基本的理解が不足していることがあります。また、中国に対する日韓両国民の認識の違いなども顕著に表れる結果となっています。
なお、言論NPOはEAIと共同で、この調査結果と連動する形で新しい日韓の民間の対話「日韓未来対話」を、5月11日に開催いたします。
■第1回 日韓共同世論調査結果
≪韓国人の約8割が日本に対して「良くない」印象を持っている≫
韓国に対する印象を「良い」と回答する日本人は3割、日本に対する印象を「良い」とする韓国人は1割に過ぎない。逆に、韓国に対する印象を「良くない」と感じている日本人は約4割だが、日本にマイナスの印象を持つ韓国人に至っては76.6%と8割近くにのぼっている。また、両国民の4割がこの一年間で相手国に対する印象が「悪化した」と回答している。
相手国に対してマイナスイメージを持っている日本人の中で、その理由として最も多いのは、「歴史問題などで日本を批判するから」の55.8%で、「竹島をめぐり対立が続いているから」が50.1%で続き、この2点を挙げる日本人が半数を超えている。これに対して、韓国人は「独島問題があるから」(84.5%)、「侵略した歴史について正しく反省していないから」(77.0%)と領土をめぐる紛争と歴史認識問題を挙げる人がそれぞれ8割と圧倒的に多い。
≪韓国人の半数が現在の日本を「軍国主義」と見ている≫
韓国人で現在の日本を「軍国主義」と見る人は50.3%と半数を超えており、最も多い。日本を「平和主義」や「国際協調主義」と見る韓国人はそれぞれ1割にも満たない。日本人は約4割が今の韓国を「民族主義」と見ており最も多い。「軍国主義」も3割を超えている。
≪日本人の55.1%、韓国人の67.4%が現在の日韓関係を「悪い」と見ている≫
現在の日韓関係を「悪い」と見ている日本人は55.1%と半数を超しており、韓国人は67.4%と7割近くになっている。日本人の約7割、韓国人の半数を超える人が、この一年間で「日韓関係は悪くなった」と見ている。また今後の日韓関係も、現状の厳しいまま「変わらない」と見る人は韓国人で6割、日本人でも3割を超えており、3割近い韓国人が「さらに悪くなる」と見ている。どちらかといえば韓国側に日韓関係の将来に悲観的な見方が大きい。
≪韓国人は「対日関係」よりも「対中関係」を重視し、「日本」よりも「中国」に親近感を覚えている≫
日韓関係を重要だと考えている両国民は、それぞれ7割を超えており、日韓関係の重要性については両国民間で認識が一致している。しかし、「対中関係」との比較の中で判断を更に求めると、日本人の49.6%、韓国人の55.0%とどちらも半数程度が「どちらも同程度に重要」と回答している一方で、日本と韓国の国民間での違いも浮き彫りになった。「対中関係」を重要と考える日本人は20.0%となり、「対韓関係」が重要と考える日本人の13.9%を上回っている。これに対して、「対中関係」がより重要と考える韓国人は35.8%で、「対日関係」を重要と考える韓国人の9.3%を大きく上回っており、韓国人は日本よりも中国との関係を重視する傾向が強い。
また、「親近感」では日本は「中国」(5.9%)よりも、「韓国」(45.5%)により親近感を感じているのに対し、韓国人は「日本」(13.5%)よりも「中国」(36.2%)により親近感を感じている。
≪両国民の多くが、日本と韓国の間に領土紛争が存在していると認識≫
日本人の7割、韓国人の8割が日本と韓国の間に領土紛争が存在していると認識している。また解決方法では、日本の6割が、「国際司法裁判所」への提訴を求めており、韓国では「実効支配の強化」が4割近くと最も多い回答となっており、「軍事的対応も辞さない」という見方も2割ある。ただ、韓国の国民にも「平和解決」を追求する、との見方が3割近くあるほか、国際司法裁判所への日本の提訴に同意をするという回答も15.1%ある。
≪韓国人の4割が、北朝鮮、中国に続く軍事的脅威として日本を挙げている≫
日本、韓国ともに「北朝鮮」を軍事的脅威とみなす世論が圧倒的に多いが、韓国人の4割が「日本」を北朝鮮、中国に次ぐ脅威を感じる国と考えている。日本人は北朝鮮に続いて、「中国」にも6割が脅威を感じている。尖閣周辺での日中間の軍事紛争の可能性については韓国人の約7割が「数年以内」、あるいは「将来」起こると思うと回答している。日本は、軍事紛争は「起きない」が4割で最も多い。
調査結果の詳細については、言論NPOのホームページをご覧ください。
http://www.genron-npo.net/world/genre/cat212/post-229.html
■日韓共同世論調査とは
日本の非営利組織である言論NPOと韓国のシンクタンクであるEAI(東アジア研究院)は、日韓の両国民を対象とした共同世論調査を2013年3月から4月にかけて実施した。この調査の目的は、日韓両国民の相手国に対する理解や認識の状況やその変化を継続的に把握することで、両国民の間に存在する様々な認識ギャップの解消や相互理解の促進に貢献することにある。
この調査結果は、両団体が日韓両国の関係改善を目的に5月11日に創設する、新しい日韓の民間対話(「日韓未来対話」)の場でも報告され、対話と連動する形でこの調査が使われることになる。共同の世論調査を実施し、それと連動し調査結果を基に対話を行う方式は、日本の言論NPOが、2005年に立ち上げた日本と中国の民間対話である「東京-北京フォーラム」で導入しており、今回の対話でも同じ方式を採用することにした。
■2013年調査概要
日本側の世論調査は、日本全国の18歳以上の男女(高校生を除く)を対象に3月30日から4月15日まで訪問留置回収法により実施された。有効回収標本数は1000である。回答者の最終学歴は小中学校卒が10.5%、高校卒が45.1%、短大・高専卒が20.8%、大学卒が19.7%、大学院卒が2.5%だった。
これに対して韓国側の世論調査は、韓国全国の19歳以上の男女を対象に3月25日から4月15日まで調査員による対面式聴取法により実施された。有効回収標本数は1004であり、回答者の最終学歴は小学校以下が5.5%、中学校卒が8.7%、高校卒が39.5%、大学在学・中退(専門大学を含む)が11.6%、大学卒が33.2%、大学院卒が1.4%だった。
なお、この世論調査と別に、言論NPO及び東アジア研究院は日韓の有識者へのアンケート調査を4月上旬から中旬にかけて両国国内で実施した。日本側は、過去に言論NPOが行った議論活動や調査に参加していただいた国内の有識者など2000人に質問状を送付し、うち575人から回答をいただいた。これらの回答者は日本及び韓国社会の平均的なインテリ層の姿を現していると考えられ、日韓の世論の調査結果を比較することで、一般的な日本人・韓国人の認識に補完しようと考えた。
【認定NPO法人 言論NPO概要】
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設立:2001年11月
代表者:工藤泰志
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