「景品表示法」に抵触しないプレスリリースを書くための注意点

プレスリリースマガジン編集部

コンプライアンス遵守の重要性が叫ばれて久しい昨今ですが、残念ながら名だたる有名企業や大企業であっても、景品表示法に違反していたという報道を毎年のように目にします。

2022年9月に、消費者庁から景品表示法違反(優良誤認)として措置命令が下された大手健康食品メーカーの事例では、違反認定された広告物の中にプレスリリースが含まれていました。

今回は、景品表示法の中でも良く目にする不当表示である「優良誤認表示」と「有利誤認表示」の違いと実際にあった違反事例の紹介、そしてプレスリリースを書く上での注意点について解説します。

1.景品表示法とは?

景品表示法は、正式には「不当景品類及び不当表示防止法」といいます。(以下、「景表法」) 簡単にいうと、ウソや大げさな表示など消費者をだますような表示を禁止しています。一般消費者から、商品・サービスの品質や価格について、実際のもの等より著しく優良または有利であると誤認される表示(不当表示)を禁止しています。

景表法違反に対しては「措置命令」と「課徴金納付命令」という2つの行政処分が定められています。たとえ事業者側に故意・過失がなかったとしても、調査の結果、違反行為であると認められた場合は処分の対象となります。

2.不当表示の主な種類

今回は、景表法が規制する不当表示の種類の中から、「優良誤認表示」「有利誤認表示」「その他の誤認されるおそれのある表示」の3つについて解説していきます。

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「優良誤認表示」と「有利誤認表示」

これらの違いをざっくり表現すると、優良誤認表示は商品・サービスそのものを実際より著しく良く見せることで、有利誤認表示は商品・サービスの内容量や価格、販売条件をお得に見せて実際はそうではない、といったところです。 その中身と実際にあった違反事例を見てみましょう。

優良誤認表示有利誤認表示
商品・サービス品質・規格、その他の内容について価格や取引条件
具体例■品質(原材料、純度、添加物、性能、効果、鮮度など)
■規格
■その他(原産地、製造方法、受賞の有無、有効期限など、品質・規格に間接的に影響を及ぼすもの)
■数量
■アフターサービス、保証期間、支払い条件など
法的措置がとられた事例
(消費者庁発表資料より)
■「空気中のウイルス・菌を除去」をうたった空間除菌剤には表示の裏付けとなる合理的な根拠がなかったとして、製造販売元の製薬会社に対して措置命令が下された(2022年4月)

■実際はメロン果汁が2%だったのにもかかわらず100%と誤認させる表示をしていたとして、販売元の大手飲料メーカーに対して措置命令が下された(2022年9月)
■エアコンのチラシなどで不当な二重価格表示を行なっていたとして、通信販売会社に対して措置命令が下された(2018年10月)

■家庭用脱毛器の割引や購入特典を「期間限定」と宣伝したが、実際は期間終了後も割引やプレゼント等を繰り返していたとして、全国展開する脱毛サロン運営会社に措置命令が下された(2022年3月)

「その他の誤認されるおそれのある表示」

不当表示には上記2種類の他に「その他の誤認されるおそれのある表示」というのもあり、次の6つの告示が定められています。

その他の誤認されるおそれのある表示

(1)無果汁の清涼飲料水等についての表示
(2)商品の原産国に関する不当な表示
(3)消費者信用の融資費用に関する不当な表示
(4)不動産のおとり広告に関する表示
(5)おとり広告に関する表示
(6)有料老人ホームに関する不当な表示

(5)の「おとり広告」は有名ですね。主に、取引を行う準備ができていなかったり、供給量が著しく限定されているにもかかわらずその旨を明示していない場合がおとり広告に該当するとされています。2022年6月、大手回転寿司チェーン店がキャンペーンにおいて品切れにも関わらず告知を続け措置命令を受けた事例は記憶に新しいところです。

3.プレスリリースを書く上での具体的な注意点

景表法の概念をざっくり頭に入れたところで、次に具体的にプレスリリースを書く上でどのようなところに気をつけたらよいのか見ていきましょう。

【優良誤認表示について】

こちらは前述のとおり、商品・サービスそのものの品質や規格に関わる分野なので、大部分がプレスリリースを書く以前の問題でしょう。あらかじめ商品部や開発部、宣伝部など連携して事実確認や根拠に関する資料を確認しておきましょう。
その上でプレスリリースを書く際は、勢いあまって書き手の独断で品質や規格について重要な情報を省略したり、性能・効能を過剰に良く見せる表現を付け足さないよう気をつけましょう。

【有利誤認表示について】

どちらかというとプレスリリースでは有利誤認表示の方が、注意すべき点が多いかもしれません。
以下の具体例で説明します。

キャンペーン告知

キャンペーン告知のプレスリリースにはきちんとキャンペーン開始日と終了日の両方を明記しましょう。なんらかの事情でキャンペーン終了日が未定の場合は「終了日未定」としたり、また、募集人数に達し次第キャンペーンを終了する場合には「先着△名様」と明記することで終了日としましょう。

例)
  • キャンペーン期間:20××年×月×日(月)〜20××年×月×日(金)
  • キャンペーン期間:20××年×月×日(月)〜終了日未定
  • キャンペーン期間:20××年×月×日(月)〜応募者数、先着△名様に達し次第キャンペーン終了

「今ならお得なキャンペーン中」など期間が曖昧な表現は、法的にはもちろんのこと、具体的・客観的な情報を提供するプレスリリースとしても適切ではありません。

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割引・セール

元値と割引後の価格がきちんと比較できるように、通常価格と割引価格もしくは割引率など明記しましょう。(その際は税込・税別についての注釈もお忘れなく)
季節のセールなど割引の対象商品が多い場合は、「対象商品が最大60%〜30%OFF」といったように割引率の最大値と最小値の両方を記載しましょう。

ちなみに、元値となる「通常価格」については、販売実績が極端に短期間であったり販売実態のない高い価格を設定し、割引率を高く見せるのは不当表示に該当するおそれがあります。元値となる「通常価格」の定義については、消費者庁のホームページに掲載されている「二重価格表示」のページで確認しておきましょう。

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例)
  • 通常価格3,000円(税込)→早割価格2,500円(税込)
  • <年末年始セール>対象商品が最大60%〜30%OFF

客観的に価格比較ができない状態で「激安」「お得」といった曖昧な表現だけを羅列するのは、法的にはもちろんのこと具体的・客観的な情報を提供するプレスリリースとしても適切ではありません。

まとめ

いかがでしたか?
不当表示に関する落とし穴は思ったよりも身近に存在すると感じられた方もいるかもしれません。もちろん、社内の法務チェックを受けることも重要ですが、何よりも広報に関わる一人ひとりが主体性を持ってコンプラインス遵守に取り組んでいく姿勢もとても大切ですね。

※本コラムの記載内容は、2023年1月現在の法令等に基づいています。

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