株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の業務用空調設備市場を調査し、個別空調方式・セントラル空調方式別の動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。
1. 市場概況
本調査では、事務所や店舗、工場、倉庫、学校、病院など非住宅建築物で使用される業務用空調設備を対象として調査を実施した。2023年度の業務用空調設備市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年度比93.4%の4,831億円と推計した。個別空調方式とセントラル空調方式別の市場構成比(2023年度)をみると、個別空調市場が79.3%、セットラル空調市場が20.7%であった。個別空調方式の業務用空調設備は主に延床面積10,000平方メートル未満、セントラル空調方式は延床面積10,000平方メートル以上の非住宅建築物がターゲットであり、それらの建築物着工ボリュームに連動した市場構成となる。
2023年度の個別空調市場は、世界的な物価高の影響で店舗・オフィス向け空調設備の需要に一服感がみられ、出荷金額は前年度比10%程度の減少となった。一方、セントラル空調市場は原材料価格の高騰にともなう価格改定、地域冷暖房システム※の更新需要の増加を受け、出荷金額は同6%程度の増加となった。
※地域冷暖房システム:一定エリア内に所在する複数の建築物に、熱供給設備から地域導管を通じて熱媒体(冷温水、蒸気など)を供給するシステム。
1. 市場概況
本調査では、事務所や店舗、工場、倉庫、学校、病院など非住宅建築物で使用される業務用空調設備を対象として調査を実施した。2023年度の業務用空調設備市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年度比93.4%の4,831億円と推計した。個別空調方式とセントラル空調方式別の市場構成比(2023年度)をみると、個別空調市場が79.3%、セットラル空調市場が20.7%であった。個別空調方式の業務用空調設備は主に延床面積10,000平方メートル未満、セントラル空調方式は延床面積10,000平方メートル以上の非住宅建築物がターゲットであり、それらの建築物着工ボリュームに連動した市場構成となる。
2023年度の個別空調市場は、世界的な物価高の影響で店舗・オフィス向け空調設備の需要に一服感がみられ、出荷金額は前年度比10%程度の減少となった。一方、セントラル空調市場は原材料価格の高騰にともなう価格改定、地域冷暖房システム※の更新需要の増加を受け、出荷金額は同6%程度の増加となった。
※地域冷暖房システム:一定エリア内に所在する複数の建築物に、熱供給設備から地域導管を通じて熱媒体(冷温水、蒸気など)を供給するシステム。
2.注目トピック~「キガリ改正」への対応から、低GWP冷媒への切り替えが進む
空調機器の冷媒に使われるフロンがオゾン層を破壊し、地球温暖化につながることが指摘されたのをきっかけに、1989年にオゾン層破壊物質の生産・消費を規制する「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書(モントリオール議定書)」が発効された。これに沿って、国際社会ではオゾン層破壊効果のあるフロンの生産量・消費量を段階的に削減してきた。
2016年にはルワンダ・キガリで「モントリオール議定書第28回締約国会合(MOP28)」が開催され、生産量・消費量の削減対象に代替フロン(HFC:ハイドロフルオロカーボン)が追加された(キガリ改正、2019年発効)。これにより、店舗・オフィス用パッケージエアコン、ビル用マルチエアコン、チリングユニット、ターボ冷凍機などに使用されるHFCは今後、生産・消費量の規制が強化される。
これにともない、空調機器メーカー各社はHFCからR32、R1234yf冷媒などへの切り替えを進めている。R32はHFCに分類されるものの、地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)が比較的小さく(R410A:2,090、R32:675)、新冷媒に位置付けられている。R1234yfは、GWPをHFCの約1/6に抑えたHFO(ハイドロフルオロオレフィン)に分類される。
将来的には、R32についてもよりGWPの低い冷媒への切り替えが求められる。これを踏まえ、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は経済産業省が実施する「グリーン冷媒・機器開発事業」の下、「次世代低GWP冷媒の実用化に向けた高効率冷凍空調技術の開発」プロジェクト(事業期間:2023~2027年度)に取り組んでいる。GWPの低い次世代冷媒は、効率性や安全性(燃焼性)がHFCに比べ劣る点が課題である。これを踏まえ、本事業ではHFO混合冷媒候補の早期絞り込み、対応機器の開発・評価などが行われている。
3.将来展望
改正建築物省エネ法の施行により、大規模非住宅建築物から省エネ基準への適合が義務化され、省エネ機運は高まりつつある。業務用空調設備は、製品単価の高い高効率機(標準機と比較し高効率な空調機)の販売比率の上昇が期待されるとともに、原材料価格の上昇により製品価格の改定は今後も継続的に実施される見通しで、出荷金額は増加基調での推移が見込まれる。業務用空調設備市場規模は、2023年度から2030年度までの年平均成長率(CAGR)が2.3%で推移し、2024年度は前年度比103.4%の4,997億円、2030年度には5,668億円まで成長を予測する。
2030年度の個別括調方式とセントラル空調方式別の市場構成比は、個別空調市場:80.7%、セントラル空調市場:19.3%と2023年度に比べてわずかながら個別空調市場の割合が大きくなると予測する。
非住宅建築物の新築時については、カーボンニュートラル化志向の高まりや設備設計の平易化を背景に、吸収冷温水機/冷凍機からビル用マルチエアコン、あるいはターボ冷凍機へのシフトが進むものと考える。他方、リプレース時には既存品と同等製品での機器入れ替えが一般的であることから、吸収冷温水機/冷凍機の需要縮小のペースは緩やかなものとなる見込みである。よって、今後も個別空調方式とセントラル空調方式の市場バランスに大きな変動は生じないものと考える。
※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3658
調査要綱
1.調査期間:2024年7月~9月
2.調査対象:国内の業務用空調設備機器メーカー
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
4.発刊日: 2024年9月26日
お問い合わせ
⇒プレスリリースの内容や引用についてのお問い合わせは下記までお願いいたします。
株式会社矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム
https://www.yano.co.jp/contact/contact.php/press
株式会社矢野経済研究所
https://www.yano.co.jp/
空調機器の冷媒に使われるフロンがオゾン層を破壊し、地球温暖化につながることが指摘されたのをきっかけに、1989年にオゾン層破壊物質の生産・消費を規制する「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書(モントリオール議定書)」が発効された。これに沿って、国際社会ではオゾン層破壊効果のあるフロンの生産量・消費量を段階的に削減してきた。
2016年にはルワンダ・キガリで「モントリオール議定書第28回締約国会合(MOP28)」が開催され、生産量・消費量の削減対象に代替フロン(HFC:ハイドロフルオロカーボン)が追加された(キガリ改正、2019年発効)。これにより、店舗・オフィス用パッケージエアコン、ビル用マルチエアコン、チリングユニット、ターボ冷凍機などに使用されるHFCは今後、生産・消費量の規制が強化される。
これにともない、空調機器メーカー各社はHFCからR32、R1234yf冷媒などへの切り替えを進めている。R32はHFCに分類されるものの、地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)が比較的小さく(R410A:2,090、R32:675)、新冷媒に位置付けられている。R1234yfは、GWPをHFCの約1/6に抑えたHFO(ハイドロフルオロオレフィン)に分類される。
将来的には、R32についてもよりGWPの低い冷媒への切り替えが求められる。これを踏まえ、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は経済産業省が実施する「グリーン冷媒・機器開発事業」の下、「次世代低GWP冷媒の実用化に向けた高効率冷凍空調技術の開発」プロジェクト(事業期間:2023~2027年度)に取り組んでいる。GWPの低い次世代冷媒は、効率性や安全性(燃焼性)がHFCに比べ劣る点が課題である。これを踏まえ、本事業ではHFO混合冷媒候補の早期絞り込み、対応機器の開発・評価などが行われている。
3.将来展望
改正建築物省エネ法の施行により、大規模非住宅建築物から省エネ基準への適合が義務化され、省エネ機運は高まりつつある。業務用空調設備は、製品単価の高い高効率機(標準機と比較し高効率な空調機)の販売比率の上昇が期待されるとともに、原材料価格の上昇により製品価格の改定は今後も継続的に実施される見通しで、出荷金額は増加基調での推移が見込まれる。業務用空調設備市場規模は、2023年度から2030年度までの年平均成長率(CAGR)が2.3%で推移し、2024年度は前年度比103.4%の4,997億円、2030年度には5,668億円まで成長を予測する。
2030年度の個別括調方式とセントラル空調方式別の市場構成比は、個別空調市場:80.7%、セントラル空調市場:19.3%と2023年度に比べてわずかながら個別空調市場の割合が大きくなると予測する。
非住宅建築物の新築時については、カーボンニュートラル化志向の高まりや設備設計の平易化を背景に、吸収冷温水機/冷凍機からビル用マルチエアコン、あるいはターボ冷凍機へのシフトが進むものと考える。他方、リプレース時には既存品と同等製品での機器入れ替えが一般的であることから、吸収冷温水機/冷凍機の需要縮小のペースは緩やかなものとなる見込みである。よって、今後も個別空調方式とセントラル空調方式の市場バランスに大きな変動は生じないものと考える。
※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3658
調査要綱
1.調査期間:2024年7月~9月
2.調査対象:国内の業務用空調設備機器メーカー
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
4.発刊日: 2024年9月26日
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