非営利シンクタンク言論NPO(東京都中央区、代表:工藤泰志)は、2022年9月3日に開催する「第10回日韓未来対話」に先立ち、10回目の日韓共同世論調査の結果を9月1日に公表いたしました。この調査は、言論NPOと韓国の東アジア研究院(East Asia Institute, EAI)が2013年から10年間継続して毎年共同で実施しているもので、今年は7月下旬から8月中旬にかけて実施しました。
報道関係者の皆様には、この調査結果をぜひご報道いただきたく、お願い申し上げます。また、当代表・工藤へのインタビューなどのご要請がありましたら、積極的に対応させて頂きます。
報道関係者の皆様には、この調査結果をぜひご報道いただきたく、お願い申し上げます。また、当代表・工藤へのインタビューなどのご要請がありましたら、積極的に対応させて頂きます。
◆2020年に大幅に悪化した韓国国民の日本への意識は改善し、日本に対する「良くない」印象を持つ韓国人は(今年:52.8%、昨年63.2%、一昨年71.6%)、2019年の水準(49.9%)に戻った。日本人は48.8%から40.3%に8.5ポイントも減少しており、両国ともに調査を開始した以来、最も大きな改善となった。
◆現在の日韓関係を「悪い」と見る日本人は、昨年の52.7%から39.8%へと12.9ポイント減少し、調査開始以来最も低い数値となっている。韓国人でも昨年の81%から64.6%へと16.4ポイント減少している。
日韓関係が「重要である」と考える日本人は、昨年から9.9ポイント増加して56.5%と半数を超え、韓国人では「重要である」が82.6%と8割を超えている。さらに韓国人が日韓関係が重要な理由として、米国の同盟国であること、民主主義国であることとの回答が増加した。
◆韓国の対中国への意識が様々な項目で悪化している。
【1】韓国の将来的な方向について、昨年は米中を含めた多国間協力の促進を選ぶとの回答が最多だったが、今年は大幅に減少し、「韓国は日米と同じ側に立つ」と考える韓国人は、昨年の18.7%から33.5%に増加し最多となった。
【2】日米などが実施している対中国への経済関係を制限する動きに対し、「賛成する」韓国人は62%と6割を超え、日本の47.5%を超えた。
【3】世界の民主主義国が人権問題や強硬姿勢などで対中圧力を強め中、「同調すべき」とする韓国人は60.7%と6割を超え、日本人の39.6%を上回る。
【4】韓国人が「自国経済にとって最も関係が大事である」と考えているのは「米国」が8割で突出し、「中国」が64.7%で続くが、昨年の80.4%から大幅に減少した。
【5】中国を軍事的脅威だと感じている国民は昨年の61.8%から65.0%に増加した。
【6】米中対立下で、日米韓の三カ国の軍事・安全保障の協力については、協力を強化すべきと都の回答が昨年から8.2ポイント増え、72.4%と7割を超えている。その賛成の理由で、韓国人で増加が目立つのは「中国の台頭に対応するため」で、40%から51.7%になっている。さらに、韓国の半数を超える人は、QUADへの参加に賛成している。
◆韓国政府の現在の対日政策を、評価している日本人は12.2%となり、「どちらともいえない」「分からない」を合わせると51.9%と半数を越え、「評価しない」は35.6%も存在する。これに対して、日本政府の現在の対韓政策を「評価しない」韓国人は43.2%と半数近くになり、「どちらともいえない」「分からない」の42.8%を加えると、8割を超えている。「評価する」は14.1%に過ぎない。 そのため、国民の意識は政府に対応を迫っており、現状の日韓関係を「改善すべき」と考える人は、日本人で53.4%と昨年の46.7%から膨らみ、韓国人は81.1%(昨年は71.1%)と8割を越えている。
共同世論調査の主な結果は以下の通りです。
相手国に対する印象と現在の日韓関係
日韓両国とも相手国への印象は両国とも改善し、特に韓国人が大きく改善した
韓国に対して「良くない」印象を持っている日本人は40.3%となり、昨年から8.5ポイント減の改善となった。
また韓国人でも、日本に対する「良くない」印象を持つ人は昨年から10.4ポイント減の52.8%と改善している。
さらに相手国に「良い」印象を持っている人は、いずれも2013年に始まった調査では二番目に高い数値となるなど、両国で国民感情の改善が見られる。
現在の日韓関係について「悪い」と見る人は日韓両国で減少。ただ、今後の日韓関係は「変わらい」が最多
現在の日韓関係を「悪い」と見る日本人は、昨年の52.7%から39.8%へと12.9ポイント減少し、調査開始以来最も低い数値となっている。韓国人でも昨年の81%から64.6%へと16.4ポイント減少している。
今後の日韓関係については、両国で「変わらない」という見方が最も多いが、「良くなっていく」との見方が日本人では17.2%から29.9%に、韓国人では18.4%から30%に増加している。
日韓関係の困難な状況を改善すべきと考える日本人は半数を超え、韓国人では8割を超える
日韓関係の困難な現状を改善すべきと考えている日本人は53.4%と半数を超え、昨年の46.7%を上回っている。一方、韓国人では改善を求める声はさらに強く、81.1%と8割超(昨年は71.1%)が改善すべきと答えている。
相手国との今後の付き合い方については、日本人では「少なくとも政治的対立を避けるべき」が30.5%で最も多いが、「対立は未来志向で乗り越える」が28.5%と昨年22.8%から大きく増加している。一方、韓国人では、「日韓間に存在する対立を何としても未来志向で乗り越えるべき」が49.2%と昨年から増加し、半数に迫っている。
日韓関係の重要性
日韓関係が重要だとみる韓国人は8割を超え、米国の同盟国であること、民主主義国であることなどが増加した
日韓関係が「重要である」と考える日本人は、昨年から9.9ポイント増加して56.5%と半数を超えた。韓国人では「重要である」が82.6%と8割を超えている。
日韓関係が「重要である」と理由として、日本人で最多は、「歴史的、地理的、文化的に関係が深い、隣国であるため」という一般的な認識の71.9%である。一方、韓国人では貿易や経済・産業面での相互依存性を理由とする人が69.5%で最も多い。韓国では、「米国の同盟国同士として安全保障上の共通の利益を有しているから」、「民主主義などの共通の価値観を有する国同士だから」の二つがそれぞれ昨年から増加している。
韓国人の中で、中国に対する重要性、親近感が減少している
日中関係と対韓関係の重要性を比較すると、両国民ともに「どちらも同程度に重要」が半数程度で最も多い。日本人では「対中関係がより重要」は昨年の28.3%から22.6%に減少し、韓国でも調査を行った20年と比較すると14.3ポイント減少している。
親近感の比較では、両国で最も多い回答は「どちらにも親近感を感じない」だが、日本人では「韓国により親近感を覚える」が昨年の20.2%から25.9%に増加、韓国人で「日本により親近感を覚える」は24.3%となり、20年と比較すると10.1ポイント増加している。
政府間外交
韓国の尹錫悦大統領に良い印象を持つ人は増加したものの、半数は判断を保留
日本人で尹錫悦大統領に対して、「良い印象」を持つ人は20.1%となり、昨年の文在寅前大統領(2%)から大幅に改善している。ただ、「どちらともいえない」は22.3%、「わからない」が27.5%と半数が判断できないでいる。
韓国人で岸田首相に「良い印象」を持っている人は6.6%に過ぎず、昨年調査時の安倍・菅首相の3.1%と変わらないほど低い水準である。ただ、「どちらともいえない」の42.7%、「わからない」の11%を合計すれば半数近くおり、こちらもまだ判断できていない。
日韓首脳会談で、関係改善に向けた広範かつ包括的な話し合いが必要との回答が両国で最多に
日韓首脳会談で取り上げるべき議題として、日本人の54.2%、韓国人の36%が「両国関係の改善に向けた広範かつ包括的な話し合い」を選択し、これが最も多い回答となっている。北朝鮮の核問題は日本人で37.6%だが、韓国人では2.3%しかいない。
尹錫悦政権に日韓関係改善に向けた期待する声が韓国では4割を超える
尹錫悦政権発足後の日韓関係改善の見通しについて、日本人では「変わらない」の見方が33.3%で最も多いが、「改善する」との見方も26.8%ある。
韓国人では「改善する」が45.2%と4割を超えている。「悪化する」との見方は両国でそれぞれ1割に満たない。
日韓は対等な関係だ、と感じる日本人が昨年から大幅に増加
日韓間では様々な格差が縮小し、分野によっては韓国が日本を追い越し始めているが、日本人の27.8%が、日韓関係は「すでに対等な関係だ」と感じており、昨年の15.7%から大幅に増加している。28.9%は、「まだ対等な関係ではないが、そのような方向に進んでいる」と見ている。「韓国が日本と対等になるのは遠い未来の話」は10.1%に過ぎない。
一方、韓国人では、日韓はすでに対等な関係だと考えている人が48.1%と半数近い。
東アジアの軍事・安全保障
韓国人で「中国」が脅威だと感じる人は昨年大幅に増加し、今年も増加。「ロシア」に対する脅威では、日本人が2倍近く増加したのに対し、韓国人では数%にとどまる
日本人、韓国人の約8割は軍事的脅威を感じる国があると回答しており、その最大の脅威はいずれも「北朝鮮」である。次いで、「中国」に脅威を感じている構図も両国で共通するが、「ロシア」と回答した人は、日本人では昨年の32.1%から62.2%へと二倍近くに増加しているのに対し、韓国人では10.5%から16.5%の6ポイント増にとどまっている。
韓国人では、「日本」を挙げる人も33.2%と3割程度存在している。
日米間三カ国の軍事・安全保障協力を強化すべきとの韓国人の7割を超える
日米韓の三カ国の軍事・安全保障の協力については、日本人では半数が「どちらともいえない」と回答しており、昨年と同じ傾向である。これに対して、韓国人では協力を強化すべきだという回答が昨年から8.2ポイント増の72.4%と7割を超えている。
その賛成の理由では、両国ともに「北朝鮮の非核化や朝鮮半島の平和的な安定のためには不可欠だから」と考える人が最も多く、日本人では7割を超えている。韓国人で増加が目立つのは「中国の台頭に対応するため」で、40%から51.7%になっている。
韓国の半数を超える人が、日米豪印の枠組みであるQUADに加わるべきだと答える
QUADに韓国を加えることの是非について、日本人で「そう思う」と回答したのは1割に過ぎなかったのに対し、韓国人では53%と半数が「そう思う」と答えている。
北朝鮮の非核化について、実現しないと考える日韓両国民は6割を超える
核保有国となった北朝鮮の金正恩委員長の非核化への意思については、日韓両国民の8割近くが「信頼していない」と回答している。
非核化実現の見通しについては、日本人、韓国人の6割は実現しないと見ているが、実現の見通しを持っている韓国人も3割を超えている。
東アジアにおける韓国・北朝鮮の将来
昨年、韓国人は自国の将来について、米中を含めた多国間協力の促進を選ぶとの回答が最多だったが大幅に減少し、韓国は日米と同じ側に立つとの回答が最多となった
東アジアにおける韓国の将来的な方向について、韓国人では、「韓国は日米と同じ側に立つ」との見方が昨年の18.7%から33.5%に増加し、これが最も多い回答となった。ただ、「日米から離反し、中国の側に立つ」が3.7%から8.1%に増えている。
これに対し、日本人では半数以上が、韓国の将来の方向を判断できていない。ただ、「韓国は日米と同じ側に立つ」との見方が昨年の10.7%から24.2%に増加し、「日米から離反し中国側に立つ」が12.8%から5.8%に減少している。
朝鮮半島の将来については、日韓両国民とも悲観的に見ている人が半数を超える
10年後の朝鮮半島の状況について、日本人、韓国人の4割が「現状の不安定な状況のまま」だと見ている。韓国人では「韓国と北朝鮮の対立が深まる」という悲観的な見方は、19.6%と昨年の13.3%から増加している。
日韓両国と中国との関係
対中国への経済制裁に賛成する日本人は5割に迫り、韓国人は6割を超える
日米などが見せている中国との経済関係を制限する動きに対し、日本人では「賛成する」という回答が47.5%と半数近い。韓国人では「賛成する」はさらに多く、62%と6割を超えている。
中国への圧力の流れに同調すべきとの声は日本人の4割を超え、韓国人では6割を超えた
世界の民主主義国が人権問題や強硬姿勢などをめぐり、中国への圧力を強めている中、自国もこうした動きに同調すべきだと考えている日本人は39.6%と4割だが、韓国人ではさらに多く、60.7%と6割が同調すべきだと考えている。
相手国のポップカルチャーとその影響
相手国のポップカルチャーは、相手国への印象に対して、良い影響を与えるとの回答が最多
相手国のポップカルチャーに対して、日本人の41.8%、韓国人の58.4%が「関心がない」と回答しているが、「楽しんでいる」という人も日本人では34.6%、韓国人では17.2%いる。
その「楽しんでいる」分野に関しては、日本人では「ドラマ」(41.3%)、「音楽(K-POP)」(31.8%)の二つが突出している、韓国の「映画」を選ぶ人は6.4%程度である。
韓国人では日本の「漫画やアニメーション」を選ぶ人が68.4%で突出している。ただ、「映画」と「ドラマ」も2割を超えている。
また、こうした双方のポップカルチャーを楽しんでいることで、日本人の86.2%、韓国人の81.3%が相手国の印象が向上していると考えている。
両国のメディア、インターネット報道の評価
自国メディアの報道の客観性・公平性について、両国で客観的で公平だとの回答が増加した
自国メディアの日韓関係に関する報道の客観性・公平性について、日本人では、「どちらともいえない/わからない」が半数を超えて最も多いが、「客観的で公平な報道をしていると思う」との評価が増加している。韓国人では「客観的で公平な報道をしていると思わない」が最も多いが、昨年からは減少したのに対し、「客観的で公平な報道をしていると思う」が昨年の28.4%から35.6%に増加している。
インターネット上の世論は、民意を反映していないとの回答が日本人3割超、韓国人4割超
日本人ではインターネット上の反韓の世論は民意を適切に「反映していない」と考える人は、34.6%と3割超あり、「反映している」の1割を上回っている。ただ、「どちらともいえない/わからない」が半数を超えている。
韓国人では45.1%が「反映していない」と感じているが昨年からは減少し、「反映している」と考えている人が27.2%から37.5%に増加している。
「第10回日韓共同世論調査」概要
日本側の世論調査は、日本の18歳以上の男女を対象に7月23日から8月14日まで訪問留置回収法により実施された。有効回収標本数は1000である。回答者の性別は、男性が48.3%、女性が50.9%。最終学歴は小中学校卒が5.5%、高校卒が42%、短大・高専卒が21.5%、大学卒が28%、大学院卒が1.2%、その他が1.1%。年齢は20歳未満が2.3%、20歳から29歳が11.9%、30歳から39歳が14.8%、40歳から49歳が17.3%、50歳から59歳が14.7%、60歳以上が39%となっている。
韓国側の世論調査は、韓国の18歳以上の男女を対象に7月21日から8月8日まで調査員による対面式聴取法により実施された。有効回収標本数は1028である。回答者の性別は、男性が49.3%、女性が50.7%。最終学歴は中学校卒以下が12.7%、高校卒が38.9%、短大在学以上が48.3%。年齢は20歳未満が2.7%、20歳から29歳が16.0%、30歳から39歳が14.9%、40歳から49歳が18.5%、50歳から59歳が19.5%、60歳以上が28.5%となっている。
【言論NPOとは】
言論NPOは、「健全な社会には、当事者意識を持った議論や、未来に向かう真剣な議論の舞台が必要」との思いから、2001年に設立された、独立、中立、非営利のネットワーク型シンクタンクです。2005年に発足した「東京-北京フォーラム」は、日中間で唯一のハイレベル民間対話のプラットフォームとして17年間継続しています。また、2012年には、米国外交問題評議会が設立した世界25カ国のシンクタンク会議に日本から選出され、グローバルイシューに対する日本の意見を発信しています。この他、国内では毎年政権の実績評価の実施や選挙時の主要政党の公約評価、日本やアジアの民主主義のあり方を考える議論や、北東アジアの平和構築に向けた民間対話などに取り組んでいます。
また、2017年には世界10カ国のシンクタンクを東京に集め、東京を舞台に世界の課題に関する議論を行う「東京会議」を立ち上げ、会議での議論の内容をG7議長国と日本政府に提案する仕組みをつくり出しました。
さらに、米中対立下で、米国と中国が出席する4カ国の「アジア平和会議」を2020年1月に創設し、歴史的な作業に着手しています。
【東アジア研究院(EAI, East Asia Institute)とは】
東アジア研究院は、地域が抱える問題について政策提言を行うことを目的に、独立シンクタンクとして創設しました。研究者セミナー、フォーラム、教育プログラム、そして多様な出版物を通じて影響力のある成果を生み出しています。東アジア研究院の調査活動は、外交安全保障プログラム、ガバナンス研究プログラムの二本柱から成り、これらのプログラムが5つの研究センターよって行われています。また、研究タスクフォースを用いて、喫緊した重要な問題にも取り組んでいます。卓越した研究者と政策立案者が協働し、東アジア研究院は革新的で政策論議を反映した研究成果を想像する中心に立っています。韓国で卓越した研究所の一つとして、米国、中国、台湾、その他多くの国々との共同研究を通じ、北東アジアにおける知識ネットワークを創造しています。
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TEL:03-3527-3972 FAX:03-6810-8729
◆現在の日韓関係を「悪い」と見る日本人は、昨年の52.7%から39.8%へと12.9ポイント減少し、調査開始以来最も低い数値となっている。韓国人でも昨年の81%から64.6%へと16.4ポイント減少している。
日韓関係が「重要である」と考える日本人は、昨年から9.9ポイント増加して56.5%と半数を超え、韓国人では「重要である」が82.6%と8割を超えている。さらに韓国人が日韓関係が重要な理由として、米国の同盟国であること、民主主義国であることとの回答が増加した。
◆韓国の対中国への意識が様々な項目で悪化している。
【1】韓国の将来的な方向について、昨年は米中を含めた多国間協力の促進を選ぶとの回答が最多だったが、今年は大幅に減少し、「韓国は日米と同じ側に立つ」と考える韓国人は、昨年の18.7%から33.5%に増加し最多となった。
【2】日米などが実施している対中国への経済関係を制限する動きに対し、「賛成する」韓国人は62%と6割を超え、日本の47.5%を超えた。
【3】世界の民主主義国が人権問題や強硬姿勢などで対中圧力を強め中、「同調すべき」とする韓国人は60.7%と6割を超え、日本人の39.6%を上回る。
【4】韓国人が「自国経済にとって最も関係が大事である」と考えているのは「米国」が8割で突出し、「中国」が64.7%で続くが、昨年の80.4%から大幅に減少した。
【5】中国を軍事的脅威だと感じている国民は昨年の61.8%から65.0%に増加した。
【6】米中対立下で、日米韓の三カ国の軍事・安全保障の協力については、協力を強化すべきと都の回答が昨年から8.2ポイント増え、72.4%と7割を超えている。その賛成の理由で、韓国人で増加が目立つのは「中国の台頭に対応するため」で、40%から51.7%になっている。さらに、韓国の半数を超える人は、QUADへの参加に賛成している。
◆韓国政府の現在の対日政策を、評価している日本人は12.2%となり、「どちらともいえない」「分からない」を合わせると51.9%と半数を越え、「評価しない」は35.6%も存在する。これに対して、日本政府の現在の対韓政策を「評価しない」韓国人は43.2%と半数近くになり、「どちらともいえない」「分からない」の42.8%を加えると、8割を超えている。「評価する」は14.1%に過ぎない。 そのため、国民の意識は政府に対応を迫っており、現状の日韓関係を「改善すべき」と考える人は、日本人で53.4%と昨年の46.7%から膨らみ、韓国人は81.1%(昨年は71.1%)と8割を越えている。
共同世論調査の主な結果は以下の通りです。
相手国に対する印象と現在の日韓関係
日韓両国とも相手国への印象は両国とも改善し、特に韓国人が大きく改善した
韓国に対して「良くない」印象を持っている日本人は40.3%となり、昨年から8.5ポイント減の改善となった。
また韓国人でも、日本に対する「良くない」印象を持つ人は昨年から10.4ポイント減の52.8%と改善している。
さらに相手国に「良い」印象を持っている人は、いずれも2013年に始まった調査では二番目に高い数値となるなど、両国で国民感情の改善が見られる。
現在の日韓関係について「悪い」と見る人は日韓両国で減少。ただ、今後の日韓関係は「変わらい」が最多
現在の日韓関係を「悪い」と見る日本人は、昨年の52.7%から39.8%へと12.9ポイント減少し、調査開始以来最も低い数値となっている。韓国人でも昨年の81%から64.6%へと16.4ポイント減少している。
今後の日韓関係については、両国で「変わらない」という見方が最も多いが、「良くなっていく」との見方が日本人では17.2%から29.9%に、韓国人では18.4%から30%に増加している。
日韓関係の困難な状況を改善すべきと考える日本人は半数を超え、韓国人では8割を超える
日韓関係の困難な現状を改善すべきと考えている日本人は53.4%と半数を超え、昨年の46.7%を上回っている。一方、韓国人では改善を求める声はさらに強く、81.1%と8割超(昨年は71.1%)が改善すべきと答えている。
相手国との今後の付き合い方については、日本人では「少なくとも政治的対立を避けるべき」が30.5%で最も多いが、「対立は未来志向で乗り越える」が28.5%と昨年22.8%から大きく増加している。一方、韓国人では、「日韓間に存在する対立を何としても未来志向で乗り越えるべき」が49.2%と昨年から増加し、半数に迫っている。
日韓関係の重要性
日韓関係が重要だとみる韓国人は8割を超え、米国の同盟国であること、民主主義国であることなどが増加した
日韓関係が「重要である」と考える日本人は、昨年から9.9ポイント増加して56.5%と半数を超えた。韓国人では「重要である」が82.6%と8割を超えている。
日韓関係が「重要である」と理由として、日本人で最多は、「歴史的、地理的、文化的に関係が深い、隣国であるため」という一般的な認識の71.9%である。一方、韓国人では貿易や経済・産業面での相互依存性を理由とする人が69.5%で最も多い。韓国では、「米国の同盟国同士として安全保障上の共通の利益を有しているから」、「民主主義などの共通の価値観を有する国同士だから」の二つがそれぞれ昨年から増加している。
韓国人の中で、中国に対する重要性、親近感が減少している
日中関係と対韓関係の重要性を比較すると、両国民ともに「どちらも同程度に重要」が半数程度で最も多い。日本人では「対中関係がより重要」は昨年の28.3%から22.6%に減少し、韓国でも調査を行った20年と比較すると14.3ポイント減少している。
親近感の比較では、両国で最も多い回答は「どちらにも親近感を感じない」だが、日本人では「韓国により親近感を覚える」が昨年の20.2%から25.9%に増加、韓国人で「日本により親近感を覚える」は24.3%となり、20年と比較すると10.1ポイント増加している。
政府間外交
韓国の尹錫悦大統領に良い印象を持つ人は増加したものの、半数は判断を保留
日本人で尹錫悦大統領に対して、「良い印象」を持つ人は20.1%となり、昨年の文在寅前大統領(2%)から大幅に改善している。ただ、「どちらともいえない」は22.3%、「わからない」が27.5%と半数が判断できないでいる。
韓国人で岸田首相に「良い印象」を持っている人は6.6%に過ぎず、昨年調査時の安倍・菅首相の3.1%と変わらないほど低い水準である。ただ、「どちらともいえない」の42.7%、「わからない」の11%を合計すれば半数近くおり、こちらもまだ判断できていない。
日韓首脳会談で、関係改善に向けた広範かつ包括的な話し合いが必要との回答が両国で最多に
日韓首脳会談で取り上げるべき議題として、日本人の54.2%、韓国人の36%が「両国関係の改善に向けた広範かつ包括的な話し合い」を選択し、これが最も多い回答となっている。北朝鮮の核問題は日本人で37.6%だが、韓国人では2.3%しかいない。
尹錫悦政権に日韓関係改善に向けた期待する声が韓国では4割を超える
尹錫悦政権発足後の日韓関係改善の見通しについて、日本人では「変わらない」の見方が33.3%で最も多いが、「改善する」との見方も26.8%ある。
韓国人では「改善する」が45.2%と4割を超えている。「悪化する」との見方は両国でそれぞれ1割に満たない。
日韓は対等な関係だ、と感じる日本人が昨年から大幅に増加
日韓間では様々な格差が縮小し、分野によっては韓国が日本を追い越し始めているが、日本人の27.8%が、日韓関係は「すでに対等な関係だ」と感じており、昨年の15.7%から大幅に増加している。28.9%は、「まだ対等な関係ではないが、そのような方向に進んでいる」と見ている。「韓国が日本と対等になるのは遠い未来の話」は10.1%に過ぎない。
一方、韓国人では、日韓はすでに対等な関係だと考えている人が48.1%と半数近い。
東アジアの軍事・安全保障
韓国人で「中国」が脅威だと感じる人は昨年大幅に増加し、今年も増加。「ロシア」に対する脅威では、日本人が2倍近く増加したのに対し、韓国人では数%にとどまる
日本人、韓国人の約8割は軍事的脅威を感じる国があると回答しており、その最大の脅威はいずれも「北朝鮮」である。次いで、「中国」に脅威を感じている構図も両国で共通するが、「ロシア」と回答した人は、日本人では昨年の32.1%から62.2%へと二倍近くに増加しているのに対し、韓国人では10.5%から16.5%の6ポイント増にとどまっている。
韓国人では、「日本」を挙げる人も33.2%と3割程度存在している。
日米間三カ国の軍事・安全保障協力を強化すべきとの韓国人の7割を超える
日米韓の三カ国の軍事・安全保障の協力については、日本人では半数が「どちらともいえない」と回答しており、昨年と同じ傾向である。これに対して、韓国人では協力を強化すべきだという回答が昨年から8.2ポイント増の72.4%と7割を超えている。
その賛成の理由では、両国ともに「北朝鮮の非核化や朝鮮半島の平和的な安定のためには不可欠だから」と考える人が最も多く、日本人では7割を超えている。韓国人で増加が目立つのは「中国の台頭に対応するため」で、40%から51.7%になっている。
韓国の半数を超える人が、日米豪印の枠組みであるQUADに加わるべきだと答える
QUADに韓国を加えることの是非について、日本人で「そう思う」と回答したのは1割に過ぎなかったのに対し、韓国人では53%と半数が「そう思う」と答えている。
北朝鮮の非核化について、実現しないと考える日韓両国民は6割を超える
核保有国となった北朝鮮の金正恩委員長の非核化への意思については、日韓両国民の8割近くが「信頼していない」と回答している。
非核化実現の見通しについては、日本人、韓国人の6割は実現しないと見ているが、実現の見通しを持っている韓国人も3割を超えている。
東アジアにおける韓国・北朝鮮の将来
昨年、韓国人は自国の将来について、米中を含めた多国間協力の促進を選ぶとの回答が最多だったが大幅に減少し、韓国は日米と同じ側に立つとの回答が最多となった
東アジアにおける韓国の将来的な方向について、韓国人では、「韓国は日米と同じ側に立つ」との見方が昨年の18.7%から33.5%に増加し、これが最も多い回答となった。ただ、「日米から離反し、中国の側に立つ」が3.7%から8.1%に増えている。
これに対し、日本人では半数以上が、韓国の将来の方向を判断できていない。ただ、「韓国は日米と同じ側に立つ」との見方が昨年の10.7%から24.2%に増加し、「日米から離反し中国側に立つ」が12.8%から5.8%に減少している。
朝鮮半島の将来については、日韓両国民とも悲観的に見ている人が半数を超える
10年後の朝鮮半島の状況について、日本人、韓国人の4割が「現状の不安定な状況のまま」だと見ている。韓国人では「韓国と北朝鮮の対立が深まる」という悲観的な見方は、19.6%と昨年の13.3%から増加している。
日韓両国と中国との関係
対中国への経済制裁に賛成する日本人は5割に迫り、韓国人は6割を超える
日米などが見せている中国との経済関係を制限する動きに対し、日本人では「賛成する」という回答が47.5%と半数近い。韓国人では「賛成する」はさらに多く、62%と6割を超えている。
中国への圧力の流れに同調すべきとの声は日本人の4割を超え、韓国人では6割を超えた
世界の民主主義国が人権問題や強硬姿勢などをめぐり、中国への圧力を強めている中、自国もこうした動きに同調すべきだと考えている日本人は39.6%と4割だが、韓国人ではさらに多く、60.7%と6割が同調すべきだと考えている。
相手国のポップカルチャーとその影響
相手国のポップカルチャーは、相手国への印象に対して、良い影響を与えるとの回答が最多
相手国のポップカルチャーに対して、日本人の41.8%、韓国人の58.4%が「関心がない」と回答しているが、「楽しんでいる」という人も日本人では34.6%、韓国人では17.2%いる。
その「楽しんでいる」分野に関しては、日本人では「ドラマ」(41.3%)、「音楽(K-POP)」(31.8%)の二つが突出している、韓国の「映画」を選ぶ人は6.4%程度である。
韓国人では日本の「漫画やアニメーション」を選ぶ人が68.4%で突出している。ただ、「映画」と「ドラマ」も2割を超えている。
また、こうした双方のポップカルチャーを楽しんでいることで、日本人の86.2%、韓国人の81.3%が相手国の印象が向上していると考えている。
両国のメディア、インターネット報道の評価
自国メディアの報道の客観性・公平性について、両国で客観的で公平だとの回答が増加した
自国メディアの日韓関係に関する報道の客観性・公平性について、日本人では、「どちらともいえない/わからない」が半数を超えて最も多いが、「客観的で公平な報道をしていると思う」との評価が増加している。韓国人では「客観的で公平な報道をしていると思わない」が最も多いが、昨年からは減少したのに対し、「客観的で公平な報道をしていると思う」が昨年の28.4%から35.6%に増加している。
インターネット上の世論は、民意を反映していないとの回答が日本人3割超、韓国人4割超
日本人ではインターネット上の反韓の世論は民意を適切に「反映していない」と考える人は、34.6%と3割超あり、「反映している」の1割を上回っている。ただ、「どちらともいえない/わからない」が半数を超えている。
韓国人では45.1%が「反映していない」と感じているが昨年からは減少し、「反映している」と考えている人が27.2%から37.5%に増加している。
「第10回日韓共同世論調査」概要
日本側の世論調査は、日本の18歳以上の男女を対象に7月23日から8月14日まで訪問留置回収法により実施された。有効回収標本数は1000である。回答者の性別は、男性が48.3%、女性が50.9%。最終学歴は小中学校卒が5.5%、高校卒が42%、短大・高専卒が21.5%、大学卒が28%、大学院卒が1.2%、その他が1.1%。年齢は20歳未満が2.3%、20歳から29歳が11.9%、30歳から39歳が14.8%、40歳から49歳が17.3%、50歳から59歳が14.7%、60歳以上が39%となっている。
韓国側の世論調査は、韓国の18歳以上の男女を対象に7月21日から8月8日まで調査員による対面式聴取法により実施された。有効回収標本数は1028である。回答者の性別は、男性が49.3%、女性が50.7%。最終学歴は中学校卒以下が12.7%、高校卒が38.9%、短大在学以上が48.3%。年齢は20歳未満が2.7%、20歳から29歳が16.0%、30歳から39歳が14.9%、40歳から49歳が18.5%、50歳から59歳が19.5%、60歳以上が28.5%となっている。
【言論NPOとは】
言論NPOは、「健全な社会には、当事者意識を持った議論や、未来に向かう真剣な議論の舞台が必要」との思いから、2001年に設立された、独立、中立、非営利のネットワーク型シンクタンクです。2005年に発足した「東京-北京フォーラム」は、日中間で唯一のハイレベル民間対話のプラットフォームとして17年間継続しています。また、2012年には、米国外交問題評議会が設立した世界25カ国のシンクタンク会議に日本から選出され、グローバルイシューに対する日本の意見を発信しています。この他、国内では毎年政権の実績評価の実施や選挙時の主要政党の公約評価、日本やアジアの民主主義のあり方を考える議論や、北東アジアの平和構築に向けた民間対話などに取り組んでいます。
また、2017年には世界10カ国のシンクタンクを東京に集め、東京を舞台に世界の課題に関する議論を行う「東京会議」を立ち上げ、会議での議論の内容をG7議長国と日本政府に提案する仕組みをつくり出しました。
さらに、米中対立下で、米国と中国が出席する4カ国の「アジア平和会議」を2020年1月に創設し、歴史的な作業に着手しています。
【東アジア研究院(EAI, East Asia Institute)とは】
東アジア研究院は、地域が抱える問題について政策提言を行うことを目的に、独立シンクタンクとして創設しました。研究者セミナー、フォーラム、教育プログラム、そして多様な出版物を通じて影響力のある成果を生み出しています。東アジア研究院の調査活動は、外交安全保障プログラム、ガバナンス研究プログラムの二本柱から成り、これらのプログラムが5つの研究センターよって行われています。また、研究タスクフォースを用いて、喫緊した重要な問題にも取り組んでいます。卓越した研究者と政策立案者が協働し、東アジア研究院は革新的で政策論議を反映した研究成果を想像する中心に立っています。韓国で卓越した研究所の一つとして、米国、中国、台湾、その他多くの国々との共同研究を通じ、北東アジアにおける知識ネットワークを創造しています。
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